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新潟市医師会報より

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虚血性心疾患合併心房細動患者における抗血栓療法のパラダイムシフト

群馬大学大学院医学系研究科 内科学講座 循環器内科学 病院講師 高間 典明

はじめに

心房細動を合併する虚血性心疾患の治療マネージメントを考える場合、虚血性心疾患ならびに心房細動両面から検討を加える必要がある。まず虚血性心疾患に関して、狭心症や心筋梗塞からなる虚血性心疾患の治療方法はしっかりと確立されている。その中心は薬物治療と経皮的冠動脈治療(PCI: Percutaneous Coronary Intervention)をはじめとする侵襲的治療であることは周知の事実である。もちろん虚血性心疾患治療に関しても予防に優る治療方法は存在せず、一次予防として生活習慣の改善や冠危険因子である糖尿病や脂質代謝異常症、高血圧、喫煙などをしっかりと管理することが最重要であることはいうまでもない。しかし残念ながら病状が進行し、冠動脈の治療を行わなければならないことに多々直面することはご理解いただけると思う。PCI治療を実施した症例では、治療実施時には抗血小板剤2剤併用療法(DAPT: Dual Antiplatelet Therapy)を行わなければならない。ガイドラインなどで治療法や治療期間などしっかりと定められてはいるものの、抗血小板剤を使用するためどうしても出血事象などが問題となることもあるのが事実である。一方で心房細動症例においては、血栓症による合併症を予防する目的で、抗凝固療法を実施しなければならない。近年ではDirect oral anticoagulant(DOAC)を用いた抗凝固療法が一般的となっているが、ワルファリンと比較すれば出血事象の発現は軽減されているものの、時によって非常に出血しやすい状況に陥ることになる。以上まとめると、虚血性心疾患合併心房細動患者における抗血栓療法に関しては、心血管系イベントに対する有効性と出血事象という安全性の両面を踏まえた難しい治療が要求される。近年ではこれらに関しても多くのエビデンスが報告されており、このことについても詳しく説明したいと思う。

心房細動における抗血小板剤の一次予防効果

心房細動の抗血栓治療として、ワルファリンやDOACを用いて治療することは、説明するまでもないと考える。以前、抗血小板剤を用いることで心房細動の一次予防効果があるか議論になったことがある。結論としては一次効果に関しては乏しいというものであったが、近年症例によっては有効であるとの論文も散見されるようになった。THEMIS trialは抗血小板剤であるチカグレロールを用いて実施されたPARTHENONプログラムの1つであるが、図1に示すように糖尿病症例であれば、一次予防として有効であることが示されている。しかし出血イベントも有意に多くなることから、今でも日常診療における一般的治療とはなっていない1)。

抗凝固薬を用いた心房細動治療

心房細動に対して抗血栓治療を行う場合、過去にはワルファリンを用いて実施することが一般的であった。2009年に発表されたRE-LY試験2)を皮切りに多くのDOACの臨床試験が実施され、標準治療であったワルファリンと比較して抗血栓作用という有効性ばかりでなく、出血事象といった安全性も担保されていることが判明し、現在では一部の禁忌症例をのぞいてごく一般的に使用される薬剤となっている。一方で虚血性心疾患症例においては話が少し複雑になる。虚血性心疾患は何らかの原因で冠動脈が狭窄することによって発症する疾患群である。狭心症と心筋梗塞に大きく分けられ、狭心症は労作性狭心症、不安定狭心症、冠れん縮性狭心症などがある。また心筋梗塞では心電図上ST変化から大きくST上昇型心筋梗塞(STEMI: ST elevation myocardial infarction)と非ST上昇型心筋梗塞(Non-STEMI)に分けられている。このような症例にPCIを実施した場合、治療後一定期間DAPT治療を実施しなければならない。このような症例に対して抗凝固療法を追加する場合、出血事象が増加することは容易に想像されるはずである。このため2017年の欧州で定められたガイドラインでは、図2に示すように症例の状態に合わせて抗血小板剤や抗凝固薬を選択することが定められている3)。さらに近年のトピックスとして長期的に抗血小板剤と抗凝固薬を内服させることの意義があるのかについて検討を行った臨床試験結果が報告された。2019年の欧州心臓病学会のlate breaking sessionにて報告されたAFIRE試験がそれである。この試験は日本人を対象とし、抗血小板剤と抗凝固薬としてリバーロキサバンを内服させることで長期的な有効性と安全性を検討した試験である4)。この試験の結果虚血性心疾患治療後の長期的な治療成績を比較した場合、リバーロキサバン15mgにP2Y12阻害薬(抗血小板剤)を投与していた群の方がワルファリンに加えDAPT治療を行った群と比較して、安全性ばかりでなく有効性までも優位であるといった素晴らしい結果が報告された。これらの結果を踏まえ虚血性心疾患合併心房細動患者における抗血栓療法の治療方法に関しては、急激な変化を遂げている。

