田澤 義人
テーマ音楽が流れると童心に帰るアニメーションがある。「トムとジェリー」は私にとってそんな存在である。やんちゃだがおっちょこちょいなネコのトムが、ネズミのジェリーにちょっかいを出すが、賢い彼は事もなげにさらりとかわす、ネコとネズミが繰り広げる攻防を描いているドタバタ劇である。アメリカで生まれたこのアニメーションは、何度もアカデミー賞を授賞している。その中でも私のお気に入りは「ピアノコンサート」である。ちなみに日本でも人気があるサイモン&ガーファンクルが、トム&ジェリーというグループ名で音楽活動を開始したことは有名な話である。
さて、この「トムとジェリー」はNHK Eテレの「ららら♪クラシック」という音楽番組で2回も特集された。劇中の音楽が印象的だなぁと漠然と思っていたのだが、当時としては先進的であった十二音技法を使うなど、その高い音楽性が評価されているそうだ。東京藝術大学出身の作曲家・ピアニストの上水樽力先生(アメリカで「トムとジェリー」の音楽を研究し、博士号を取得した)が映像と音楽の一体感を番組内で説明している。難しいことはよくわからないが、なるほど、印象に残る工夫がたくさん詰まっている。そもそも「トムとジェリー」はいわゆる“セリフ”というものはほぼ登場しない。それなのに思わず笑ってしまうのは、作曲家スコット・ブラッドリーの音楽のすごさが1つの理由だろう。「トムとジェリー」の音楽を、あのベルリン・フィルハーモニー管弦楽団が演奏している映像は圧巻である。
何度も何度も見ているためオチはわかるのだが、いつも同じところで笑ってしまう。こんな時期だからこそ家で楽しく過ごしたいと思い「トムとジェリー」の映像を見ている。同じオチでつい笑ってしまう私が、家族からいつも笑われているのは言うまでもない。
(令和2年7月号)