小林 晋一
先日の全豪オープンテニストーナメント女子の大坂なおみ選手の優勝は素晴らしく、過去数十年の日本選手の実績を知るものにとっては奇跡としかいいようがない。この大坂選手の決勝戦は、深夜リアルタイムのテレビでみていた。昨年に比べ、フットワークが向上し、サービスも強力となり確実性も増し、さらに風貌に落ち着きが漂い精神面での成長もうかがえた。試合は3セットまでもつれ、大接戦となったが、ドキドキしながらもなんとなく安心してみていられた。
また、男子の錦織選手のベスト4進出も大きな称賛に値する。そのほかスキージャンプや複合、スケート、卓球、バドミントン、水泳、サッカー、野球などスポーツのさまざまな分野で、日本選手の世界的レベルの活躍はわれわれに大きな希望と勇気を与えてくれる。
このようにいろいろなスポーツでの選手の活躍は、選手個々の才能や努力もさることながら、技術、精神両面での専門トレーナーをはじめ栄養管理やそのほか大勢のスタッフによるチームとしての総合力に負うものといわれている。そのトレーニング方法の改良や進歩を支えているのがデータの詳細な抽出と解析と方法の具現化であり、それを可能にするのがITの進歩である。
IT技術の進歩はめざましく、限りない。その進歩の行きつく先は私のようなガラ系世代にとっては計り知れない。いみじくも、本誌1月号の「あとがき」で浅井先生が書いておられるように、その未来は、人間にとって決して明るいものではなさそうである。IT技術の進歩により生活が便利になるとしても必ずしもそれが幸福につながるとは限らない。世界レベルの競争では科学技術の限りない進歩を目指すのは必然のことであろう。しかし、ひとの幸福という観点からは、進歩もほどほどがよい。手おくれのはかない望みであるが、スポーツの分野で体力的に劣る日本人が世界レベルを維持できるに足るところくらいでとどめておいてもらいたいものである。
(平成31年2月号)