高橋 美徳
やすらぎ堤を散策するのは気持ちが良い。信濃川左岸の整備が概ね終わり、右岸も整備がゆきとどきつつある。昭和大橋から信濃川右岸のやすらぎ堤に降りられる階段歩道が作られて、上流側は千歳大橋手前まで、下流側は朱鷺メッセまで自動車と同じ道を走らずに自転車で行けるようになった。
県庁方面に向かうとユニゾンプラザ手前に工業用水用の浄水場が望め、取水汚泥が乾燥されている様子が見られる。風向きによっては汚泥の匂いが鼻をつく時もあるが、『池の水を全部抜く』というバラエティ番組を思い出した。人気番組で2018年4月からは月1回ペースで放送されるそうだ。手入れをせずに荒れてしまった池の水を抜いて「かいぼり」を行なって、生物を確保し、干上がらせてヘドロの窒素分を抜き綺麗な池と環境を取り戻すというものだ。私は生物好きなので様々な生き物が次々に見つかるのが楽しみだが、大抵外来種と呼ばれる生物が在来種より多く見つかる。
外来種の多くは人間の手によって、その環境に運び込まれてきた。ウシガエルは食用として、アメリカザリガニはその餌として導入されたが、今や日本の自然と一体化しているといって良いだろう。しかしトノサマガエルやアカガエルといった在来種の姿はほとんど見られなくなってしまった。中国原産のソウギョは増え過ぎる水草を食べてもらう為に放流されたが、今では水草を食べてしまう厄介な外来種として駆除の対象とされている。私達は何を守り、何を次世代に引き継いでいくべきなのだろうか。人間が地球に現れてから、それまでの100から1000倍の速さで生物が絶滅しているといわれている。
在来環境に合わないと駆除対象になるというありさまを、移民問題に重ねてしまう。政策と称して他の環境から移住をすすめ、結果軋轢や衝突を生じさせ、憎しみを生み出してしまう。人口減少の進む日本に対し、移民政策しかないと訴える政治家がいるが、果たして正しい考えだろうか?
映画『ジュラシックパーク』の中で、琥珀に閉じ込められた蚊から取り出した血液のDNAから恐竜を作り出す発見を自慢するハモンド氏に対して、数学者マルコム博士は「発見のどこが素晴らしいんだ?発見なんて、暴力的で、深い傷が残る。あんたが、発見と呼んでいるものは、私に言わせれば自然界へのレイプだよ」と話す。人が浅い考えで生物や環境をコントロールできるなどと思い上がってはいけないだろう。
(平成30年5月号)