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新潟市医師会報より

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新潟市における養護教諭へのアンケート調査から~耳鼻咽喉科の学校健診と学校医について~

大滝耳鼻科クリニック 院長 大滝 一

1.はじめに

学校保健活動において学校健診はその根幹であるが、平成26年に文部科学省より健康教育にも力を入れるように通知があり、学校医として健診だけにとどまらない職務の遂行が望まれている1、2)。具体的には、健診に加え健康相談や児童生徒への講話などである。そのような中、養護教諭とより緊密な連携と協力体制を作ることが、学校保健活動において今以上に重要になってくると思われる。

その養護教諭が学校健診全体、耳鼻咽喉科健診をどのようにとらえ、さらには耳鼻咽喉科学校医に対してどのように考え、何を望んでいるか、これを知ることは、学校保健活動を円滑に行うためにとても大事なことと思われる。

我々は今回、新潟市教育委員会の了承と協力のもとに、学校健診と学校医に関するアンケート調査を新潟市内の養護教諭に行った。

このアンケートの調査結果を基に、今後の健診、学校医のより良いあり方を検討し、養護教諭とのさらなる協調、連携体制を築きたいと考えており、具体的な方策を打ち出すことができればと思っている。

2.対象

対象は平成29年2月15日に新潟市教育委員会が行った養護教諭研修会に参加した149名の養護教諭で、小学校85名、中学校46名、高校2名、幼稚園7名、その他が9名であった。

3.アンケートの内容

アンケート内容は学校医の体制、耳鼻咽喉科の学校医と耳鼻咽喉科学校健診について、さらには健康相談と健康教育についてなどとし、健診以外に耳鼻咽喉科学校医に最も望むことについても調査した。

4.結果

1)校医の体制(図1)

まず校医の体制に関しては小、中学校で大きな差はなく「現状の内科、眼科、耳鼻咽喉科の3科体制を望む」が全体で128名中66名(51.6%)と最も多かった。ついで平成15年度より設けられた「学校専門相談医の科を加えた7科を校医とする」が40名(31.3%)で「校医は内科のみとする」は12名(9.4%)であった。

2)耳鼻咽喉科医に関して(図2)

学校保健における耳鼻咽喉科医の立場としては「今まで通り学校医が望ましい」との回答が128名中104名(81.3%)で、「学校専門相談医がよい」が15名(11.7%)、「健診のみでよい」が9名(7.0%)であった。小、中学校に大きな差はなかった。

3)耳鼻咽喉科健診について(図3)

健診対象学年については、小学校と中学校で回答結果が大きく異なっていた。小学校では、現在市内の約7割で実施されている「全学年健診を希望」が69名(81.2%)と大半を占め、「学年を固定した健診」や「希望者を含む重点健診」という回答はそれぞれ7名(8.2%)で、2つを合わせても14名(16.4%)と少なかった。

一方、中学においては、1割程度の学校でしか実施されていない「全学年健診を希望」が22名(49.0%)で、9割の学校で実施されている「学年を固定した健診」と「希望者を含む重点健診を希望」が合わせて23名(51.0%)であった。

4)健康相談(図4)

「健康相談を毎年行っている」は小学校では85名中37名(43.5%)、中学校では46名中9名(19.6%)であった。その内容をみると、小、中学校合わせてほとんどが内科関連で、「耳鼻咽喉科の健康相談を毎年行っている」という回答はなかった。多くの学校で相談が必要と感じた時や、保護者からの要請時に健康相談を行っており、「全く行っていない」との回答は、小学校で9名(10.6%)、中学校の11名(23.9%)であった。

5)健康教育(図5)

授業や講話などによる健康教育は、小、中学校とも約半数で毎年行っていた。その内容を見ると、歯科に関連したものが多かった。

6)耳鼻咽喉科に関する健康教育(表1)

耳鼻咽喉科に関する健康教育を見ると、小学校の85名中20名(23.5%)、中学では46名中の3名(6.5%)で「耳鼻咽喉科に関する健康教育を行ったことがある、もしくは行っている」という結果であった。しかし実状を見ると、耳鼻咽喉科医による講話はほとんどなく「学校健診の前に耳や鼻、のどについて授業の中で担任教師などが説明している」というものが多かった。

行っていないと回答した小学校の23名、中学校の8名では、機会を見つけ行いたいという結果であった。「保護者や医師から要請があれば行う」という回答が小、中学校共に多かった。

7)耳鼻咽喉科学校医に望むこと(図6)

健診以外に耳鼻咽喉科学校医に望むこととして「健康相談にのってほしい」が小学校で7割、中学校で8割と最も多く、ついで「授業や講演などの講話を行ってほしい」が多かった。学校で開かれる委員会への出席を望む声は少なかった。

8)学校保健委員会について

学校で開かれる委員会への耳鼻咽喉科学校医の出席状況は、小、中学校でほぼ同様の傾向にあり、全体では「毎年出席」との回答が128名中31名(24.2%)、「時々出席」が20名(15.6%)で「全く出席していない」が77名(60.2%)であった。

