先日、班会議と納涼会を兼ねて、四年ぶりに行形亭で会合がありました。その席の始まりの時です。ふと畳の上を見ていると、かわいいヤモリがじっとしていました。ヤモリは家守と書いて、家の守り神だったり、幸運を運んでくれたり、縁起の良い生き物です。しかも家にいる害虫を駆除してくれる頼もしい、かわいい顔した爬虫類です。十年くらい生きるそうです。我が家の玄関にもいて、夜帰ってきたときに見つけると、「やあ、ヤモリ、たくさん虫食べて家を守っておくれ」、と声をかけていました。ところが、今年は全く見かけなくなりました。行形亭で見かけたヤモリは、コロナの間、私たちが来られなかった間、ずっとこの料亭を守ってくれていたのでしょう。おかげで、美味しいお酒と美味しい料理をまた、四年ぶりに味わうことができました。この四年間、コロナの影響で、会合はなくなり、ZOOMでの会議ばかり。料亭も客が来なくなり、また感染対策で休業をやむなくさせられたり、建物を維持するだけでも、大変だったと思います。そんな間も、ヤモリが守ってくれていたのでしょう。私たちに、挨拶に出てきてくれたようでした。「皆さんが来られなかった間も、しっかりこの建物を守っていましたよ」。自慢げに私たちにアピールしているようでした。仲居さんが来られても、ピクリとも動かず、じっとしていました。踏まないように注意してくれよ、と思っていたら、仲居さんがヤモリに気づき、そっと、優しく捕まえて外に連れて行ってくれました。行形亭の守り神、「家守」。来年もコロナは落ち着き、会合も開ける状態であってほしいと思います。ヤモリもまた、来年も出てきてくれて、会いたいものです。
(細野 浩之 記)