笹川 基
酷寒の季節、深々と冷え込む夜、燗酒が心と体を温めてくれます。
コロナ禍のため忘新年会もなく、家飲みが多くなりました。週3回の休肝日以外は、ダラダラ飲みで盛り上がります。
和食には、やはり日本酒です。我が家では、冷蔵庫に3種類の日本酒を常備しています。紅葉深まる新酒の季節には、〆張鶴大吟醸金印も仲間入り。食前酒として、やわらかな果実香とふくらみある芳醇な味わいを堪能します。至福のひとときです。
約10年前、本誌476号「あとがき」を、日本酒の話題で書かせていただきました。近年、国民の嗜好が変わり日本酒の国内出荷量が減少しているのは、日本酒ファンとして残念です。しかし、和食ブームを背景に、香港、中国、アメリカ、韓国、台湾などへの日本酒輸出量、輸出額が増加しています。(農林水産省農産局、令和3年9月)
新潟県は全国有数の日本酒大国で、五百万石を使用した淡麗辛口の酒が、バブル時代にはもてはやされました。新潟の酒に追いつき、追い越せと、全国の酒造会社も研究を重ね、様々な特徴的な酒が日本酒ランキングにノミネートされています。山口県の獺祭など、その代表選手。はなやかな香りを持ち、私は常温で味わいます。
新潟県の酒造会社も頑張っています。清酒製造量では大手酒造メーカーのある兵庫県、京都府についで3位ですが、酒蔵数は新潟県89蔵、長野県74蔵、兵庫県69蔵、全国1位です。100蔵を超えていた新潟県の酒蔵数も減少しましたが、数年前まで全国1位だった兵庫県では減少傾向が加速しているようです。
昨年、スパークリング日本酒がヒットし、酒売り場には松竹梅の「澪」など多数の商品が並んでいます。新潟の酒造メーカーからもいくつかの商品が発売されていますが、私は久保田スパークリングが好きで、少々甘口のため食前酒にしています。人気商品のため、夏には店頭から姿を消しましたが、秋口からは近くの店でも買えるようになりました。
さて、2月、3月には北京で冬季オリンピック・パラリンピック2022が開催されます。本誌が刊行される2月末にはオリンピック閉会式が終わり、パラリンピック開会式を待つばかり。スピードスケートの高木美帆、小平奈緒、フィギュアスケートの羽生結弦、スキージャンプの小林陵侑、高梨沙羅、そして新潟県出身、平野兄弟、冨田姉妹、スキーフリースタイルの川村あんりなど、メダルを獲得できたでしょうか。AUKUSなど西側諸国による外交的ボイコットはどこまで広がり、どれほどの政治的効果を生んだでしょう。また、日本政府はどう対応したでしょう。お猪口を脇に本稿を執筆している睦月の夜、政治色が強まるオリンピック・パラリンピックのことが、少し心配です。
(令和4年2月号)