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新潟市医師会報より

新潟市医師会

『中田みづほの百句』 中本真人著

竹内 菊博

大学在学中は俳句部ではありませんでしたが、俳句部の存在は知っていました。私のころは法医学の山内先生が部長だったように思います。法医学教室では高野與巳(よしみ、俳号素十)先生の代から俳句が盛んであり、現在は山内春夫(俳号百雷)名誉教授を師とし、高塚尚和(俳号千風)教授が俳句部部長を務められているようです。私自身は卒業後も俳句とは縁のない生活でした。

しかし、コロナ禍をきっかけに2020年12月ころから作句、投句するようになりました。どこにも行けない閉塞した環境下でふとみつけた俳句の投句サイト、TBS系テレビ番組プレバトの俳句査定コーナーに出演されている夏井いつき先生(組長)の「俳句ポスト365」への投句がきっかけでした。それからは「いつき組」組員としてたくさんネット投句して楽しんでおります。例えばBSNラジオの一句一遊(南海放送制作、約十分間の番組です)は一つの兼題で月曜日から金曜日まで投句を紹介し、金曜日が優秀句、さらにその中から天の句を発表する仕組みになっています。私は天はまだありませんが金曜日の紹介は3回ほどあります。いつかは天の句で紹介されるようにと励んでいます。NHK俳句のテレビ番組での自句の紹介も数回あります。ちなみに俳号で出していますが俳号名は秘密です。

俳句は作句と鑑賞の両輪が揃ってこそ良い句ができるので、有名俳人の句だけでなく、幅広く俳句を詠み、鑑賞することが大事だと思っています。自身の良い句が出来たとき、あるいは他者の良い句に出会ったときは、その十七音の短詩の世界観の広がりにこころが打ち震えます。その楽しみもあって俳句の本がどんどん増えてきました。

ふらんす堂の百句シリーズは有名俳人の百句を気軽に読めて一般読者にも親しみやすい構成になっています。一冊につき一人の俳人、代表句を約百句収録、現代の俳人・研究者による解説付き、文庫より少し大きい軽装判で読みやすい、古典的巨匠から前衛俳句まで幅広く扱う、といった特徴があり、現在約60冊刊行されています。『中田みづほの百句』は2025年10月25日に研究者・俳人である中本真人(新潟大学人文学部准教授)氏を著者として刊行されました。

中田瑞穂先生(1893−1975)は日本初の脳神経外科講座を新潟大学に設立した、言わずと知れた「日本脳外科の父」です。東京帝国大学在学中から俳句にも通じ、高浜虚子と親交を持ち、虚子の俳句雑誌『ホトトギス』の同人として水原秋櫻子、高野素十、山口誓子らとともに活躍されたことで有名です。新潟に赴任されてからも、脳外科研究で多忙な中のわずかな時間で句集も発行されておられます。代表的な句としては「刻々と手術は進む深雪かな」「学問の静かに雪の降るは好き」(後者は脳研究所前庭に句碑があります)などがあります。

本書は、みづほ先生が関係したとされる水原秋櫻子のホトトギス離脱の経緯や、浜口今夜、高野素十との亀田吟行、妻、友、師虚子との死別などみづほ先生の当時の生活などがそれぞれの俳句の紹介とともに生き生きと描写されていて興味深く読めます。以下好きな十句を挙げます。

手を出せば雨の降りをり鉦叩
吹雪中もどりて言葉多きかな
つゆ草の芽といふことのわかるまで
幾たりと婆々に出会ひぬ稲の秋
駅長やまんじ巴と降る雪に
涅槃像田舎の菓子の堆く
卒業諸子国家試験も無事パスせよ
科学とは月も土足にかくること
早苗饗も今はラーメン、ソーセージ
封切らぬ学術雑誌のみ暑し

写真はホテルオークラ新潟の前、萬代橋のたもとにある虚子の句碑(千二百七十歩なり露の橋)で碑陰はみづほ先生の一文です。みづほ先生は素十先生らとともにしばしば虚子先生を新潟に招き、かき正や行形亭などで吟行句会をしていました。この句碑など俳句をやらなければ一生気づくことがなかったなあ(俳句を始める前の57年間新潟に住んでいて気にもとめなかったのですから!)と思うと感慨深いです。皆様も通りかかったときなど一度見てみると良いかもしれません。

『中田みづほの百句』

著者 中本真人
出版 ふらんす堂
発行日 2025年10月25日
定価 1,500円(税別)

(令和8年8月号)

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