木村 洋
柚月裕子の『検事の本懐』に始まる佐方貞人シリーズ最新刊です。
本の帯には「東京・中野に弁護士事務所を構える佐方貞人のもとに、警察から一本の電話が入った。さきほど逮捕した男が、佐方を弁護人に指名しているという。男は大学時代の同期・久保利典で、行きつけのクラブの女性から不同意性交等罪で訴えられたらしい。無実を主張する久保を信じ、事件の経緯を調べ始めた佐方だったが、女性が久保を嵌める動機が見当たらない。隠された接点があるはずだと二人の過去を探るうち、約20年前に香川で起きた、ある石職人の死亡事故が浮かび上がる。」とあります。
「沼ハマ」とは趣味や嗜好にどっぷりと浸かり、抜け出せない状況を指すネット用語です。まさに柚月裕子ワールドにはまり、発売初日に購入し一気に読み進みました。
『新宿鮫』の大沢在昌は彼女を昭和の男を虜にする作家と評しています。まさにその虜になった一人です。佐方貞人の検事~弁護士シリーズを始め、『仁義なき戦い』に影響を受けたとされる暴力団を描いた『孤狼の血』シリーズでは男性作家顔負けの暴力シーンの描写が迫力満点です。さらに『朽ちないサクラ』などの刑事もの、『盤上の向日葵』の将棋サスペンス、『あしたの君へ』では非行少年の更生物語など、さらに『ミカエルの鼓動』でロボット手術を、最近新潟日報に連載された「カンパニュラの祈り」では脳死と臓器移植についてなどの医療問題にと多彩です。テレビドラマや映画化された作品も多く、ご覧になった方もいらっしゃるのではないかと思います。
彼女を知ったきっかけはJR東日本が発行する新幹線車内誌『トランヴェール』に毎号巻頭に掲載されている「旅のまにまに」のエッセイからです。魅力的な文章を書く人だなと感じ、「『このミステリーがすごい!』大賞」を受賞したデビュー作の『臨床心理』を読んで一気にはまってしまいました。
なんといっても『最後の証人』、『検事の本懐』、『検事の死命』、『検事の信義』そして本作『誓いの証言』と続く佐方貞人シリーズでしょう。
まだ柚月裕子に出会ってない方は是非ご一読ください。
『誓いの証言』
| 著者 | 柚月裕子 |
|---|---|
| 出版社 | KADOKAWA |
| 発行日 | 2026年3月26日 |
| 定価 | 1,900円+税 |
(令和8年6月号)