竹之内辰也
最近、「マスコミ」という言葉をあまり耳にしなくなったように思います。従来は新聞、雑誌、テレビ、ラジオを指す呼称でしたが、近年のインターネット普及に伴って、不特定多数向けの情報発信媒体を総称して単に「メディア」と呼ぶことが多くなっています。
昨年末に製薬企業に協力を仰いで、メラノーマの早期発見を目的とした啓発広告を新潟日報に掲載しました。新潟日報は発行部数約40万部、県内世帯普及率50%を誇る地方紙の雄です。広告を見て心配した多くの人がホクロやイボを見せに皮膚科に殺到し、その中から少しでも早期メラノーマが見つかってくれれば…と期待しましたが、県民の受診行動への影響は思いのほか限定的で、メディアを利用した疾患啓発の難しさを痛感しました。
総務省の2020年情報通信白書によると、平日1日あたりの新聞閲読時間は20代日本人で1.7分、60代で23分、それに対してネット利用は20代で255分、60代で106分とのことです。1.7分というと恐らくテレビ欄だけ見て終わりでしょうし、自分自身も20代の頃は新聞などほぼ読まなかったことを思い返せば、このデータもうなずけます。しかし気になる点として、60代の新聞閲読時間がこの5年間で1割以上短縮し、ネット利用が倍以上に延びています。これからは年齢層に関わらず、ネットを介した情報普及がさらに進んでいくものと思われます。
さて、その意味で言うと本医師会報の位置付けはどうなるでしょうか。新潟市医師会員を対象とした紙媒体の雑誌とはいえ、本会のホームページではほぼ全ての記事を誰でも閲覧できます。本誌の存在が医師会と市民との距離感を和らげ、正しい医療情報を伝えるための重要な「メディア」となっている一方で、編集作業を行う我々の責任の重さもひしひしと感じる次第です。
(令和4年5月号)