順天堂大学医学部 消化器内科 教授
永原 章仁
ジェネリック医薬品(AG)の特徴
近年、多くの医薬品がジェネリック医薬品となり、その使用が推奨されている。ジェネリックの中で、オーソライズド・ジェネリック(AG)は、先発品メーカーの許諾を得て製造されるため、原薬、添加物、製法および製造工場などが先発品と同一であり、安定供給や急激な需要増にも対応しやすい。処方する医師にとっても、使い慣れた先発品と同じ感覚で処方することができる。AGであるエソメプラゾールカプセルは、PTPシートも先発品のデザインを踏襲しており、患者、薬剤師にとっても取り扱う際の視認性を上げる工夫を行っている。
PPIの臨床的有用性
酸分泌抑制薬は、消化器疾患の医療に革新をもたらし続けている。H2受容体拮抗薬の登場は、それまで外科切除が必要であった消化性潰瘍を、内科領域の疾患に変遷させた。プロトンポンプ阻害薬(PPI)の登場は、これまで難治とされてきた逆流性食道炎を治癒可能な疾患にした。
H.pylori 除菌治療では、わが国では、一次除菌、二次除菌の抗菌剤の組み合わせが指定されている。医師の裁量が制限されるようにもみえるが、じつは効率的な医療に貢献している。PPIの時代、10年間にわたるこの仕組みを検証した我々の報告では、98.4%の患者で除菌が成功しており、この仕組みが上手く働いていることを確認した1)。2015年当時、クラリスロマイシン耐性菌による一次除菌率の低下が問題となったが、このときに登場したP-CAB(ボノプラザン)は高い除菌率を示し、現在では標準的に用いられている。一方、二次除菌については、我々はPPIとP-CABの無作為比較試験を行ったが、両者に効果の差は認めなかった2)。
GERDの診断・治療
GERDは胃内容物の逆流により、症状あるいは粘膜傷害(逆流性食道炎)を来したものである。内視鏡でびらん=食道炎がある例は「逆流性食道炎」であり、内視鏡で所見を認めず、逆流症状のみの例は「非びらん性胃食道逆流症(NERD)」である。GERDのメカニズムは図1に示すように、逆流誘発因子と逆流防止機構の破綻である。H.pylori感染が高率であった数十年前は、H.pylori感染萎縮性胃炎による低酸状態のため逆流性食道炎は少なかった。しかし、近年は未感染例の増加により、ありふれた疾患となっている。
GERD治療の基本は言うまでもなく生活習慣の改善である。従来から言われていることではあるが、表に示す生活指導は、医療費もかからず、有害事象もなく推奨される3)。
逆流性食道炎の治療は、逆流そのものをなくすことが理想であるが、胃食道活約部を上手い具合にコントロールする薬剤はなく、かといって噴門形成術などの手術治療を第一選択とするのは過侵襲である。胃酸が逆流しないように蠕動促進薬を処方するのは病態に適った治療であるが、これらの薬剤の効果は極めて限定的である。胃酸と、胃酸により活性化された消化酵素であるペプシンの逆流により食道粘膜障害を来すので、現状ではPPIなどの強力な酸分泌抑制薬が標準治療となっている。
胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン20214)では、軽症食道炎の治療期間は、PPI 8週間、P-CAB 4週間であるが、ガイドライン委員会が行ったメタアナライシスで、その効果に差が無いと記載されている。重症例についてはP-CABが提案されている。
PPIによるGERDの維持療法と実地臨床の対応
GERDは再発しやすい疾患であり、維持療法が行われることが多い。しかし実地臨床では、「症状があるときだけ内服(頓服は保険適応外)」する患者も多い。そこで我々は、8週間の初期治療後に、症状の有無にかかわらずPPIを毎日内服する継続群と、有症状時に頓服する頓服群に無作為にわけ、6ヶ月間にわたって症状を調査した(図2)5)。結果は、逆流性食道炎では、継続群は概ね8割の患者で症状がコントロールされていたが、頓服群は、とくに前半の期間で症状が再発していた。6ヶ月後には頓服群でも症状はコントロールされたが、その時点で内視鏡を行うと、頓服群では過半数で食道炎が治癒していなかった。一方NERDでは、継続群と頓服群とに症状の差はみられなかった。これは、NERDは症状のみで規定される疾患であるので無症状では内服する必要が無いこと、メカニズムに酸以外も関与していてPPIの効果が限定的だからであろう。
長期にわたる維持療法中では、一過性に逆流症状を訴える例も多い。とくに食道裂孔ヘルニアを有する高齢者例では、逆流した胃酸がヘルニア囊に滞留し、食道蠕動低下によるクリアランス低下も相まって、症状が遷延する事がある。一過性の症状を訴えた際の患者指導のヒントとなるユニークな研究があるが、そのTipsを以下に記載する6)。
・水を飲むと1分で胃酸は中和されるが、その持続時間は3分である
・制酸剤は2分で胃酸を中和し、その持続時間は12分である
難治例でのPPIの内服タイミングのヒントであるが、食前の内服が最も効果が高い。内服したPPIは直接胃に作用するわけではなく、小腸で吸収され血流を介して、壁細胞のプロトンポンプをブロックする。タイムラグがあるのである。胃酸を分泌するプロトンポンプは食後に活性化するが、PPIを食前に内服することで、ちょうど食後にPPIが壁細胞に到達するので最も高い効果が期待される。
NSAID・抗血小板薬と消化管障害
NSAIDや低用量アスピリン(LDA)服用による消化管潰瘍や出血リスクの増加はよく知られている。消化性潰瘍診療ガイドライン20207)では、NSAID、LDAともにPPIないしはP-CABの併用が推奨されている。NSAIDとLDA併用例についてはNSAIDを消化管粘膜傷害のリスクの低いCOX-2阻害薬にするよう記載されている。著者がNSAIDと胃粘膜障害の関連を私見としてまとめると図3のようになる。上述したようにH.pylori陰性高齢者の増加により、胃粘膜萎縮のない胃酸分泌の保たれた高齢者が増加している。LDAは酸性の薬物であり、強酸条件で容易に細胞内に拡散し胃粘膜障害を来たしやすいことが知られている8)。しかし胃粘膜障害例でも自覚症状を伴わないことが多く、「症状が無いから大丈夫」とは言えないのである9)。さらにLDA内服例が消化管出血を来すと、生命予後に与える影響は甚大で死亡率は1割に及ぶ事が知られている10)。さらに抗血栓薬を2剤併用している例では胃粘膜障害が高度である11)。こうしたリスクをふまえ、消化器症状の有無、潰瘍既往の有無にかかわらずPPIの予防投与が推奨される。
