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新潟市医師会報より

新潟市医師会

ニッタン飼育

髙橋 美徳

生き物をハコに閉じ込めて飼うのはヒトの傲慢だと感じて休止した熱帯魚飼育だったが、餌をつつく姿に癒しと喜びがもらえるので、性懲りもなく倉庫から水槽を引っ張り出して日本原産の川魚(日本淡水魚:略してニッタン)を飼いはじめた。熱帯魚のきらびやかさは無くとも、ニッタンは美しく婚姻色も楽しめる。魚種はタナゴの仲間で青森県から新潟県にかけての日本海側に分布するキタノアカヒレタビラを選んだ。信濃川は近いのだがワイルド種の採取は難しいので、密林ネット販売で手に入れた。

熱帯魚は低温に気をつけなければいけないが、最近の猛暑・酷暑を考えるとニッタン飼育ではむしろ高温になりすぎないように、水槽用の熱交換クーラーが必要だ。水の濾過には植物共生を利用した小型アクアポニックスを採用した。アクアポニックスは、水産養殖(アクアカルチャー)と水耕栽培(ハイドロポニックス)を融合させた循環型の食料生産システムで、魚の排泄物をバクテリアが分解し、植物の栄養分として吸収させ、水は浄化されて再び水槽へ戻るため、水換えや農薬、化学肥料が不要となるエコな方法だ。足し水と魚の餌のみで回るように、植物は苺を選んで上方の手作り水槽に植え、魚水槽の水をポンプで揚水した(写真1)。

写真1の最も下の水槽には川砂とドブガイが入っている。ニッタンを飼うからにはぜひ繁殖もやってみたい。キタノアカヒレタビラなどのタナゴ類は2枚貝の出水管に産卵管を差し入れて鰓に産卵する。ドブガイの飼育のためには厚さ10センチ程度の川砂が必要で、砂の上に置かれたドブガイは器用に砂の中に潜っていく。2枚貝の飼育で難しいのは給餌だ。流れに乗ってきた栄養物を鰓に引っ掛けて取り込む生態なので、何を与えたら良いのか悩む。しかし密林では何でも手に入る。2枚貝飼育用の餌も販売されていて購入してみた。粉末の餌を飼育水で撹拌し、スポイトで2枚貝のそばに噴霧すると入水管から吸い込まれ、繊毛に捕捉されて取り込まれる。ある程度飼育環境に慣れたところでドブガイをニッタンの水槽へ移動、繁殖期が到来するまでしばらく観察と給餌を継続した。するとニッタンが何やらヒラヒラとぶら下げて泳いでいる。尻ビレ近くから産卵管を伸ばしているのだ。更に数匹でドブガイを覗き込んで産卵できるのか様子を伺っているではないか(写真2)。

5尾の稚魚が生まれ、ある程度の成長はみられたものの結局溶けるように消えてしまった。ドブガイは庭の睡蓮鉢に移動してみたが、水流のない状態では長く生きられなかった。かくしてニッタンのアクアポニックス飼育は幾粒かの苺を収穫できたものの早期に限界を迎えて終焉したのだった。人工的に生態環境を循環させていくのは魅力的だが、とても難しいと学ぶことができた。

写真1

写真2

(令和8年7月号)

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