八木澤久美子
いつも春になると思い出します。
それは平成6年4月、新潟市で内科学会総会が開催された時のことです。
この時の会頭は当時第一内科教授でいらした柴田昭先生でした。1年間をかけて、大学内の4内科の大勢の先生方が一丸となり準備を重ね続け、ついに4月14日開幕、会期中は大変よい天候に恵まれ、新潟市内の桜がまさに満開の見ごろとなり、それはそれは美しい学会となりました。「日本全国から集まられた先生方に、何とも美しい満開の桜で、よい学会でした、とお褒めの言葉を頂戴した」と、のちに柴田先生が語っておられました。
もう一つの思い出は、平成13年3月のこと、B型肝炎を発症し自宅療養していた私は暇を持て余し、読書でもしようと思っていましたが、目がかすみ、像もゆがみ細かいものが見えにくくなっていました。そんな時でも、庭の木々草花は見ることができました。植えたばかりのやせっぽちの桜の木があり、折れそうな細い枝に一生懸命に花を咲かせようとしていました。療養中だった私はその姿に感動し励まされたのでした。
さて、今年も桜の季節がやってきます。
インフルエンザが流行った年も、大雪が降った年も、少雪の年も、大きな地震があった年も、大きな台風があった年も、何もなかった普通の年も、なにごともなかったかのように桜はつぼみを膨らませ、そして花を咲かせます。つらかった冬の時に決別し、私たちに勇気を与えてくれるようです。このような事象を私は「自然のつじつま合わせ」とか「春のリセット」などの言葉を使って表現して楽しみます。「なんだかんだあったって春はくるでしょ。桜は咲くでしょ」天の神様(自然)が私たちに言っているようです。
新型コロナウィルス感染症、マスク生活、緊急事態宣言、医療用品品薄、ソーシャルディスタンス、3密、PCR検査、ワクチン接種、はじめてのことがたくさん起こりました。こんな時こそお花見でもして笑顔でのりきりましょう(あくまでも密にならないように)。皆様のお気に入りのお花見スポットはありますか。私は信濃川川沿いのやすらぎ堤です。この原稿を書き終えたら早速計画立てて行く予定です、お花見に。
(令和3年4月号)