西蒲中央病院 訪問看護ステーション 地域理学療法認定理学療法士
小島 渉
去る2025年7月9日に新潟市医師会第148回在宅医療講座にて表記の題でお話しする機会を頂き、今回このような形で講演内容をまとめさせていただくことになりました。今後の多職種連携の参考にしていただければ幸いです。
はじめに
訪問リハビリテーションはその人が「自分らしく暮らす」ためにそれぞれの自宅や地域に出向いて、リハビリテーションの立場から行われる支援です。その中で、リハビリテーション専門職は、健康状態や心身の状態を把握した上で生活機能及び背景因子を評価し、本人、家族への直接支援と関連職種への助言等の間接支援を提供しています。
「自分らしく暮らす」ということは、本人が納得した生活を共に暮らす人達との関係性から「役割」や「存在価値」を見出した暮らしだと考えます。様々な疾病等において「自分らしく暮らす」ことが難しくなった方に「強み」を生かした暮らしの再構築をお手伝いしたいと思っております。
本人の強みを生かした暮らしのために
訪問リハビリテーションでは、国際生活機能分類(以下ICF)(図1)を基に調査、評価を行い、本人の強みを生かした生活のお手伝いをしております。ICFとは健康の構成要素に関する分類で、心身機能、活動、参加、環境因子、個人因子で構成されています。生活機能上の問題は誰にでも起りうるものなので、特定の人々のためのものではなく、全ての人に関する分類です。個々の人の問題・課題・目標を、個別性・個性を尊重して構造的に把握することを助け、様々なサービス分野、また社会的参加促進や社会的支援などのシステムの構築にも用いられています。生活機能の3つのレベル(心身機能・活動・参加)のどれかに片寄らず、常に生活機能の全体像をみて、3つの相互作用を重視します。たとえ同じ病気や機能障害であっても、活動・参加の面では支援・介入のあり方も個別的・個性的なものとなり、この部分にアプローチすることで高い効果を上げ、本人の満足度も高くなります。また、在宅では環境因子、個人因子を配慮し、本人の『強み』は何かを見つけ、アプローチを行っていくことが大切になります。性質、性格、技能、才能、関心、願望、環境などさまざまな種類の中から強みを探索していきます。上手くいかないことが多い人生だからこそ、強みを強調した生活やリハビリテーションを積極的に推進したいと考えます。
リハビリテーションマネージメント
リハビリテーションマネージメントとは、高齢者の尊厳ある自己実現を目指すという観点に立ち、利用者の生活機能向上を実現するため、介護保険サービスを担う専門職やその家族等が協働して、継続的な「サービスの質の管理」を通じて、適切なリハビリテーションを提供し、利用者の改善や悪化の防止に資するものです。漫然とリハビリテーションの提供を行うことがないように、利用者毎に、解決すべき課題の把握を適切に行い、改善に係る目標を設定し、計画を作成した上で、必要な時期に必要な期間を定めてリハビリテーションの提供を行うことが重要と言われています。医師、理学療法士、作業療法士、 言語聴覚士、薬剤師、看護職員、介護職員、栄養士、介護支援専門員、その他の職種が協働してリハビリテーション行うことを指します。
これを実現するためにSPDCA(図2)サイクルを活用し、マネージメントを行っています。S:事前面談、事前情報・強みの確認、P:ケアプランに基づいて実施計画書の作成(説明及び同意)未来の予測、D:リハビリの実施、本人・家族・関係事業所への助言、C:心身機能・活動・参加・環境因子・個人因子の再評価、A:リハビリの実施、本人・家族・関係事業所への再助言、ケアプラン・計画書への反映。このサイクルを回し続けることで現状に合った目標を設定し、リハビリテーションを提供します。
事例紹介
慢性閉塞性肺疾患、脳出血にて入退院後の事例
要支援2 82歳男性 診断名:慢性閉塞性肺疾患、右橋出血、慢性心不全
生活歴:元会社員、特技は俳句、妻と2人暮らし。妻は認知症。愛妻家。
週2回長女訪問。週2回ヘルパー利用 週1回訪問看護利用
夜間はバイパップ使用(管理は自立)。買い物は生協の利用、長女、次女が担当。家事は夫婦で協力しながら実施。
本人主訴:息切れがあって長く動けない、左の足がひっかかる。
本人希望:この生活が続けられること。
家族希望:転ばずに歩いてもらいたい。夫婦での生活が継続できる。
令和○年6月に呼吸状態の悪化から入院し、入院直後に病院にて右橋出血を発症。極軽い左片麻痺が残存。呼吸状態の改善、リハビリ加療行い、8月に退院。退院後、訪問リハビリテーションをケアマネジャーから提案されましたが、疲労が溜まり、生活に支障が出るかもという本人の判断から先送りになっていました。自宅にて生活していましたが、身体的改善が思わしくなく、転倒も何度かあり、ケアマネージャーが訪問リハビリを提案。了解され、10月訪問リハビリテーション開始。
調査、評価を行い、呼吸状態を確認し、可能な動作の把握、労作時のリカバリー方法の獲得、転倒せずに自宅内で生活ができること、妻と共同しながら家事が継続できること、俳句作成を再開できることを目標設定し、アプローチを開始しました。
