大川 豊
私の憩いの時間は趣味のアマチュア無線の交信タイムです。アマチュア無線といえばマイクに向かって話したり(Phone)、モールス(電信、CW)での交信を思い浮かべる方が多いと思いますが、近年はFT8というデジタルモードでの交信がずいぶん普及しました。
FT8では相手の信号の解読と、こちらからのデータの送信はすべてPCが処理します。トランシーバー(TR)の送受信の切り替えや周波数の調整もPCがやってくれます。FT8が運用される周波数は世界的に決まっているのでTRのダイアルを回して相手を探したりする必要もありません。音を聞く必要も無いし、しゃべる必要もありません。PCのモニターを眺めながらマウスの操作だけで交信できます。音楽を聴きながら、ラジオの英会話番組を聞きながら、本を読みながら、など「ながら」交信ができるようになりました。PCのデジタル処理による解読力は素晴らしく、PhoneやCWを人間の耳で聞いたのでは到底わからないような弱い信号でも解読してしまいます。ですので、いつでも世界のどこかが聞こえて(見えて)いて、交信相手がいなくて困ることもほとんど無くなりました。
写真1は筆者の無線室です。複数のソフトを同時に使うため、最新のCORE i7のノートPCをデュアルモニターとして使用しています。昔に比べるとTRよりPCの存在感が大きくなりました。写真2は実際の交信のスクリーンショットです。「CQ CQ こちらはOH5C KP30(地球上の位置を示すグリッドロケーター)フィンランドです」。この局と交信するために、この行をポチポチっとダブルクリックします。「OH5CこちらはJH0INE(筆者のコールサイン)PM97からです」「JH0INEこちらはOH5C、あなたの信号は−5dbで入感しています」「OH5CこちらはJH0INE、Roger(了解)、あなたは−1dbで入感しています」「JH0INEこちらはOH5C、了解了解、73(さようならの意)」「OH5CこちらはJH0INE、さようなら」。途中で信号が途絶えたりしなければこのやり取りは自動的に進行し、1分ほどで交信が終わります。FT8はデータ送信速度が大変遅いので、相手のコールサインとシグナルレポートの交換だけしかできないのが弱点です。交信の最低条件しか満たしていませんが、交信できていることには間違いありません。酔っぱらっていても手軽に楽しめるのも良いところです。
「で?それの何が楽しいの?」と聞こえてきそうです。それは趣味ですのでなかなか説明が難しいのですが、、、今夜もシュポッ!ポチポチッ!と楽しんでおります。
写真1
写真2
(令和2年8月号)