まとめ

冠動脈疾患を合併する心房細動患者においては、虚血リスクと出血リスクを適切に考慮して抗血栓療法を選択すべきである。2017年の欧州ガイドラインでは治療12ヶ月以降は経口抗凝固薬による単剤治療が推奨されていたが根拠となるエビデンスは不足していた。AFIRE試験によって本邦における12ヶ月以降のリアルワールドエビデンスとしてリバーロキサバン単剤療法の有効性と安全性が示された。冠動脈疾患を伴う心房細動症例は日常頻繁に認める状態である。そのような症例において、抗血小板剤ならびに抗凝固療法を行うことは出血といった安全性面より注意しなければならない状態である。いままで、各種DOACにおいて急性期治療のエビデンスは構築されてきていたが、慢性期にどのようにすれば良いかといったエビデンスは乏しかった。今回AFIRE試験にて日本人における慢性期の冠動脈疾患合併心房細動症例において、リバーロキサバンの有用性ならびに安全性が示めされた。今後このようなエビデンスにそった治療法を選択していくことが求められると考えられる。

令和3年2月18日(木)
新潟市内科医会学術講演会にて特別講演

参考文献

1)P Gabriel Steg, Deepak L Bhatt, Tabassome Simon, et al. Ticagrelor in Patients with Stable Coronary Disease and Diabetes. N Engl J Med, 381: 1309-20, 2019.

2)Connolly SJ, Ezekowitz MD, Yusuf S, et al. Dabigatran versus warfarin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med, 361: 1139-51, 2009.

3)Marco Valgimigli, Héctor Bueno, Robert A Byrne, et al. 2017 ESC focused update on dual antiplatelet therapy in coronary artery disease developed in collaboration with EACTS: The Task Force for dual antiplatelet therapy in coronary artery disease of the European Society of Cardiology (ESC) and of the European Association for Cardio-Thoracic Surgery (EACTS). Eur Heart J, 39: 213-60, 2018.

4)Yasuda S, Kaikita K, Akao M, et al. Antithrombotic Therapy for Atrial Fibrillation with Stable Coronary Disease. N Engl J Med, 381: 1103-13, 2019.

図1 A)Primary Composite Efficacy Outcomeであるcardiovascular death、myocardial infarctionならびにstrokeのカプランマイヤー曲線
B)Primary Safety Outcomeであるmajor bleedingのカプランマイヤー曲線

図2 ESCのDAPTガイドライン2017 経口抗凝固薬を必要とするPCI後患者のDAPTアルゴリズムおよび期間に関する推奨について

図3 A)AFIRE試験における安全性の評価 TIMI major, TIMI minor または医療行為を要する出血について
B)AFIRE試験における有効性の評価 心血管死、心筋梗塞または脳卒中について VKA: ワルファリン, DAPT: Dual antiplatelet therapy

(令和3年11月号)

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