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新潟市医師会報より

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新型コロナウイルスワクチンの小児における発症・後遺症予防効果の検討

新潟大学大学院医歯保健学研究科 小児科学分野
相澤 悠太

はじめに

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチンは、開発時は臨床試験によってその有効性と安全性が評価されるが、臨床試験以外の実際の社会でワクチンが使用された際には、リアルワールドにおけるワクチンの有効性を評価する必要がある。海外からは小児を含めCOVID-19ワクチンの有効性のデータが出てきているが、日本国内のデータは、特に小児ではほとんど無く、4歳以下については国内のデータはまだ無い。具体的には、COVID-19オミクロンに対するメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン発症予防効果の有効性について、海外からの報告では、オミクロンBA.4/BA.5の流行時期の検討で、5−11歳の子どもではワクチン2回接種全体で7%だが、最終接種から3か月以内では45%、3−5か月では5%、6−8か月では2%と、時間経過で効果が減衰した。ワクチン3回接種全体では56%であり、最終接種から3か月以内では57%、3−5か月では48%であった1)。生後6か月−4歳の子どもでは、救急外来受診に対して43%の予防効果が報告されている2)。一方で、日本の報告は5−11歳のひとつの報告のみである。BA.2とBA.5の流行時期の521人を対象に検討され、ワクチン2回接種全体で50%、最終接種から3か月以内では72%、3か月以降では24%の発症予防効果であった3)。成人と比べ小児のワクチン接種率は大幅に低く、本研究を企画した際の2022年11月26日時点での首相官邸ウェブサイトのデータでは、5−11歳のワクチン2回接種率は全国で20%弱、新潟県でも30%弱で、成人の80−90%台と比べて大きく下回っていた。小児のワクチン接種率向上のためには、日本人におけるワクチンの有効性を評価し情報提供することが重要な手段となることが期待される。

また、COVID-19後の遷延する症状を有する人が一定の割合で発生することも知られ、long COVIDと称されることもある。小児の有病率は10−20%といわれているが4)、小児のデータは成人と比べると少ない。日本人の小児の報告は、COVID-19オリジナル株からデルタ株の時期に、発症28日後時点で持続している症状を有する割合は3.2%5)、アルファ株からオミクロン株の時期に発症3か月後時点で2か月以上持続している症状を有する割合は6.3%(非感染コントロール群 2.2%)6)との報告があるが、国内データはまだ少ない。

目的

1.日本小児におけるCOVID-19ワクチンのリアルワールドの有効性を検証する。

2.日本小児COVID-19患者の遷延する症状の頻度と内容を把握する。

方法

1.新潟県内9か所の小児科クリニックで2023年4月から2024年4月の期間に前方視的にtest-negative case-control study(診断陰性例コントロール試験)を行った。対象は15歳以下の上気道症状を伴う患者、かつ新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)抗原検査もしくはPCR検査を実施した患者とした。症例は検査陽性例、対照は検査陰性例と定義した。test-negative case-control studyとは、インフルエンザ、ロタウイルス、COVID-19のワクチン有効性評価でルーチンで使用される観察研究デザインである7)。

受診時に二次元コードを用いたウェブ調査を保護者に依頼した。基礎疾患は日本小児科学会の提唱リストを使用した。具体的には、慢性呼吸器疾患/心疾患/腎疾患、神経疾患・神経筋疾患、血液疾患、糖尿病・代謝性疾患、悪性腫瘍、関節リウマチ・膠原病、内分泌疾患、消化器疾患・肝疾患、先天性免疫不全症候群など免疫抑制状態、その他(高度肥満など)に分けられた。

ワクチン接種回数の定義は最終接種から2週間以上経過した場合の接種回数とした。オッズ比は性別、基礎疾患の有無、COVID-19罹患歴、COVID-19流行期で調整した多変量解析で算出した。ワクチン有効性(%)は(1−調整オッズ比)×100で計算し、95%信頼区間(95%CI)を用いて表記した。

2.2023年4月から10月の期間に1と同じクリニックを受診した同じ対象の患者について、受診時に保護者へ研究を紹介し参加を依頼し同意を得た場合、COVID-19ワクチン接種歴や電子メールアドレスなどの情報を収集した。SARS-CoV-2検査結果に関係なく、受診3か月後に保護者へオンラインアンケート調査を電子メールで実施し、3か月後の時点で遷延する症状がある場合、さらに3か月後(受診6か月後)に遷延する症状の有無について追加のオンラインアンケート調査を実施した。

遷延する症状の定義は2023年2月16日に世界保健機関が提唱したものを使用した。具体的には、(1)SARS-CoV-2感染が確定、あるいは確からしい、(2)罹患3か月以内に始まり、少なくとも2か月以上持続、(3)日常生活に影響が出る(食生活の変化、身体活動、振る舞い、学業成績、社会機能:友人や家族との付き合い、発達指標)、(4)罹患後いったん回復してから出現、あるいは罹患後遷延、(5)変動や再発がある、(6)精査で別の診断名がついても遷延する症状の否定にはならない、である8)。

