中村 和利
新潟市医師会は、2012年度から若手の医師、研究者、医療・福祉従事者などを広く対象として、優れた地域医療研究への助成事業を行っています。この事業の創設に関しては、理事(当時)の鷲山和雄先生抜きには語れません。私が環境予防医学分野に着任したばかりの年に、鷲山先生から本事業についてお話をいただき、並々ならぬ熱意を感じたことを鮮明に記憶しています。私は、この事業が10年続いておりますのは鷲山先生のご尽力の賜物と思っています。
地域医療研究助成の目的は、新潟市医師会の目指すものと同じで、「新潟市における地域医療・保健・福祉の充実および向上」です。新潟市における今日的課題は何かを考え、それを解決する学術的研究が最も望まれます。その意味で、研究のプロが申請する国の科学研究費補助金とはやや性質が異なります。科学研究費補助金獲得には過去の実績が重要ですが、地域医療研究助成では、研究目的が上記に合致するのかと、目的を達成するための方法が適切であるのかが特に重要です。優れたアイデアを持っているものの過去の実績が不十分な人は、実績のある人とチームを組んで応募するとよいでしょう。
事業初年度には18件の申請があり以後毎年10件程度の応募がありましたが、2020年度は4件と少なく心配されました。しかしながら先日行われた2021年度の審査では、応募数は15件と大きく伸びました。新型コロナ感染症のため研究者が時間を持て余したため応募が増えた、との意見もありますが、そのようなことではないでしょう。本助成事業を関係機関にこれまでよりきめ細かに案内したことが主な理由と思います。2021年度の採択課題は、新潟市における「COVID-19の疫学研究」、「新救急搬送システム創出」、「災害支援基盤強化」、「要支援高齢者の重症化予防」といったものでした。2021年度は応募が多かったためか採択課題は充実しています。
よい応募内容ですが惜しくも採択されなかった課題には、将来よりよい応募となるようなコメントを応募者に返すよう努力いたします。地域の健康問題解決に興味を持つ若手のチャレンジを期待しています。
(令和3年5月号)