呼吸状態に合わせた運動処方、リカバリー方法の指導、動作確認を行いました。これにより心身機能の改善が見られ、縁側での動作や草取りという新たな動作獲得につながりました。生真面目な性格や自立心、妻を思う気持ちが強みとしてあり、心身機能、活動の向上に役立ち、過去の功績(俳句の受賞歴)から生活のハリを出すことも有効だったと考えます。
右大腿骨頚部骨折術後、膝痛にてADL低下した事例
要介護2 89歳女性 診断名:右大腿骨頚部骨折術後、変形性膝関節症
生活歴:主婦、一人暮らし(夫は他界)。
週2回三条市から長女夫婦が訪問。以前は一緒にスーパーに買い物に行っていた。週2回ヘルパー利用(入浴介助)。
本人主訴:膝の痛みでうまく歩けない。本人希望:膝の痛みを軽くしたい。
家族希望:転ばずに歩いてもらいたい。術前利用していたデイサービスの利用の再開。
令和○年3月に右膝痛の影響で週1回利用していたデイサービスを休むことにしました。
5月に自宅玄関で転倒し、右大腿骨頚部骨折受傷。手術施行。8月退院。退院後、デイサービスの再開と福祉用具の導入を計画。自宅退院後、左膝の痛みが強くなり、デイサービスの利用が再開できず、ヘルパーの導入となりました。自分なりにテレビで見た運動を試していましたが、軽減しませんでした。10月訪問リハビリテーション開始。
調査、評価を行い、痛みを軽減して自宅内を転倒せずに歩行できること、入浴が一人でできること、デイサービスの再開、内科、整形外科に受診に行くことを目標設定し、アプローチを開始しました。
転倒や手術及び自宅退院後の活動量の変化にて左膝痛が悪化し、ADL、運動量が低下していました。この症例は外反膝、偏平足傾向にあり、自分なりに行っていた運動を修正し、身体構造に合わせた運動処方を行いました。結果、徐々に疼痛改善見られ、徐々に活動の向上、参加につながりました。退院後の受診は退院後における一大イベントであり、この生活行為がきっかけとなり、デイサービスの再開につながりました。今後はスーパーに行きたいという新たな目標も創出されました。また、家族、ヘルパーへの協働にて入浴動作も自立しました。令和〇年3月の右膝痛発生時に訪問リハビリテーション導入に至れば骨折を防ぐことができたのではないかと悔やまれる一面もあります。身体機能の低下等で生活行為に支障を生じた際、訪問リハビリテーションの導入を選択肢としてご検討頂けると幸いです。
訪問リハビリテーションと通所リハビリテーション
訪問リハビリテーションと通所リハビリテーションは、それぞれ求められている機能があり、特徴が異なります。訪問リハビリテーションは生活に即したリハビリが可能で、本人のみならず家族の訴えも聞き取りやすく、その思いをリハビリに反映しやすい良点があります。また、集団での活動に消極的な方や入院直後等、外出に消極的な方への道標になれます。通所リハビリテーションは他者との交流など外的刺激が多いため精神的に好影響を与えやすく、在宅とは異なり、リハビリ以外での活動時間、離床時間が長いため、必然的に耐久性が向上するという良点があります。事業所内に他職種(リハビリ専門職、看護師、社会福祉士、介護福祉士等)が在籍しているため、利用者に対して、職種間連携しながら同時にケアにあたることができます。また、介護者に時間的余裕が生まれることも忘れてはなりません。
それぞれの良さがあり、必要時には2つの事業所を併用することもできます。例えば、通所リハビリのみでは、家屋内におけるADLの自立が困難である場合など、家屋状況の確認を含めた訪問リハビリの提供などがケアマネジメントの結果必要と判断された場合は併用が可能です。その際にはケアプラン上で通所リハビリテーションの目的と訪問リハビリテーションでの目的を分けて明確にしておく必要があります。
訪問リハビリテーションの専門性と協働
利用者の強みに対して、価値を共有し、可能性を示し、行動変容を応援することが大切と考えます。そのために起きていることを客観的に見て、原因や結果の精査に基づき、利用者に分かるように説明できることが専門性と考えます。未来を予測し、解決策を提案、利用者が選べるようにし、実行と経過に合わせ、次のアクションを考えることを心掛けています。そのためには、合意形成が必要です。医療関係者(医師、歯科、看護師、薬剤師、栄養士など)、介護保険サービス関係者との協力支援、リハビリテーションへのご理解を頂き、共に同じ方向性で支援できることが大切だと考えます。
参考文献
1)三上幸夫,他:介護保険リハビリテーションマネージメントの現実と課題~医療と介護連携を進めるために~.J.of Clinical Rehabilitation,33巻9号,2024.
2)上田敏:ICFの理解と活用.第2版,きょうされん,2005.
3)チャールズ・A・ラップ:ストレングスモデル.第3版,金剛出版,2014.
4)厚生労働省.リハビリテーションマネジメントの基本的考え方並びに加算に関する事務処理手順例及び様式例の提示について
https://www.mhlw.go.jp/content/001240286.pdf.(2024年3月26日)

図1 国際生活機能分類(ICF)

図2 SPDCAサイクル