大川 彰
秋麗の候、会員の皆様にはお変わりなくお過ごしのことと存じます。新潟市医師会報2023年10月号をお届けします。
今月号の巻頭言は副会長の岡田潔先生からいただきました。変わったタイトルですが、前新潟県健康福祉部長の松本晴樹先生の地域医療政策に対する貢献ぶりが岡田先生らしいタッチで紹介されています。コロナ対応で新潟県が成功したのは、松本先生の尽力も大きいと思われますが、戦前の紫田内科から連綿と続く新潟大医学部内科学教室の結核や恙虫病等の呼吸器感染症に対する診療実績と、それを支えた多くの新潟の医療人の力が大きかったためではないでしょうか。
学術欄では、厚生連豊栄病院の宮島透先生から豊栄病院の「在宅医療バックアップシステム」について報告いただきました。在宅医療における病診連携のあるべき姿を、医療資源の少ない地域で創意工夫しつつ模索し続けてきた宮島院長のご苦労が偲ばれます。
「病気と健康のあれこれ」では、瀬尾弘志先生から「頭痛のない閃輝暗点について」解りやすく説明いただき、「わたしの好きな店」では、高橋牧先生からご贔屓のイタリアンのお店の紹介がありました。
「マイライブラリィ」では、浅井忍先生が最近上梓された『人生はスラップスティック』を、先生をよく知る髙橋美徳先生が紹介されています。浅井先生の縦横無尽な随筆の数々を読みますと、著者自身が本書を自身の分身だと仰る感慨には共感できるものがあります。
「私の憩いのひととき」では、杉野健太郎先生が「地球の歩き方」として、学生時代の楽しいエジプト旅行の思い出を語り、「勤務医ツイート」では塚野真也先生がご自身の小児科診療の足跡を「働き方改革」に絡めて紹介され、「理事のひとこと」では、市民病院小児科の阿部裕樹先生が小児の成長曲線の活用について解りやすく解説されています。
そして、恒例の随筆コーナー「月灯虫音」欄には、今回も多くの先生方が読み応えのあるエッセイを投稿下さいました。中村隆人先生のご子息の成長を見守った紀行文とともに秋の夜長にじっくり読んでみたいものです。
NHKの朝ドラ『らんまん』では、神社の森の植物を守るために帝国大学を辞め一植物学者として生きる主人公が描かれました。国が推し進めた明治の神社合祀令は、令和の現在、東京都が推進する明治神宮外苑再開発に伴う神宮の森伐採計画に通じるものがあり、NHKにしては珍しい批評精神を感じさせました。「雑草いう名のない草はないき」という多様性を尊重する主人公の思いを噛みしめつつ、カリコ・カタリン女史のノーベル賞受賞の報に接しながら「あとがき」を締めくくりたいと思います。
(令和5年10月号)