結果

2023年7月から9月にオミクロンのうちXBBとEG.5による流行、2024年1月から3月にオミクロンのうちBA.2.86とJN.1による流行があった。

1.COVID-19 mRNAワクチンの発症予防効果について

2023年4月から2024年4月の期間に29,955件のSARS-CoV-2検査が行われ、データ欠損症例を除外し、生後6か月から4歳では3,455人(11.5%)、5歳から11歳は3,468人(11.6%)が解析対象となった。

生後6か月から4歳では症例516人(14.9%)、対照2,939人(85.1%)であり、基礎疾患は191人(5.5%)のみで、慢性呼吸器疾患が最多であった(161人、4.7%)。生後6か月から4歳ではmRNAワクチンのprimary seriesは3回接種であり、3回接種者は236人(6.8%)、COVID-19罹患歴があるのは1,439人(43.2%)であった。

多変量解析の結果、COVID-19ワクチンの発症予防効果はワクチン最終接種から3か月以内で73%(95% CI,12-92%)、3か月から6か月で64%(95% CI,19-84%)、6か月以降で46%(95% CI,−24%-76%)であった(図1)。

5歳から11歳では症例723人(20.8%)、対照2,745人(79.2%)であり、基礎疾患は328人(9.5%)で、慢性呼吸器疾患が最多であった(297人、8.6%)。5歳から11歳ではmRNAワクチンのprimary seriesは2回接種であり、2回接種者は952人(27.5%)、COVID-19罹患歴があるのは2,068人(59.6%)であった。

多変量解析の結果、COVID-19ワクチンの発症予防効果はワクチン最終接種から3か月以内で59%(95% CI,20-79%)、3か月から6か月で57%(95% CI,24-76%)、6か月以降で−13%(95% CI,−40%-9%)であった(図2)。

入院はCOVID-19ワクチン接種歴のない生来健康な生後11か月児の熱せん妄1例のみだったため、COVID-19ワクチンの入院予防効果は評価できなかった。

2.COVID-19後の遷延する症状について

2023年4月から10月の期間に14,841件のSARS-CoV-2検査が行われ、後日のアンケート回答に同意を得たのは2,274人(15.3%)、実際に回答したのは520人(3.5%)、データ欠損や年齢逸脱を除き507人(3.4%)から最終回答を得た。

最終回答者は年齢中央値4歳(四分位範囲2-8歳)、男児259人(51.1%)、COVID-19ワクチン3回以上接種者137人(27.0%)、SARS-CoV-2検査陽性91人(17.9%)であった。

受診3か月後の時点で遷延する症状を有する患者の割合は全体では4.9%(25人)であった。SARS-CoV-2陽性91人の中では8人(8.8%)に遷延する症状を認めた。COVID-19罹患の有無と遷延する症状を有する割合に有意差は無かった(p=0.10)。

受診3か月後の時点で遷延する症状を有する患者のうちSARS-CoV-2陽性は8人で、年齢中央値3歳(四分位範囲2-5.3歳)、男児7人(87.5%)、COVID-19ワクチン3回以上接種者は4人(50%)だった。症状は咳6人、鼻汁2人、眠気1人、集中力/思考力/記憶力の低下1人だった。一方で、SARS-CoV-2検査陰性17人(インフルエンザA5人,RSウイルス2人を含む)でも遷延する症状を認め、咳6人、嗅覚障害4人、不眠3人が多い症状だった。

受診6か月後時点の遷延する症状については、10人(40%)が回答し、4人(40%)でまだ遷延する症状があった。SARS-CoV-2陽性では3人(3.3%)で、咳、咳と鼻汁、眠気の症状だった。SARS-CoV-2陰性は1人(0.2%)で嗅覚障害の症状が続いていた。

考察

生後6か月から4歳では、3回以上ワクチン接種した患者では最終接種から3か月以上経過しても最大で6か月の期間でCOVID-19発症予防効果が認められた。これはphase 2-3臨床試験の結果と同様である9)。5歳から11歳でもワクチン2回接種以上の患者では最終接種から6か月以内で発症予防効果が認められ、既報と同等、もしくはそれ以上のワクチン有効性を新潟の子どもにおいて確認できた。研究開始後3か月で流行が起こったため、最終接種から3か月以内のワクチン有効性の評価が不十分となった。また、COVID-19罹患歴の詳細(感染した変異株の種類や感染から本研究参加までの期間)が不明であることが本研究の限界として挙げられる。

