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新潟市医師会報より

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関節リウマチ(RA)薬物療法のこれから ~高齢RA患者でのメトトレキサート過剰投与を予防する試みを中心に

新潟県立新発田病院リウマチセンター センター長
伊藤 聡

はじめに

関節リウマチ(Rheumatoid arthritis:RA)の治療は、メトトレキサート(MTX)をアンカードラッグ(治療の中心となる薬剤)とし、効果不十分な場合に生物学的製剤(biological disease-modifying antirheumatic drugs:bDMARDs)を使用するという方針が確立した。我が国のMTX承認用量は長らく8mg/週までで、他の従来型抗リウマチ薬(conventional synthetic DMARDs:csDMARDs)が無効な時にのみ使用が可能であった。2011年に、予後不良因子があれば第一選択薬として、また16mg/週までの使用が可能になった。現在DMARDsは、csDMARDs、bDMARDs、targeted synthetic DMARDs (tsDMARDs:ヤヌスキナーゼ阻害薬:JAK阻害薬)に分類されている1)。MTXは安価で有効な薬剤であるが、患者が高齢化し、腎機能が低下すると汎血球減少やそれに伴う重篤な感染症を発症することがあるので注意が必要である。

1.関節リウマチ診療ガイドライン

2020年に新しい診療ガイドラインが作成され2)、2024年に一部改訂された3)。

MTXが使用できる患者ではまずMTXから開始する。効果不十分な場合はbDMARDsやtsDMARDsの使用を行う。グルココルチコイドは活動性の強い時に使用してよいが、長期の使用は避ける、というものである2)。2024年には消化器症状の少ないMTXの皮下注製剤が推奨された3)。

2.肝炎などのチェックを

MTX開始時は、結核、B型、C型肝炎ウイルスのスクリーニングが必須である。B型肝炎では、HBs抗原陰性でHBs抗体またはHBc抗体陽性の、既往感染患者からのde novo肝炎に留意し、既感染の場合はHBV-DNAを測定する4,5)。陽性化した場合は、核酸アナログの投与を開始し、肝臓専門医にコンサルトを行う4,5)。

3.MTX増量の効果

私達はMTXの従来の最大承認量であった8mg/週から10.5mg/週に増量することにより、高率に臨床的寛解を得られることを報告した6)。ご開業の先生方は過剰にMTXを怖がられる傾向があるように思うが、高齢でなく合併症のない患者ではMTXの増量が有効でしかも安価である。ただし、日本人では12mg/週くらいまでの増量が安全で有効と考えられている7)。

4.MTXによる死亡例

一方、MTXによる死亡例も多数報告されている。副作用の状況が確認できる先発品、後発品1銘柄の合計でも因果関係の否定できない死亡例が946例報告されている8,9)。

先発品の死亡例の検討8)では、60歳代以上の占める割合が多く、27.5%はわずか4mg/週の使用量であり、2mg/週の使用患者も5.9%を占めている。副作用発現までの期間は、使用直後からの出現がある一方、25.6%は投与5年を過ぎてからである。高齢化により腎機能が低下した場合は、低用量でも汎血球減少などの副作用が突然出現する。

5.患者が高齢化した場合はMTXの過剰投与に注意を

患者が高齢化して漫然と高用量のMTXを継続するのは危険である。RA患者は筋肉量が少ないため、血清クレアチニン(Cr)やestimated glomerular filtration rate(eGFR)が正確な腎機能を表さないことに注意をするべきである10)。リウマチセンターの薬剤部は高齢者で漫然とMTXの高用量を継続していた患者で重篤な副作用が認められたことから、75歳以上で8mg/週以上を使用している患者の主治医に注意喚起をするシステム(通称憲兵隊システム、あるいはミリタリーポリスシステム)を構築した11)。注意喚起によりMTX投与量は有意に減少したが、RAの活動性の悪化はなかった11)。

しかし、院内での問題は解決したが、8年前に通院困難のため、ご開業の先生にMTX 8mg/週で紹介した80代女性が、その後MTX 10mg/週に増量され、汎血球減少をきたし緊急入院した。MTX中止、ロイコボリンレスキューで救命できたが、リウマチ専門施設からご開業の先生方にかなりの数の患者のMTX処方依頼が行われていると推測される。患者が高齢化した場合、MTXの使用量を紹介元に問い合わせる、あるいはMTXを減量し、再燃した場合に次の治療を紹介元に相談する、ということを新潟市医師会の先生方にお願いしたい。

6.MTX使用時は葉酸の併用を

葉酸拮抗薬であるMTXに葉酸を使用するのは、特に低用量のMTXを使用している場合はMTXの効果を減弱させる可能性があるが、安全性重視ということで、日本リウマチ学会は、MTX使用時には全例で葉酸を使用するようにという手引きを発行した12)。また、通常葉酸はMTX内服後24時間から48時間に5mgを内服とされているが、私達は葉酸の連日1mgの内服※が効果を落とすことなく副作用軽減に有効であることを報告した13)。

