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新潟市医師会報より

新潟市医師会

血液透析患者における血清 total P1NP(type I procollagen-N-propeptide)測定の有用性について

山東第二医院
惠 以盛

はじめに

骨代謝マーカーは骨代謝状態をリアルタイムに評価でき、簡便で骨密度(bone mineral density:BMD)よりも早く治療効果判定が可能であるという特徴がある。骨代謝マーカーと骨組織のパラメーターは相関し、透析患者においてもこれらの血中濃度は骨代謝を反映しているものと考えられる。
一般に、透析患者の骨回転が高回転低回転を呈しているかを判断するには副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone:PTH)が有用とされているが1)、個々の症例において血清PTHのみで骨代謝回転の状態を評価するのは難しい場合が多く、骨代謝マーカーの存在が注目される。さらに透析患者においては、骨密度の減少がみられることが多く、その点でも骨代謝マーカーはBMD減少の予測に有用な指標となっている。
また、従来より透析患者の代謝性骨疾患の診断には骨生検による組織・形態学的評価が必須であるとされていたが、骨生検は侵襲的な要素が大きく、繰り返して行うことが困難である。その点からも、非侵襲的に骨代謝状態を反復して直接評価できる骨代謝マーカーの測定が必要となってくる。
今回、透析患者において新規の骨形成マーカーである血清Ⅰ型プロコラーゲンN末端プロペプチド(procollagen type I amino-terminal propeptide:P1NP)を測定し各骨代謝マーカーとの比較について検討を試みた。

P1NPについて

骨は骨塩と骨基質により構成され、P1NPは分子量約35KDaの蛋白質である。Ⅰ型コラーゲンが骨芽細胞内でその前駆物質のⅠ型プロコラーゲンとして合成され、次いで細胞外に分泌されたのちC末端あるいはN末端がペプチダーゼ作用により切断され、重合してコラーゲン線維が完成する。切断されたC末端あるいはN末端のプロペプチドは血中に放出され、C末端プロペプチドがP1CP、N末端プロペプチドがP1NPとなる2)(図1)。
従来の代表的な骨形成マーカーである骨型アルカリフォスファターゼ(BAP)は、骨芽細胞がある程度成熟してからでなければ上昇しないのに対して、P1NPは比較的早期の骨形成を反映する。
また、P1NPは三量体からなり、温度、時間に依存して単量体に変化し、total P1NPはこの両方を測定する。一方、三量体のみの測定がintact P1NPとしてRIA法にて用いられている。P1NP産生量を把握する上では、三量体とそれが変化した単量体を合わせて測定、評価する方が正確とされる。

主な骨代謝マーカーについて(表1)

主な骨形成マーカー、骨吸収マーカーを示す。P1NPは新規の骨形成マーカーであり、腎機能低下の影響を受けないとされる3)。

対象および方法

対象は当院の閉経後の女性血液透析患者28名で、平均年齢は73.2±11.3歳、平均透析歴は12.4±12.8年、原疾患は慢性糸球体腎炎が13例、糖尿病性腎症が8例、腎硬化症が2例、その他が5例であった。
透析モードはpre dilution HDFが25例、I-HDFが3例であった。
方法は週初めの透析前に採血を行い、血清total P1NP(ECLIA法)、血清intact PTH(ECLIA法)、骨形成マーカーとして骨型アルスリフォスファターゼ(BAP)(CLEIA法)、オステオカルシン(OC)(FEIA法)をそれぞれ測定し比較検討した。
さらに、慢性糸球体腎炎と糖尿病性腎症における血清total P1NP値の比較およびCKD-MBD(CKD–mineral and bone disorder)の治療薬であるビタミンD受容体作動薬(VDRA)およびカルシウム感知受容体作動薬(calcimimetics)の使用と血清total-P1NP値との関連性についても検討した。

各パラメータの透析前値(表2)

透析前における各パラメーターの値を示す(表2)。血清total P1NP値は311.1±171.9 ng/mL(閉経後女性基準値:26.4~98.2 ng/mL)、i-PTHは211.6±116.0 pg/mL(基準値:10~65 pg/mL)、BAPは23.2±18.6 μg/L(閉経後女性基準値:3.8~22.6 μg/L)、OCは76.0±46.7 ng/mL(基準値:8.3~32.7 ng/mL)であった。