PPI長期投与のリスクと有害事象
このようにPPIは長期投与される例が多い。PPIは上梓されてから30年以上が経過し、安全性に関する検討は十分に積み重ねられ、有害事象に関するエビデンスも蓄積している。メタアナリシスではPPIは、腎障害、感染症、骨折リスク、胃粘膜の変化(ポリープなど)、高ガストリン血症、胃がんなど、いくつかの有害事象との関連が示唆されているが、因果関係や臨床的意義についてはさらなる検討が必要である12)。
われわれ臨床医は、これらのリスクを十分に踏まえたうえで、適切な用量設定と治療期間を見極めながら、PPIを必要とする患者に対して最良の処方を行う責務がある。この領域は、まさに微妙な匙加減が求められる内科診療の醍醐味を体現しているともいえる。
このような講演の機会を賜りました新潟市医師会の先生方に、ここにあらためて深く御礼申し上げます。
令和7年10月17日(金)
新潟市医師会臨床懇話会にて特別講演
参考文献
1)Sasaki H, Nagahara A, et al. Ten-year trend of the cumulative Helicobacter pylori eradication rate for the “Japanese eradication strategy”. Digestion. 2013;88:272-278.
2)Hojo M, Nagahara A, et al. Randomized controlled study on the effects of triple therapy including vonoprazan or rabeprazole for the second-line treatment of Helicobacter pylori infection. Ther Adv Gastroenterol. 2020;13:1756284820966247.
3)Kinoshita Y, et al. The impact of lifestyle modification on the health-related quality of life of patients with reflux esophagitis receiving treatment with a proton pump inhibitor. Am J Gastroenterol. 2009;104:1106-1111.
4)日本消化器病学会 編.胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン 2021.東京:南江堂;2021.
5)Nagahara A et al. A randomized prospective study comparing the efficacy of on-demand therapy versus continuous therapy for 6 months for long-term maintenance with omeprazole 20 mg in patients with gastroesophageal reflux disease in Japan. Scand J Gastroenterol. 2014;49:409-417.
6)Karamanolis G et al. A glass of water immediately increases gastric pH in healthy subjects. Digestive Diseases and Sciences. 2008;53:3128-32.
7)日本消化器病学会 編.消化性潰瘍診療ガイドライン 2020.東京:南江堂;2020.
8)Venerito M, et al. Short-term/low-dose aspirin-induced duodenal erosions are not dependent on Helicobacter pylori infection, cyclooxygenase expression and prostaglandin E2 levels. Scand J Gastroenterol. 2008;43:801-809.
9)Shimada Y, Nagahara A, et al. Upper gastrointestinal mucosal injury and symptoms in elderly low-dose aspirin users. Gastroenterol Res Pract. 2015:2015:252963. doi: 10.1155/2015/252963.
10)Shiraishi K, et al. Clinical characteristics and outcomes of low-dose aspirin-induced bleeding gastroduodenal ulcers treated with endoscopic hemostasis. Gastroenterol Endosc. 2013;55:1969-1979.
11)Shimada Y, Nagahara A, et al. Risk factors for upper gastrointestinal bleeding in patients receiving antithrombotic therapy: a multicenter case–control study. Diagnostics (Basel). 2022;12:2364.
12)Salvo EM, et al. Proton pump inhibitors and the risk of adverse events: a systematic review and network meta-analysis for comparative safety. Aliment Pharmacol Ther. 2021;54:129-143.

図1 GERDのメカニズム

表 日本人の逆流性食道炎を対象とした生活習慣指導のQOLへの効果

図2 GERDに対する維持療法の有効性

図3 NSAIDによる胃粘膜障害リスクの強弱
(令和8年4月号)