そのような中、全体の半数の養護教諭が耳鼻咽喉科学校医の出席を希望し、委員会開催の通知も約半数で毎年送付されていた。

9)保健調査票と医療券

今年度から児童生徒全員に行うとされた保健調査票に関しては、健診学年に限定して行っているのが中学校で1校あったが、その他は全員に対して行っていた。

また医療券については継続が望ましいが約3割で、疾患名が古いなどの理由から不要という回答が7割であった。

10)その他、意見など

アンケートの回答の中に今後の参考になると思われる意見があったので、その一部を掲載する。

・健康教育は忙しそうでお願いできない。

・健診以外のことはしないと断られた。

・気軽に相談ができるとありがたい。

・学校医となっている校数が多く委員会出席をお願いしづらい。

・薬剤師の先生に講話をお願いしている。

5.考察

はじめにも述べたように、我々耳鼻咽喉科学校医が健診を中心とした学校保健活動を行うにあたり、普段から児童生徒にふれ、子供たちの現状をよく把握している養護教諭との協力と連携は不可欠である。その養護教諭が健診全般、耳鼻咽喉科健診、そして学校医についてどのように考えているかを知ることは、円滑な学校保健活動の実施に極めて重要である。

まず、今回の調査の結果として、学校医の体制については、昭和30年代から続く内科、眼科に耳鼻咽喉科を加えた「現状の3科体制でよい」とするが全体の約半数であった。しかし、学校専門相談医制度が平成15年に設けられ、10年以上が経過したことから「現在の3科体制に加え整形外科、皮膚科、婦人科、精神科を学校医とするのが望ましい」と考えている養護教諭も3割と多かった。財政的な面をクリアできれば、相談医の4つの科はいずれ学校医となっていく可能性があるものと思われる。

ここで耳鼻咽喉科医に目を向けてみると、現状の「学校医がよい」が8割と大半であったが、中には「相談医がよい」「健診のみでよい」が2割であった。この数字は決して小さいとは言えず、我々耳鼻咽喉科医は健診だけにとどまることなく、学校医として健康相談や健康教育などにも積極的に関わりを持ち、耳鼻科咽喉科学校医としての存在意義を高めていくことが大切と思われた。

その健康相談は「毎年行っている」は小学校で半数弱、中学校では1/5であった。学校が必要と判断したり、保護者や医師らの要請時に行っている学校が多かったが、相談のほとんどが内科で、耳鼻咽喉科医への相談は全く行われていないという現状がわかった。

健康教育は内科や歯科関連などふくめ小、中学校共に半数弱で毎年行っていた。しかし、残念ながら耳鼻咽喉科学校医の関与は健康相談と同様に極めて少ないという結果であった。

しかし、現在行っていない学校でも「機会があれば行いたい」という回答も多く、我々耳鼻咽喉科医から積極的に健康教育に関与する姿勢を示すことも大事ではないかと思われた。

児童、生徒の健康管理を考えると、学校に出向いて直接話す講話は、耳鼻咽喉科領域に関する、「呼吸や嚥下」などの人間としての基本的機能、さらに「聞く、話す」などのコミュニケーション機能などに関しての理解を深め、その重要性を知っていただくよい機会と考える。

忙しい診療の中で、健診以外に学校保健活動の時間を作り出すことは容易ではないが、是非検討していくべき事項と思われる。

最後に「健診以外に耳鼻咽喉科学校医に望むこと」に関しては、小、中学校共に健康相談が最も多く、小学校の約7割、中学校の8割であった。小学校では授業や講話を望む声も多く、これに対して、日本耳鼻咽喉科学会新潟県地方部会として昨年に医師に向けて講話・授業用のスライドCDを作成したことは良策であったと自認している。

この新潟県地方部会で作成したスライド用CDについて、日本耳鼻咽喉科学会のアンケート調査の際に伺ったところ、全国の41都道府県の学校保健委員長から郵送の希望があった。希望が多かったために、日本耳鼻咽喉学会がCDをコピーし平成30年3月に郵送したところ、数県ですでにこれを使用し講話や授業が行われ、感謝の連絡をいただいている。

以上を踏まえ、今後は養護教諭が遠慮することなく健康相談をしやすい環境を整えることが大事と思われた。また授業や講話を積極的に行う方向で、地方部会全体として取り組んでいきたいと考えている。

6.まとめ

今回の結果を踏まえ、積極的に健康教育に関与すると共に3)、養護教諭が健康相談に乗りやすい環境作りを目指し、具体的な方策を検討するつもりである4)。養護教諭との連携を今後さらに深め、協力して学校保健活動に向き合えればと考えている。

学校の養護教諭、行政を担当する教育委員会、そして我々医師の三者が協力して児童生徒の健康と健全発達のために力を合わせていくことが大事と思われた。

稿を終えるにあたりアンケート調査にご協力いただいた新潟市教育委員会の皆様に深謝いたします。

〈参考文献〉

1)弓倉 整、五十嵐隆、児玉浩子 企画・監修:特集 園医・学校医の役割. 日本医師会雑誌2012;141:1457–1470.

2)宇高二良:学校保健で重要なことは?. JOHNS 2012 ; 28 : 535-537.

3)大滝 一:ENT臨床フロンティア「子どもを診る・高齢者を診る」.中山出版.13–15頁, 2014.

4)大滝 一、廣川剛夫、石岡孝二郎、堀井 新、髙橋 姿:新潟県における耳鼻咽喉科健診の実態調査─幼稚園から高等学校まで─. 日耳鼻会報, 119: 941–948, 2016.

 

図1 校医の体制

 

図2 耳鼻咽喉科医に関して

 

図3 検診対象学年について

 

図4 健康相談について

 

図5 健康教育について

 

表1 健康教育について

 

図6 健診以外に耳鼻科校医に望むこと

 

(平成30年11月号)

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