永井 明彦
21世紀の現代に、新型コロナ感染症のパンデミックとロシアによるウクライナ侵攻がほぼ時を同じくして勃発するとは!地球という運命共同体に生きる人間として、一寸先は闇、将来のことは予測できないという厭世的な気分になりますが、会員の皆様にはお変わりなくお過ごしのことと存じます。医師会報2022年6月号をお届けします。
巻頭言は新潟市消防局の小林佐登司局長からいただきました。コロナ禍における新潟市では大都市圏で起きたような医療逼迫はなく、入院外療養者の死亡もありません。消防局の救急業務やワクチン接種への貢献には頭が下がりますが、医療との連携がますます強固なものになることを願ってやみません。
学術欄では、国立成育医療研究センターの山口有紗先生から「コロナ禍のこどものこころ」と題し、アドボカシーの視点を混じえて全国アンケート調査結果を報告いただきました。昨冬にこども達に蔓延したオミクロン株については異なった調査結果が得られるでしょうから、続編に期待したいものです。
もう一つの学術報告は医学部保健学科の関奈緒先生からで、先生はライフワークともいえる禁煙支援に関し、新潟市の職域での禁煙対策の現状や意識調査結果を報告され、紙巻きたばこだけでなく加熱式たばこの危険性にも警鐘を鳴らされています。
「小越和衛先生を偲ぶ」はがんセンターで指導を受けられた加藤俊幸先生による追悼文です。小越先生のご業績が余すところなく紹介されており、正に巨星落つの感があります。寄稿文では、大滝一先生が認知症予防のための補聴器購入助成事業「新潟プロジェクト」を紹介され、海津省三先生の「禁じられた遊び」は、宇露戦争が暗い影を落とす不思議な雰囲気のエッセーです。「私の好きな店」では、土田宏嗣先生から駅南のスープカレー店を、「マイライブラリィ」では、高橋美徳先生から謎多きウナギへのオマージュに溢れたスウェーデン人作家の処女作、『ウナギが故郷に帰るとき』を紹介いただきました。
「私の憩いのひととき」では、岡田潔先生がチンドン屋とコルトレーンとセルマー・サックスについて考察され、「理事のひとこと」では、偏頭痛に対する新薬について五十嵐修一先生が解りやすく解説されています。
最後に、疫病と戦禍がオイルショックやリーマンショックを遙かに超えた深刻な世界同時不況をもたらさないことを祈りつつ、「あとがき」を締めくくりたいと思います。
(令和4年6月号)