細野 浩之
建築中の新しいナショナルスタジアムに行って来ました。ちょっと前までは平地だったのに巨大なスタジアムが建ってきました。骨格と足場の鉄骨に覆われただけでしたがまるでローマのコロッセオのようでした。隈研吾がデザインしたこの「杜のスタジアム」。木と植栽を多用して神宮外苑の森や緑に溶け込むようにデザインされています。屋根の骨組みの木はまるで番傘の一部を見上げているようでした。壁にはまだ木は張っていませんがこれからどんどんできてくるのでしょう。
しかしこの垂直にそびえ立ったスタジアムの外壁を見て、もしここにザハ・ハディドのあの建築が存在していたらどんなだったんだろうと思ってしまいました。その原案は衝撃でした。未来から来た宇宙船が降り立ったようでした。東京に舞い降りたオリンピック。そして未来にはばたく東京。そんな東京のシンボルとなっていたかもと思ってしまったのでした。日本には存在しないザハ・ハディドの建築をこの目で見て、感じてみたいと思っていましたが、ちょうどローマ時代のスタジアムの遺跡、コロッセオが残るローマでザハ・ハディドの建築に見て触れて感じる機会がありました。流れるような曲線で構成される複雑な内部空間ははまるでSF映画に出てくる宇宙船内部のよう。だけど心地よさを感じる空間でした。空に向けてそびえたつ古代のコロッセオを見た後で、そのザハ・ハディドの建築は、まだまだ人類は進歩するんだと訴えかけるような、クラシックとは一線を画す、不思議だけど未来に勇気を与えてくれるような建築でした。神宮の森に降り立つはずだった、未来の夢、巨大な宇宙船のようなスタジアムを見たかったと思ったのでした。
周囲の神宮の森に溶け込み自然との調和を感じさせる「杜のスタジアム」が宇宙船の代わりに建築中です。今は単なる壁でしたが、どのように変化していくのでしょうか。宇宙船よりずっと心地よい空間ができるかもしれません。そして、その空間でオリンピック観戦ができればうれしいと思います。開会式のチケットは抽選でよい席は30万円だそうです。さあ、TOKYO 2020 IDに登録しましょう。
(平成31年3月号)