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新潟市医師会報より

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コロナ禍の子どものこころ─コロナ×こどもアンケート・全国調査より─

国立成育医療研究センターこころの診療部 山口 有紗

新型コロナウイルス感染症とそれに伴う社会の変化(コロナ禍)により、子どもたちの生活は劇的に変わり、子どもの心身には多くの影響が出ている。今回は、2021年10月に新潟県医師会主催の学校保健研修会で発表させていただいた「コロナ×こどもアンケート」調査結果をもとに、その後の追加調査の結果を加えて報告する。

「コロナ×こどもアンケート」

「コロナ×こども本部」は、国立成育医療研究センター内外の研究者や心理士、医師らが中心となり、有志で設立したチームである。「コロナ×こどもアンケート」、LINEでのプッシュ型の情報発信(「コロナ×こども本部」)などにより、コロナ禍における子どものアドボカシー・参画をはじめとする権利擁護を行ってきた。

「コロナ×こどもアンケート」は、コロナ禍においてなかなか届きづらい、子どもや保護者の声を、匿名のオンライン調査によって集め、子どものニーズに合わせて情報発信をすることで、問題の早期発見や対策、支援につなげることを目指している。これまで、のべ約4万人以上の子どもと保護者が参加し、集計・解析された結果は、子どもや保護者、子どもを支える教育機関や行政などに報告された。オンライン調査は、主にSNSなどを通した呼びかけによる任意の参加であるため、回答者は日本全体を代表していない可能性があることには留意が必要である。

2020年3月の突然の休校、緊急事態宣言により、子どもたちは多くの変化に対応し、色々なものを諦めることを強いられた。同年6月ごろに学校が再開されても、夏休みの短縮、新しい生活様式、行事の縮小・中止、部活動の制限などが行われ、そのまま学年末を迎えた。その後も定期的に流行の波が続き、子どもたちはマスクでの生活や楽しみにしていたことの制限と共に生活している。流行の収束が見えないなか、大人と同様に、子どもたちにもストレスが募っている。私たち「コロナ×こども本部」は、2020年4月から2021年12月までの間に、合計7回の「コロナ×こどもアンケート」を実施した(図1)。第1回は2020年4−5月の一斉休校と緊急事態宣言真っ最中、第2回は6−7月の学校再開の時期、第3回は夏休みが明け本来なら行事など子どもたちの楽しみが多かったはずの9−10月、第4回は第3波が押し寄せていた11−12月、第5回は年度末の2−3月、第6回はコロナ禍での2回目の夏休み明け、そして第7回は子どもへのワクチンも普及してきた12月に実施した1)−7)。

子どもの生活の変化

コロナ禍で子どもの生活はどのように変化したのだろうか。2020年春の第1回調査では、多くの子どもが、コロナ前と比べて就寝時間が乱れていると答えた。学校再開後、秋の第3回調査でも、小学校高学年以上の3割に就寝時刻の遅れや乱れがみられ、影響が続いていることがわかった。同じ第3回の調査で、睡眠で困っていることについて尋ねると、目覚めに時間がかかる、日中眠い、週末に普段より多く寝てしまう、と答える子どもが多く、朝起きられなくて登校できないことがある子どもも一定数いることが明らかになった。

スクリーンタイムも変化している。勉強以外で、テレビ、ゲーム、スマホの画面を見ていた時間(スクリーンタイム)について尋ねると、休校中の第1回調査では、半数以上の子どもが、スクリーンタイムが増えたと回答した。特に、高学年になるほど、その傾向が強かった。第3回の調査でも、4割以上の子どもが1時間以上の増加があると答えており、睡眠同様、影響が続いていることが示唆された。

ステイホームによる生活環境の変化は、食習慣にも影響している。第3波の第4回調査では、全ての年代で、4人に1人の割合で、間食の機会が増えたとの回答が得られた。欠食が増えた、食事をとる時間が不規則になった、運動量が減って食事量が減った、と答えた子どもは、中高生の10%以上だった。