7.MTXは特殊な内服方法のため注意を

MTXは一週間のうちに決められた曜日のみ内服するという薬剤のため、認知症を合併した高齢者では要注意である。それまでMTXを正しく内服していた高齢患者が突然連日内服を開始して汎血球減少に14)ということがあった。この患者は医療機関で4週に1回注射できるbDMARDsのアバタセプトの点滴静注に変更した。著者の場合、高齢者が「MTXだけ足りません」といって処方を依頼してきた場合、連日内服を疑いMTXを変更することにしている。また、著者が日曜日日当直をしていたところ薬局から電話があり、「家族が80代の男性にMTXを連日内服させました」とのことであった。患者は認知症があり、妻が服薬管理をしていたが、妻が突然亡くなってしまい、代わりにMTXの内服方法を知らない長男が与薬したという経過であった。翌日受診したが大きな副作用はなく、医療機関で4週に1回皮下注射できるbDMARDsのゴリムマブに変更した。

80代男性患者(Cr 1.23mg/dL、eGFR 43.0mL/min)は、自分では週に数日しかのまない薬を管理できないと申し出てきた。4週に1回のbDMARDsは高額で無理であり、自己注射はできないということで、近隣のクリニックにMTX皮下注製剤を投与していただくことを依頼し、7.5mg/2週※をリウマチセンターで開始した。数回投与して問題がなかったため、クリニックとの連携で投与を継続している。経過は良好で、プレドニゾロンは2.5mg/日から1.5mg/日に減量できた。MTX皮下注製剤はドイツの用量をそのまま国内に適応したため、高齢で腎機能障害のあるこの患者では隔週投与に減量して使用した。比較的通院距離の短いご開業の先生の患者さんでは、医療関係者が確実に注射をできるMTXの皮下注製剤は有用であると考えられる。

おわりに

RAの治療において、アンカードラッグであるMTXを使いこなすのは非常に重要である。高齢でなく合併症のない患者では、スクリーニングの後に十分量使用することが重要である。一方、高齢患者、患者が高齢化した場合は漫然とMTXを継続せず、減量、他剤へのスイッチを考慮すべきである。ご開業の先生方がリウマチ専門医からMTX投与の依頼を受けた場合、数年たって患者が高齢化した場合は、MTXを減量したり、紹介元にもう一度治療方針の確認をしたりすることが重要であると考えられる。

※承認外の用法・用量が含まれています。詳細は添付文書をご確認ください。

引用文献

1)Smolen JS, van der Heijde D, Machold KP et al.: Proposal for a new nomenclature of disease-modifying antirheumatic drugs. Ann Rheum Dis, 73: 3-5, 2014.

2)関節リウマチ診療ガイドライン2020. 一般社団法人日本リウマチ学会編集, 診断と治療社, 東京, 2021.

3)関節リウマチ診療ガイドライン2024改訂. 若年性特発性関節炎 少関節炎型・多関節炎型診療ガイドラインを含む 一般社団法人日本リウマチ学会編集, 診断と治療社, 東京, 2024.

4)伊藤 聡: Bio治療における肝炎ケアについて. 臨床リウマチ, 28: 311-316, 2016.

5)Ito S: Updates on management strategies of hepatitis B virus reactivation in patients with resolved hepatitis virus B infection undergoing immunosuppressive therapy in rheumatology and the current situation in Niigata Rheumatic Center. Mod Rheumatol, 31: 775-782, 2021.

6)Ito S, Unno M, Kobayashi D, et al.: Dose escalation of methotrexate in rheumatoid arthritis patients. J New Rem & Clin, 63: 1302-1315, 2014.

7)Atsumi T, Yamamoto K, Takeuchi T et al.: The first double-blind, randomised, parallel-group certolizumab pegol studyinmethotrexate-naive early rheumatoid arthritis patients with poor prognostic factors, C-OPERA, shows inhibition of radiographicprogression. Ann Rheum Dis, 75: 75-83, 2016.

8)ファイザー株式会社: リウマトレックス®適正使用情報Vol.29, 2023.

9)あゆみ製薬株式会社: メトトレキサート錠2mg「あゆみ」副作用のまとめ第13版, 2025.

10)中野正明: RAの腎機能評価におけるCystatin C(CyC)リウマチ科, 28: 588-595, 2002.

11)山田宣和, 田川尚行, 伊藤 聡, 他: 高齢者関節リウマチ患者でのメトトレキサート高用量使用に対する注意喚起の取り組み. 臨床リウマチ, 37: 84-92, 2025.

12)伊藤 聡: 「関節リウマチにおけるメトトレキサート(MTX)使用の診療の手引き」における葉酸の併用について. 新薬と臨牀, 73: 481-484, 2024.

13)中垣孝則, 伊藤遼介, 伊藤 聡, 他: メトトレキサートを使用中の関節リウマチ患者における葉酸少量連日投与の有用性について. 臨床リウマチ, 37: 174-183, 2025.

14)伊藤 聡: 特集 高齢発症関節リウマチ(EORA)の病態と治療, 治療薬に対するアドヒアランス, リウマチ科, 64: 290-296, 2020.

この論文は、2025年7月25日に開催された、第286回新潟市医師会臨床懇話会(あゆみ製薬共催)での発表内容を基に執筆した。

(令和8年6月号)

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