大倉 裕二1)、菊池朗2)、土田 圭一3)、
坂田 英子4)、佐藤 信昭5)、西條 康夫6)、
猪又 孝元7)
1)新潟県立がんセンター新潟病院 腫瘍循環器科
2)新潟県立がんセンター新潟病院 婦人科
3)新潟県立新発田病院 循環器内科
4)新潟市民病院 乳腺外科
5)新潟県立がんセンター新潟病院 乳腺外科
6)新潟大学大学院 医歯学総合研究科 腫瘍内科
7)新潟大学大学院 医歯学総合研究科 循環器内科
はじめに
アントラサイクリン(anthracycline: AC)は有効性が高く、半世紀にわたり幅広いがん種に使用されてきたが、不可逆的な心毒性がありAC心筋症を惹起する。発症時期に応じて、急性(投与後2週間以内)、早期慢性型(投与後1年以内)、遅発性慢性型(投与後1年以上~数十年)に分類されており、AC心筋症はがん治療関連心機能障害(Cancer Therapy-Related Cardiac Dysfunction: CTRCD)の代表格である。
2016年にCardinaleらは投与患者2,625名を前向きに5.2年間(中央値)観察し、「心エコーにおける左室駆出率(EF)の50%未満への低下」と定義した心毒性が9%(226名)に認められ、うち98%が投与後1年以内に発生することを報告した1)。更にそれまで不可逆的と考えられていた心毒性が、3か月毎に検査をし、診断後ただちに心保護薬を開始することでEFの回復が期待できることを初めて示した。これにより「早期発見と早期治療」に対する関心が高まり、欧州心臓病学会(ESC)ガイドラインで推奨(クラスI、エビデンスレベルC)されるに至った2)。
その後10年は、高感度心筋トロポニンや心エコーのglobal longitudinal strain(GLS)などの高感度検査が早期発見に試用され、ACE阻害薬(ACEI)やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)やβ遮断薬を用いた介入研究が行われたが、結果は期待したほどではなかった3-5)。現在、「早期発見と早期治療」戦略がどう再評価されているかは後述するが、我々は3年間の研究助成を得て、新潟市においてAC心不全対策を構築すべく臨床研究を実施した。本稿ではその成果を報告する。
AC心筋症の発生率の推移
我々はAC心筋症の疫学調査を新潟市で実施した6)。対象をACで治療した乳がん患者に絞り、治療後にEF50%以下を示した患者をAC心筋症と定義した。調査は新潟大学、新潟市民病院、がんセンターの3病院が協力して後ろ向きに行った。1990年から2020年までの31年間にACで治療した乳がん患者2,959名からAC心筋症75名(2.5%)を検出した。心筋症の発生率は1990年代は6%だったが、2007年以降、human epidermal growth factor receptor 2(HER2)陽性乳がんがトラスツズマブで治療されるようになると、ACの使用量が減り2010年代には発生率は2%に低下した(図1)。しかし、そのトラスツズマブにも可逆的な心毒性があるため、AC使用後に使用される症例において心筋症の発生が認められた。
AC心筋症の患者数の増加
発生率が低下したにもかかわらず、AC心筋症患者は増加した(図2B)。理由の1つはAC使用患者の増加であった(図2A)。背景に乳癌診療ガイドラインによる推奨が考えられた。もう1つはAC心筋症患者の予後の改善であった。2006年以前と比べて、2007年以降は5年生存率が高かった(28% vs. 45%、p = 0.058)。ACの平均使用量は以前よりも有意に低かった(525 mg/m2 vs. 307 mg/m2、p < 0.001)。しかし、予後改善の予測因子は、ACの使用量の減少ではなく、HER2陽性でトラスツズマブ治療を受けたことであった(全死亡ハザード比 = 0.24、95%信頼区間:0.10~0.56、p = 0.001)。トラスツズマブがAC心筋症の予後を改善し、生存患者数の増加につながっていた(表1)。
AC心筋症の分化
Felkerらは2次性心筋症の予後は基礎疾患によって異なることを報告した7)。2000年頃の乳がんのAC心筋症の生存曲線は1本だった。我々は基礎疾患のサブタイプによって生存曲線が2007年以降は2本に分化することを示した(図3)。転移を伴うHER2陰性乳がんのAC心筋症の予後は依然として不良で(表1)多くの患者においてAC累積投与量は上限近くに達した。対照的に、トラスツズマブで治療されたHER2陽性乳がんのAC心筋症は予後が良好であった。EwerらはACによる心機能障害をI型CTRCD、トラスツズマブによる心機能障害をII型CTRCDと記述しているが8)、我々の2006年までのAC心筋症患者は殆どがI型CTRCDであり、2007年以降はI型とII型の混在であった。トラスツズマブ時代に新潟市でAC心筋症患者が増加したことは、「ACにトラスツズマブを追加すると心不全のリスクが増加するが、トラスツズマブによるがん生存率の改善のメリットの方が上回る」とする数々の報告を裏付けた9)。