医療従事者は強く感じていることかと思うが、子どもの受療行動も影響を受けたことがアンケートでも明らかになった。2020年春時点で、過去1ヶ月間に予防接種や健診、持病の定期受診などの受診予定があった方を対象に実際に受診したかどうかを尋ねると、3割が中止や自粛などで受診できなかったと回答した。オンラインや電話での診療や処方箋発行を利用した子どもは10%程度いた。予定外の受診を要するような症状があった場合にも、半数近くが受診を控えていた。乳幼児健診について第2回調査で尋ねると、集団健診を受けたくないと考えている保護者は30%程度いた一方で、個別健診なら99%、オンラインなら85%の保護者が受けたいと答えていた。既存の枠組みにとらわれず、工夫することで子どもたちに出会うことの必要性が示されている。

子どものメンタルヘルスへの影響

コロナ禍が子どもの精神に与える影響については早期から多くの指摘がなされてきた。ステイホームやソーシャル・ディスタンスはPTSD症状、混乱、怒りなど、精神的にネガティブな影響を与える8)。特に子どもは、ルーチンの変化(学校閉鎖など)、友人や地域資源からの社会的孤立によりメンタルヘルスが悪化しやすい9)。実際に、コロナ禍でうつ症状のある子どもは4人に1人、不安症状のある子どもは5人に1人で、コロナ前に比べてそれぞれ倍増しているという報告もある10)。

我々の調査でも、新型コロナウイルスに関連したストレス症状10項目について、繰り返し尋ねている。第6回調査では、「コロナのことを考えると嫌な気持ちになる」子どもは38%、「すぐにイライラする」は28%、「最近集中できない」は26%、「寝つけない・夜目が覚める」は20%で、いずれか1つ以上のストレス反応を選択した子どもは全体の70%であった。これは初回の調査から、一貫して高い数字で推移している。日本でも、強いストレスの遷延が、子どもたちに影響を与え続けていることが示唆される。また、第4回調査では、小学校高学年では15%、高校生では30%に中等度以上のうつ症状があることが明らかになった。第6回調査では学校に行きたくない子どもは全体の38%にものぼった。自由記載には、感染することが怖いことや、マスクの負担、楽しみにしていた行事や友達との交流が奪われたことのつらさなどが語られている。

こうした心身の不調を感じているのは自分だけだと思っている子どもも多い。このようなストレス状況においては多くの子どもが心身に影響を受けており、それは当然のことであること、一緒にできることを考えたいと伝えるノーマライゼーションを日常の診療で行うことが大切である。特に、子どものメンタルヘルスの不調は、成人に比べてイライラ、不登校、いわゆる非行や問題行動などとして現れやすい。子どもからのサインを見落とさないようにしたい。

子どものリソース

子どもたちは力のある存在であり、つらい状況にあっても回復する力を持っている。子どもの回復を支えるものとしては、保護的なあたたかい大人との関係性、社会とのつながり、本人の認知や行動のスキル、日々のルーチンなどがあるが、皮肉にもこうしたものはコロナ禍で大きく変化した。世界的にも、パンデミックでの経済状況の悪化や家族の役割の変化、孤立などにより家庭内のストレスが増え、家庭内暴力や子ども虐待の増加が懸念されている11)−13)。

当アンケートでは、子どもを取り巻く家族や地域とのつながりなどのリソースがどのように変化したかについても調査している。第5回のアンケートでは、半数以上の家庭で、親子で過ごす時間が増加したことがわかった。親子の時間についてのとらえ方は、ちょうど良い、少し減らしたい、など、家庭によって様々である。保護者のメンタルヘルスに注目すると、同じく第5回調査で、過半数の保護者が、心に何らかの負担があり、深刻な心の状態の恐れがある保護者も15%程度いることがわかった。保護者のメンタルヘルスの悪化は、子どもとの関わりに影響を及ぼす可能性がある。第3回調査では、直近の1ヶ月で、家で叩かれたと答えた子どもは11%、怒鳴られたと答えた子どもは25%であった。特に、外出が制限されている期間は、家庭環境の悪化が外からは見えづらく、注意が必要である。

第5回調査では、子どもの対人関係の変化を尋ねた。コロナ前と比較して、家族と話す時間は、4割程度の子どもが、それぞれ増えた・減ったと回答した。友達と話す時間は、4人に1人がとても減ったと感じていた。先生や大人への話しかけやすさについては、およそ半数の子どもが話したり相談したりしづらくなった、と伝えてくれている。同じ調査で家族が利用できる子育て資源について聞くと、私的にも、公的にも、相談できる・預けられる資源が減ったと回答した保護者が多くみられた。これまで頼れていた子育て資源とのつながりが減少することで、家庭内の問題を、家庭だけで抱えている可能性があり、これまでよりも積極的に、保護者と連携していくことが求められる。