血清total P1NP値とi-PTH値との関係

r=0.45、y=0.30X+117.38、p<0.05と有意な正の相関を示した(図2)。

血清total P1NP値とBAP値との関係

r=0.49、y=0.05X+6.84、p<0.01と有意な正の相関を示した(図3)。

血清total P1NP値とOC値との関係

r=0.61、y=0.16X+24.12、p<0.01と有意な正の相関を示した(図4)。

原疾患別における血清total P1NP値の比較

血清total P1NP値は慢性糸球体腎炎では313.7±199.6 ng/mL、糖尿性腎症では366.9±154.0 ng/mLと両者に有意差は認められなかった(図5)。

VDRAおよびcalcimimetics使用別の血清total P1NP値の比較

VDRAのみ使用群(8例)における血清total P1NP値は281.3±170.1 ng/mL、VDRAとcalcimimetics併用群(14例)では327.4±200.1 ng/mL、いずれも投与無し群(6例)では313.0±112.8 ng/mLであり、ともに有意な差は認められなかった(図6)。

考察

現在、骨基質において最も豊富な有機成分であるⅠ型コラーゲンの合成を反映するマーカーとしてはOC、BAP、P1CPなどが臨床応用されている。P1CPならびにP1NPは、骨形成の比較的早期の指標であり、BAPとオステオカルシンは骨基質の成熟、石灰化の過程で発現する。
今回、検討を行ったP1NPはⅠ型コラーゲンの合成の際、プロコラーゲンのN末端からプロセシングによって切り離されたプロペプチド部分であり、その血中濃度はⅠ型コラーゲンの合成すなわち骨形成を知る上で有用であると考えられており、骨形成マーカーとして利用されている。
曽根は、腎機能正常者ではP1NPがオステオカルシンおよびBAPとそれぞれ正の相関関係があることを明らかにしている4)。本研究においても、P1NPはi-PTH、OCおよびBAPとそれぞれ正の相関関係が認められ、骨形成を反映するものと考えられた。
VDRA、calcimimetics使用別のP1NP値の比較において有意差はみられず、それらの薬剤による影響を受ける可能性は低いものと考えられた。
奥野らはP1NPはBAPおよびOCに比べ透析前後値に変化がみられないことを報告しており、透析患者において良好な骨形成マーカーと考えられた5)。
また、2021年に欧州RODワーキンググループ(EUROD)から進行したCKD stage G4-5Dを対象とした骨粗鬆症の診断と治療に関する合同声明が発表され6)、骨吸収マーカーである骨特異的酒石酸抵抗性酸フォスファターゼ(TRACP-5b)を含めて腎機能に影響されないBAP、P1NPがCKDの骨代謝マーカーとして有用であり、治療初期の変化や治療終了時の再導入時期の判断に関する情報が得られるとしている7)。

まとめ

血清total P1NPは各骨形成マーカーと相関し、原疾患やCKD-MBD治療薬の影響を受けず、透析患者において今後検討に値する骨形成マーカーであると考えられた。

文献

1)Hutchinson AJ, Whitehous RW, Boulton HF, et al.: Correlation of bone histology with parathyroid hormone, vitamin D3, and radiology in end-stage renal disease. Kidney Int, 44 : 1071-1077, 1993.

2)https://tozen-sekitsui.com/archives/79781033.html(2025年6月16日閲覧)

3)Ueda M, Inaba M, Okuno S, et al.: Clinical usefulness of the serum N-terminal propeptide of type I collagen as a marker of bone formation in hemodialysis patients. Am J Kidney Dis, 40 : 802-809, 2002.

4)曽根照喜:Ⅰ型プロコラーゲン-N-プロペプチド:日本臨牀 68(増刊号1)248-251, 2010.

5)奥野仙二、稲葉雅章:透析患者における骨代謝マーカーの意義:日本透析医会雑誌 Vol.22 No.3, 401-408, 2007.

6)Pazianas M, Miller PD : Osteoporosis and Chronic Kidney Disease-Mineral and Bone Disorder (CKD-MBD) : Back to Basics. Am J Kidney Dis, 78 : 582-589, 2021.

7)Haarhaus M, Evenepoel P : Chronic Kidney Disease Mineral and Bone Disorder(CKD-MBD) wirking group of the European Renal Association-European Dialysis and Transplant Association (ERA-EDTA). Differentiating the causes of adynamic bone in advanced chronic kidney disease informs osteoporosis treatment. Kidney Int, 100 : 546-558, 2021.

(令和7年7月号)

図1 P1NPとは

表1 骨代謝マーカーと腎機能の影響の有無

表2 各パラメーターの透析前値

図2 透析前における血清total P1NP値とi-PTH値との関係

図3 透析前における血清total P1NP値とBAP値との関係

図4 透析前における血清total P1NP値とOC値との関係

図5 原疾患別における血清total P1NP値の比較

図6 VDRAおよびcalcimimetics使用別の血清total P1NP値の比較

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