芳野 高子
2026年6月よりにいがた東眼科に勤務し、新たな環境で眼科診療に携わっております。それまでの15年間は佐渡島内で眼科診療に携わり、多くの患者さんや島民の皆様とのかけがえのない出会いに恵まれ、大変充実した日々を過ごすことができました。
佐渡での暮らしが私に与えてくれた大きな宝物の一つに、スキューバダイビングとの出会いがあります。きっかけは知人やダイバー仲間にすすめられ、「せっかく佐渡にいるのだから」と軽い気持ちで挑戦することにしました。
初めて潜った海の中は、陸上とはまったく違う静かで穏やかな世界で、初心者だった私は呼吸で浮き沈みする中性浮力に苦戦しながらも、日本海の魚たちが群れをなして泳ぐ光景に思わず心を奪われました。佐渡の海は季節ごとに表情を変え、潜るたびに新しい発見があります。
特に印象深いのはコブダイです。大きな体で抜群の存在感を誇りますが、人懐っこくダイバーの近くまで寄ってきてくれることもあります。成魚の雄は額に大きなこぶがあり、このこぶは成長とともに発達し、成熟した雄ほど大きくなります。実はコブダイはベラ科の魚で、最初は雌として成長し、その後、群れの中で優位な個体が雄へと性転換する「雌性先熟」という興味深い生態をもっています。寿命は20~30年に及ぶともいわれ、同じ岩礁域を生活の場とするため何年にもわたって同じ個体が観察されることがあります。佐渡の海で出会うコブダイには、ダイバーたちが親しみを込めて名前を付けている個体がいます。巨体の「弁慶」、体に喧嘩の跡と思われる傷がある「ヤマト」、ヤマトのライバル「コジロウ」(現在、赤岩の4代目のボス)など、それぞれに特徴があり、何度も同じ個体と出会えることも佐渡の海ならではの楽しみです。
現在も年に数回ダイビングを楽しんでいます。佐渡の海はもちろんですが、島外では西表島の海がとりわけ印象的でした。透明度は「宮古ブルー」と称される宮古島にも引けを取らず、世界有数の珊瑚礁がどこまでも続き、その景色はまるでお花畑のようでした。そして、大物との出会いといえば石垣島の沖。マンタの遭遇率が高いことで知られるスポットで、二度目の挑戦でようやく出会えた瞬間の感動は今でも鮮明に心に残っています。マンタとの出会いは最高でしたが、ホテル前のビーチだけはおすすめできません。海はきれいに見えるものの、潜ってみると濁りで期待はあっさり裏切られます。
ゆっくりと流れる時間の中で自然と向き合っていると、忙しい日常を忘れてしまいます。ダイビングは私にとって心身をリフレッシュする大切な趣味であり、明日への活力を与えてくれるかけがえのない時間となっています。

写真1 佐渡のコブダイ、ヤマト(左)とコジロウ(右)

写真2 西表島の珊瑚礁

写真3 石垣島のハマクマノミ
(令和8年9月号)