遷延する症状については、本研究での有病率はSARS-CoV-2陽性のうち8.8%であり、既報から推測される10−20%の下限に近かった。4広島県の2022年7月までの期間に罹患した1030人の小児の調査では、遷延する症状全体の割合は罹患後3か月で10.8%、5か月で8.5%、日常生活に影響する遷延する症状に限定すると罹患後3か月で5.4%、5か月で4.2%であり、本研究の罹患後3か月で8.8%、6か月で3.3%に近い数値であった10)。本研究の長所として、前方視的である点、同時期にSARS-CoV-2検査陰性例の遷延する症状を把握、比較できた点が挙げられる。本研究の限界としては、遷延する症状を有する患者数が限られているためCOVID-19ワクチンによる遷延する症状の予防効果が評価できなかったこと、罹患後3か月と6か月時点での点での評価であり、その間の症状の変化が分からないことが挙げられる。

結論

1.日本小児において5歳から11歳と同様に生後6か月から4歳でも最終接種から6か月以内はCOVID-19ワクチンの発症予防効果があることを明らかにした。今後のワクチン政策への活用が望まれる。

2.日本小児のオミクロン株罹患者の遷延する症状とその割合を明らかにした。遷延する症状はSARS-CoV-2罹患だけにみられるものではなく、今後のフォローアップが必要である。

謝辞

本調査にご協力いただきました、ささがわ小児科クリニック 笹川富士雄先生、おくがわ小児クリニック 奥川敬祥先生、さとう小児科医院 佐藤雅久先生、おおつかこどもクリニック 大塚岳人先生、坂内小児科医院 坂内優子先生、いがらし小児科アレルギークリニック 五十嵐隆夫先生、生協こどもクリニック 井埜晴義先生、しんこどもクリニック 申将守先生、太田こどもとアレルギークリニック 太田匡哉先生、新潟県保健環境科学研究所ウイルス科 昆美也子先生、新潟大学大学院医歯保健学研究科 十日町いきいきエイジング講座 特任教授 菖蒲川由郷特任教授、新潟大学大学院医歯保健学研究科小児科学分野 太刀川潤先生、幾瀬樹先生、齋藤昭彦教授に深謝申し上げます。

本研究は新潟市医師会地域医療研究助成(GC03920233)の支援を受けた。

文献

1)Khan F. L. et al.: Estimated BNT162b2 Vaccine Effectiveness Against Infection With Delta and Omicron Variants Among US Children 5 to 11 Years of Age. JAMA Netw Open, 5: e2246915, 2022.

2)Link-Gelles R. et al.: Effectiveness of Monovalent and Bivalent mRNA Vaccines in Preventing COVID-19-Associated Emergency Department and Urgent Care Encounters Among Children Aged 6 Months-5 Years – VISION Network, United States, July 2022-June 2023. MMWR Morb Mortal Wkly Rep, 72: 886-892, 2023.

3)Hara M, Ohta Y, Fusazaki N and Hirota Y: Effectiveness of BNT162b2 Vaccine Against Symptomatic SARS-CoV-2 Infection in Children Aged 5-11 Years in Japan During Omicron Variant Predominate Periods. J Epidemiol, 34: 205-210, 2024.

4)Rao S et al. : Postacute Sequelae of SARS-CoV-2 in Children. Pediatrics, 153: e2023062570, 2024.

5)Katsuta T et al.: Acute and Postacute Clinical Characteristics of Coronavirus Disease 2019 in Children in Japan. Pediatr Infect Dis J, 42: 240-246, 2023.

6)Hosozawa M et al. : Prevalence and risk factors of post-coronavirus disease 2019 condition among children and adolescents in Japan: A matched case-control study in the general population. Int J Infect Dis, 143: 107008, 2024.

7)Dean N and Amin A. B: Test-Negative Study Designs for Evaluating Vaccine Effectiveness. JAMA, 332: 163-164, 2024.

8)World Health Organization. A clinical case definition for post COVID-19 condition in children and adolescents by expert consensus, 16 February 2023, <https://www.who.int/publications/i/item/WHO-2019-nCoV-Post-COVID-19-condition-CA-Clinical-case-definition-2023-1>(accessced Sep 23, 2025).

9)Muñoz F. M et al.: Evaluation of BNT162b2 Covid-19 Vaccine in Children Younger than 5 Years of Age. N Engl J Med, 388: 621-634, 2023.

10)Sugiyama A et al.: Natural course of post-COVID symptoms in adults and children. Sci Rep, 14: 3884, 2024.

図1 6か月から4歳のCOVID-19ワクチン発症予防効果 VE,ワクチン有効性;CI,信頼区間

 

図2 5歳から11歳のCOVID-19ワクチン発症予防効果 VE,ワクチン有効性;CI,信頼区間

(令和8年8月号)

  • < 新潟市における病床機能、役割分担の解明と医療提供体制の検討
  • 新潟市民病院におけるハイブリッド手術室の完成と大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)の導入 >
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