おわりに

「学校のコロナ対策に参加したい。決められたことしかしないのはおかしい」

「大人だけで色々議論しないでこどもの気持ちも聞いてください」

アンケートに寄せられた子どもの声である。第2回の調査で子どもたちに「こどものことを決めるとき、大人たちはこどもの気持ちや考えをよく聞いていると思いますか?」と尋ねると、中高生の約4割が「あまり・全くそう思わない」と回答した。

子どもの気持ちや意見を受け止め、社会に届け、子どもに返していく「子どもの参画の権利」「子どものアドボカシー」という理念が日本でも浸透してきた。感染症の流行や災害などの社会的な危機や暴力などの中では、子どもは保護の対象にはなっても、権利の主体にはなりにくく、参画やアドボカシーがないがしろになりやすい14)。コロナ禍でこそ、子どもの声に耳を傾け、その声を適切に社会に届けることが必要である。医療の現場において私たち一人ひとりが子どもの声の受け手としてできることを、いま一度、そして何度でも考えたい。

参考文献

1)コロナ×こども本部.“コロナ×こどもアンケート第1回調査 報告書” https://www.ncchd.go.jp/center/activity/covid19_kodomo/report/CxC1_finalrepo_20210306revised.pdf(2022年1月15日閲覧)

2)コロナ×こども本部.“コロナ×こどもアンケート第2回調査 報告書” https://www.ncchd.go.jp/center/activity/covid19_kodomo/report/CxC2_finrepo_20200817_3MH.pdf(2022年1月15日閲覧)

3)コロナ×こども本部.“コロナ×こどもアンケート第3回調査 報告書” https://www.ncchd.go.jp/center/activity/covid19_kodomo/report/CxC3_finalrepo_20210206am3.pdf(2022年1月15日閲覧)

4)コロナ×こども本部.“コロナ×こどもアンケート第4回調査 報告書” https://www.ncchd.go.jp/center/activity/covid19_kodomo/report/CxC4_finalrepo_20210210.pdf(2022年1月15日閲覧)

5)コロナ×こども本部.“コロナ×こどもアンケート第5回調査 報告書” https://www.ncchd.go.jp/center/activity/covid19_kodomo/report/CxC5_repo_20210525.pdf(2022年1月15日閲覧)

6)コロナ×こども本部.“コロナ×こどもアンケート第6回調査 報告書” https://www.ncchd.go.jp/center/activity/covid19_kodomo/report/CxC6_repo_final.pdf(2022年1月15日閲覧)

7)コロナ×こども本部.“コロナ×こどもアンケート第7回調査 報告書” https://www.ncchd.go.jp/center/activity/covid19_kodomo/report/CxC7_repo.pdf

8)Brooks SK et al: The psychological impact of quarantine and how to reduce it: rapid review of the evidence. The Lancet, 395(10227): 912-920, 2020.

9)Lee J: Mental Health Effects of School Closures During COVID-19. The Lancet Child & Adolescent Health, 4(6): 421, 2020.

10)Racine N et al: Global Prevalence of Depressive and Anxiety Symptoms in Children and Adolescents During COVID-19: A Meta-analysis. JAMA Pediatrics, 175(11): 1142-1150, 2021.

11)ZERO to THREE. How COVID-19 Is Impacting Babies and Families. https://www.zerotothree.org/resources/3356-how-covid-19-is-impacting-babies-and-families (2022年1月15日閲覧)

12)Cluver L et al: Parenting in a Time of COVID-19. The Lancet, 395(10231): e64. https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)30736-4, 2020.

13)Chandan JS et al: COVID-19: A Public Health Approach to Manage Domestic Violence Is Needed. The Lancet Public health, 5(6): e309. https://doi.org/10. 1016/S2468-2667(20)30112-2, 2020.

14)Kosher H et al: Children’s participation: A new role for children in the field of child maltreatment. Child Abuse and Neglect, 110(Pt 1): 104429, 2020.

図1 「コロナ×こどもアンケート」の実施時期

(令和4年6月号)

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