循環器内科医とがん治療医の全県アンケート調査
AC心筋症の予後の改善や、それに伴う疫学の変化や、ガイドラインの「早期発見・早期治療」戦略の推奨など、長らく顧みられなかったAC心筋症への対応にも変化が起きている。治療機会を逸失しないように、ガイドラインは組織的な対応を推奨している。この背景には、医療のデジタル化による情報共有・統合の円滑化、多職種連携やチーム医療の普及がある。さらに、本研究の2年目には、わが国の「がんと循環器病対策の基本法」における基本計画に「腫瘍循環器」が明記され、「がんと循環器の専門家の連携の促進」が目標に掲げられた。これは、時代のニーズに即したものであり、かつ達成可能な目標設定と言える10,11)。
しかし、循環器内科医やがん治療医がガイドラインの「早期発見・早期治療」戦略を理解し「連携」できているかについては明らかではなかった。そこで、我々は基本計画の閣議決定の2か月後に、AC心筋症に関するアンケート調査を県下で実施した。県内の全ての循環器内科医と勤務先の指導的ながん治療医に郵送し、29施設の循環器内科医124人と指導的ながん治療医41人から回答を得た12,13)。
Q5の「早期発見・早期治療」の知識と実践に関する質問に対して、「知っている」と回答した循環器内科医は89.1%、指導的ながん治療医は87.8%と高かった。「知っているが実践していない」の回答は循環器内科医に多く(73.6% vs. 48.8%、p < 0.005)、「知っていて実践している」の回答は指導的ながん治療医に多かった(15.5% vs. 39.0%、p < 0.005)(図4)12)。双方の連携を「相談なし」「心筋症が発症したら相談」「発症前から相談」の3つに分け、同一施設における双方の回答のマッチングを調べた(図5)12)。AC心筋症に対する連携は、「心筋症が発症したら相談」で一致する施設が11施設(55%)、「発症前から相談」は1施設(5%)のみであった(図5A)。免疫チェックポイント阻害薬(ICI)関連心筋炎と比較してみると、ICIは発売後10年しか経っていないためか、有害事象のICI関連心筋炎に対して対応の足並みが揃っていないが(図5B)13)、AC心筋症に対しては50年の使用経験の中で連携が確立されているようにみえる。しかし、「発症後の連携」では不十分であり、ガイドラインが掲げる「無症候例の検出」を達成できていない。達成には「発症前から相談」する必要があり、今後の課題と言える。
「早期発見・早期治療」戦略の転換2025
冒頭で述べたように、戦略が提唱され10年が経ち、見直しが行われている。我々の目指す早期発見はAC治療後1年以降の「遅発性慢性型」の検出であり、端的に言えば「放置の防止」を目的としている。具体的には、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)を用いた「発症前の心不全の検出」を目標としている。この設定は、ESCガイドラインの推奨2)と比較すると緩やかであり、遅れを取っていると指摘されてきたが、近年は見直されつつある。
この10年、欧米では「早期慢性型」への介入試験が多数行われてきた。介入のトリガーは、心筋トロポニンの上昇や心エコーのGLSの低下であり、3か月毎の厳密な監視体制が敷かれた。しかし、ACEIやARBやβ遮断薬による治療介入はEFの軽度な改善にとどまり、ハードエンドポイントへの有意な影響はなかった3-5)。この結果を受け、ESCガイドラインへの科学的批評が、米国心臓協会(ACC)から提起されている14-16)。その主な論点として、推奨のエビデンスの不足、心筋トロポニンの軽度上昇やGLSの低下のみをもってAC心筋症と診断することによる過剰診断の問題、頻回検査および心臓保護薬の費用対効果の不確実性、外部評価の欠如などが指摘されている。また、HER2阻害薬のEF低下に関しては、心毒性を許容しつつ治療を継続するという、寛容な対応(permissive cardiotoxicity)が提案されている。一方で、「遅発性慢性型」への推奨ではESCおよびACCの両学会で意見の一致をみている。それは「心不全バイオマーカーを用いた長期的サーベイランスの実施」と「心血管疾患の危険因子の特定、予防、および治療の重要性に関する教育の推進」に集約される。これは、我々がこれまで目指しながらも、未だ十分に達成できていない課題である。
リマインダーシステムの構築
