勝井 豊
リーダーはただの「役割」であり、偉ぶる必要もないし余計なプレッシャーを感じる必要もないと本書には書かれている。著者は岐阜生まれで、東京大学を卒業して外資系企業の人事部門の幹部などを務めた経験があり、企業の人材育成や組織行動改革などを推進しているとのことである。
ハーバード大学のジョン・コッターによると、リーダーは「人をやる気にさせる仕事」、マネージャーは「人を管理する仕事」であるが、両者を混同している人が多いそうである。リーダーはビジョンを構築し、人心を掌握し、関係者を動機づけるのが仕事であり、誰でもがリーダーになれるそうである。しかしよいリーダーになるにはちょっとした「コツ」があるそうで、それを著者は8章にまとめている。
まずメンバーを選ぶときには、全体のバランスに配慮し、「自らがトップ」のチームにしないこと、仕事を頼むときにはビジョンを示し、全面的に信頼し、自主性を尊重すること、評価する際には目先に捉われず、メンバーのモチベーションを高めるような配慮をすること、トラブルの解決は事実に基づいて、冷静に迅速に公平に行うことがリーダーには必要とのことである。
チームを前進させるためにはリーダーに決断力、一貫性、公正性が求められ、メンバーと1対1で意見交換をしたり、細部に拘らないで能動性を保ち、連帯を強めるためにキーワードを利用してモチベーションを高めたり、よき聞き役になり、情報を開示して共通点を見出したり、温度差があっても受け入れ、失敗があってもチャンスを与えるような寛大な対応が必要と述べている。
人を育てるには、自分の意見を押し付けず、メンバーの意見を大切にし、焦らずに1日に1%ずつでも成長していけばよいと考え、またリーダー自身が自分を整え、学び続け、気負いや知ったかぶりを避け、院政をしいたり足かせになったりしないように、心がけるべきだとの考えを示している。
リーダーは、人を管理したり、上意下達を目指すのではなく、性善説に基づいてメンバーを信頼し、皆をやる気にさせるのが仕事であり、そのためのちょっとした「コツ」が、本書には項目ごとに分けて、具体的に分かりやすく書かれているので、皆様の参考にしていただければ幸いである。
『99%の人がしていないたった1%のリーダーのコツ』
著者 | 河野英太郎(こうの えいたろう) |
---|---|
出版 | 株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン 2013年6月 |
定価 | 1,400円(税別) |
(平成29年2月号)