医療法人恒仁会 副理事長・新潟南病院 院長 渡部 裕
新潟南病院は1978年に現理事長を中心とした5名の医師により、医療・福祉・保健活動を通して地域社会に貢献することを理念として、女池に開院しました。同じ年に私は小学校に入学しまして、1996年に新潟大学を卒業して医師になるまで地元で教育を受けました。新潟大学循環器内科のスタッフを経て2015年に当院へ赴任し、2018年鳥屋野への新築移転を経て、2020年4月1日より院長に就任いたしました。
“南病院に行けば何とかなる”と地域住民から信頼される、地域の総合病院的な役割を果たすべく、地域医療において頻度の高い疾患を中心に幅広い診療を行っています。ほぼ全ての診療科を標榜しており、内科は循環器、消化器と呼吸器を中心に各専門科があり、外科系では外科、整形外科、婦人科、眼科、泌尿器科と皮膚科にて全身麻酔を含む手術を施行しています。高齢患者の増加が著しい血液内科や脊椎外科では、高度な専門治療を行っています。
これらに加えて、様々な特色ある診療を行っています。小児科では発達外来と言語聴覚療法も行っています。障害を持つ次男が、アメリカ留学中に濃密な発達支援療法を受け大きく成長した経験から、日米の格差を少しでも埋めるべく始めたものです。障害を持つ小児と家族の手助けができることは大きな喜びです。詳しくは“小児ST、FNN”で検索して下さい。
歯科では摂食嚥下障害へ重点的に取り組んでいます。高齢社会を反映し、当院で最も多い入院病名は誤嚥性肺炎です。入院翌日までには言語聴覚療法士が初期評価を終え、歯科医師は嚥下内視鏡を用いてリハビリの方針を決定します。早期介入はリハ効果と栄養の双方から重要です。
50余名の療法士が勤めるリハビリ部は、失われた機能の回復のために高密度のリハビリを行っています。1日最大3時間のリハビリを、土日祝日年末年始を含む毎日行っています。入院早期からリハビリを開始し、急性心不全で酸素投与中であっても病状が許せば入院翌日から介入します。
高齢者を中心に、ADLの低下や認知症を主な原因として退院困難な患者が増加しています。当院では、長期入院可能な回復期リハビリ病棟(180日まで)と地域包括ケア病棟(60日まで)を活用しています。全国的に回復期リハビリ病棟の9割以上は整形外科疾患や脳神経疾患が占めています。当院では一定の割合を内部障害が占めており、心臓リハビリテーション認定医によるリスク管理のもと、心不全を中心とした内科疾患や、急性疾患や手術後にALDが低下した患者のリハビリも行っています。地域包括ケア病棟では、リハビリに加えまして、自宅や環境の整備や介護サービスの導入、退院先の調整といった退院支援も行っています。
積極的なリハビリや退院支援により入院患者の在宅復帰を目指していますが、来院が困難な患者へは訪問診療を行っています。医師は内科を中心として外科、皮膚科と歯科などの様々な科が訪問を行っています。看護師、リハビリや栄養管理士といったコメディカルも訪問しています。
医療の進歩により高度医療や先端医療による入院期間が短縮すると共に、入院期間が長くなりがちな高齢者を中心に高度医療を必ずしも要しない患者が増加しています。医師不足とも相まって、医療情勢の変化に対応すべく2025年に向けて新潟県主導で地域医療構想が進められています。高度急性期・急性期から、回復期、慢性期、在宅医療・介護にまで一連のサービスを提供するために、地域における病床の機能分化及び連携を推進するというものです。当院が開院以来40余年に渡って地域に密着して実践している医療は、この地域医療構想と合致しています。特に多くの併存症を有する高齢者へは、当院で治療が完結するように各科が連携して診療を行っています。今後も、地域住民の健康に関するあらゆるニーズに応え、急性期から退院後の生活まで一貫した医療を提供する南病院の院長として努めてまいります。
(令和2年12月号)