2024年8月時点で、当院では1,357名のAC使用患者をフォローしている。とは言え「遅発性慢性型」AC心筋症の検出において、全ての患者に定期的に心エコー検査を継続することは、当院の医療資源では困難である。そこで、N末端プロBNP(NT-proBNP)を測定して、心不全リスクが高い400 pg/mL以上の症例に対して選択的に心エコーを実施する方針としている。当院では、2021年3月より、薬剤部、検査部、腫瘍循環器科、がん登録室が連携し、半年毎にAC使用患者のリストアップを行い、心不全スクリーニング(NT-proBNP測定および心エコー検査)の実施状況を確認している17)。さらに、担当医にリストを提示し、年1回以上の検査を勧奨することで、無症候性心機能低下患者の早期発見を目指している。2021年のシステム導入当初、実施率はAC投与から3年以内の患者におけるスクリーニング実施率は40%であったが、4年の経過に伴い73%まで向上した(図6)。
リマインダーシステムの効果
過去5年間における当院の新規収縮機能障害患者数を図7に示す。スクリーニング実施率の向上に伴い、AC心筋症の診断件数は増加傾向を示した。図7Aに示すように、スクリーニング開始前と比較すると、AC使用患者に占める割合は2.6倍(1.7%)に増加した。無症候例が多数含まれており、発症前の段階で診断できる機会が増加していることが示唆された。
さらに、新潟市医師会の助成を受けた過去3年間においては、AC以外の抗がん薬による収縮機能障害を含めた新規診断例が倍増しており、クリニックからの紹介数も増加傾向にある(図7B)。これは、医師会における関心の高まりとともに、地域のクリニックと当院との連携が進展していることを示唆している。
連携の普及および次世代の育成
本邦における腫瘍循環器学の発展は、2014年に東京大学名誉教授の小室一成先生が創設した「Onco-Cardiology Meeting」を端緒とする。この10年間で、日本腫瘍循環器学会の設立、基本法および基本計画への明記、ガイドラインの公表18)、大学教育の開始など飛躍的な進展をみせている。本県における発展には、新潟大学ががん医療および脳心血管病医療の分野で主導的な役割を果たしてきたことが大きく寄与している19)。得られた知見を患者に還元するためには、多診療科および多職種の協働が不可欠であり、さらに、将来を見据えた次世代の育成も喫緊の課題となっている。当院も、これらの発展を支えるため、積極的な情報発信と教育活動を行っている20-22)。
今後の課題
AC心筋症の発症率が患者の2%であることを過小評価すべきではない。生涯累積投与量の上限まで投与される患者では、用量依存的に発症リスクが高まる。また、心不全はEFが50%以上でも発症しうるが、ACに関連する疫学データは十分に蓄積されていない。したがって、「2%」という数字は過小評価の可能性があり、実際の心毒性リスクはより高いと考えるべきである。
さらに、腫瘍循環器領域における課題はACに限らない23)。近年の新規抗がん薬においても、潜在的な心毒性リスクが指摘されている。「がん患者の生命予後を決定づけるのはがん治療である」という点に異論の余地はない。しかし、その一方で、「併存症への対応は優先度が低く、後回しにしても差し支えない」とする認識は現代のがん医療に適合しない。がん治療の進歩により、がんと共存しながら生活する時代へと移行しつつある現在、併存症による症状をも一律にがん自体の影響とみなすことは適切ではない。患者の生活の質(QOL)の維持・向上を図るためにも、併存症の適切な評価と管理が求められる。その実現には、がん治療医が主導的役割を果たすとともに、クリニックや他の診療科との緊密な連携が不可欠である。
謝辞
本研究の遂行にあたり、新潟市医師会より最長3年間の助成(GC03720223)を賜り、腫瘍循環器学という新たな分野が新潟市の医療において認知される契機となった。特に、知見を患者に還元する上でクリニックとの連携強化が不可欠であるが、本助成はその推進において重要な役割を果たした。ここに深く感謝の意を表する。
また、日々連携に尽力されている新潟腫瘍循環器協議会(OCAN2020)の先生方、ならびに、3病院のデータ収集にご尽力いただいた新潟大学循環器内科の渡辺光洋先生および藤木伸也先生、リマインダーの実施にご協力いただいたがんセンター新潟病院の諸先生方、臨床検査技師、薬剤師、がん登録室の皆様に深謝申し上げる。さらに、本研究における全ての統計解析を担当いただいた新潟県立大学の田邊直仁教授、1990年より貴重なデータを蓄積されてきた新潟ブレスト健診センター佐野宗明先生および下越病院循環器内科岡田義信先生、これまでデータ管理に尽力された中川淑子氏、そしてアンケート調査にご協力いただいた県内の諸先生方にも、心より感謝申し上げる。
参考文献(*は研究助成論文)
1)Cardinale D, et al. Early detection of anthracycline cardiotoxicity and improvement with heart failure therapy. Circulation. 2015; 131: 1981-8.
2)Lyon AR, et al. 2022 ESC Guidelines on cardio-oncology. Eur Heart J. 2022; 43: 4229-4361.
3)Negishi T, et al. Cardioprotection Using Strain-Guided Management of Potentially Cardiotoxic Cancer Therapy: 3-Year Results of the SUCCOUR Trial. JACC Cardiovasc Imaging. 2023; 16: 269-278.
4)Henriksen PA, et al. Multicenter, Prospective, Randomized Controlled Trial of High-Sensitivity Cardiac Troponin I-Guided Combination Angiotensin Receptor Blockade and Beta-Blocker Therapy to Prevent Anthracycline Cardiotoxicity: The Cardiac CARE Trial. Circulation. 2023; 148: 1680-1690.
5)Austin D, et al. Preventing Cardiac Damage in Patients Treated for Breast Cancer and Lymphoma: The PROACT Clinical Trial. JACC CardioOncol. 2024; 6: 684-696.
*6)Watanabe M, et al. Increasing survivors of anthracycline-related cardiomyopathy with breast cancer in trastuzumab era: thirty-one-year trends in a Japanese Community. Breast Cancer. 2024; 31: 1080-1091.
7)Felker GM, et al. Underlying causes and long-term survival in patients with initially unexplained cardiomyopathy. N Engl J Med. 2000;342:1077-84.
8)Ewer MS, et al. Type II chemotherapy-related cardiac dysfunction: time to recognize a new entity. J Clin Oncol. 2005; 23: 2900-2.
9)Banke A, et al. Long-Term Risk of Heart Failure in Breast Cancer Patients After Adjuvant Chemotherapy With or Without Trastuzumab. JACC Heart Fail. 2019;7:217-224.
10)循環器病対策推進基本計画−厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/10905000/001077712.pdf (令和7年9月27日閲覧)
11)がん対策推進基本計画−厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/001077913.pdf (令和7年9月27日閲覧)
*12)Okura Y, et al. A Prefectural Survey on Anthracycline-related Cardiomyopathy at the Start of the Basic Plan to Promote Cancer Control Programs – Phase 4. Circ Rep. 2025; 7: 627-638.
*13)Okura Y, et al. A Prefectural Survey on Immune Checkpoint Inhibitor-Associated Myocarditis at the Start of the Basic Plan to Promote Cancer Control Programs – Phase 4. Circ Rep. 2025; 7: 176-182.
14)Raisi-Estabragh Z, et al. Cardiovascular Considerations Before Cancer Therapy: Gaps in Evidence and JACC: CardioOncology Expert Panel Recommendations. JACC CardioOncol. 2024; 6: 631-654.
15)Leong DP, et al. Cardiovascular Considerations During Cancer Therapy: Gaps in Evidence and JACC: CardioOncology Expert Panel Recommendations. JACC CardioOncol. 2024; 6: 815-834.
16)Blaes A, et al. Cardiovascular Considerations After Cancer Therapy: Gaps in Evidence and JACC: CardioOncology Expert Panel Recommendations. JACC CardioOncol. 2025; 7: 1-19.
*17)大倉裕二 がん薬物療法に関連した心血管有害事象の早期発見と早期対応のための多職種連携-地域で始めるABC-循環器内科 (Cardioangiology)/ 循環器内科編集委員会 編 93(2), 138-145, 2023. 東京:科学評論社
18)Onco-cardiologyガイドライン 日本臨床腫瘍学会、日本腫瘍循環器学会編 南江堂 2023年3月
19)大倉裕二、尾崎和幸、森山雅人、西條康夫、猪又孝元 診療科の垣根を越えてノベル心筋炎に備える 新潟県医師会報 875, 2-8. 2023.
20)石垣純香 腫瘍循環器診療における臨床検査技師の役割 日本臨牀 82(増刊号2): 465-469, 2024.
21)大倉裕二 腫瘍循環器診療における医療連携とチーム医療 日本臨牀 82(増刊号2): 451-457, 2024.
22)がんプロオンライン教育プラットフォーム(がんプロ履修生のみ聴講可能)東北大学ISTU https://istu4g.dc.tohoku.ac.jp/srp_login.php
がんプロオンライン教育プラットフォーム https://ganpro.md.tsukuba.ac.jp/ (令和7年9月27日閲覧)
23)Okura Y, et al. The Impending Epidemic of Cardiovascular Diseases in Patients With Cancer in Japan. Circ J. 2019; 83: 2191-2202.
(令和7年10月号)

図1 AC治療を受けた患者におけるAC心筋症の発症率
発症率は各年にAC治療を開始した患者数に対する、後にAC心筋症を発症した患者数の割合として算出した。黒色のバーはトラスツズマブ治療を受けた患者、灰色のバーはトラスツズマブ治療を受けていない患者を示す。折れ線グラフは3年ごとのARCMの発症率を示している。

図2 AC治療を受けた乳がん患者およびAC心筋症患者の累積数
(a)1990年から2020年までにAC治療を受けた乳がん患者の累積数
(b)同時期にAC心筋症と診断された患者の累積数
青線は新規がん患者、緑線は生存患者、橙線は死亡患者を示す。

表1 AC心筋症の死亡の調整ハザード比
Overallは全期間、Late phaseは2007年以降を示す。AC心筋症の発症時の死亡の予測因子。遠隔転移とHER2陽性かつトラスツズマブ治療は独立した予測因子であった。一方、EF低下やNT-proBNPの上昇や心保護薬投与は予測因子ではなかった。

図3 トラスツズマブ療法の有無による2007年以降のAC心筋症患者の生存曲線(log-rank検定)

図4 ガイドラインの推奨事項の認識と実施に関する質問と回答
緑色は循環器内科医、黄色は指導的ながん治療医の回答の割合を示す。
Q5)AC心筋症の早期発見と治療、Q6)遅発型慢性のAC心筋症を検出するための長期的なスクリーニング、についての質問である。回答の割合を両群間で検定した。**P < 0.01、†P < 0.001

図5 ACで治療を行う病院における、循環器科とがん診療科の連携の比較
20の病院における循環器科とがん治療科間の(A)AC心筋症、(B)ICI関連心筋炎に関する相談のタイミングの一致度。科内の多数回答を科の回答として採用した。

図6 AC投与から3年以内の患者における年間のスクリーニング実施率
左から右へ2021年3月、同9月、以降は22、23、24年の3月と9月実施率を示す。

図7 新潟県立がんセンターの新規の収縮機能障害患者数の年次推移
A)AC心筋症、B)AC心筋症およびその他の心筋症、両端矢印線は助成期間