竹之内 辰也
2024年もいよいよ暮れが迫り、あっという間に過ぎ去った1年を振り返る季節となりました。この時期になると、毎年話題になるのが新語・流行語大賞です。今年ノミネートされた30語のうち、皆様はいくつご存じでしたでしょうか。私自身、半分以上が初耳でした。個人的には「50-50」が大賞に選ばれるのではと予想していましたが、結果は「ふてほど」でした。予想は外れてしまいましたが、発表を機に今年の世相を改めて実感するきっかけになったように思います。
今回のノミネート語の中で医療に関係したものとして、「マイナ保険証一本化」が取り上げられました。利便性向上や診療情報の一元化、医療の効率化を掲げて導入が進められたマイナ保険証ですが、セキュリティへの懸念や運用上の課題から普及が遅れていました。私が勤務する病院でのマイナ保険証の利用率は、オンライン資格確認ベースで71%(10月)、レセプト件数ベースで35%(9月)までようやく増えてきました。また、7月から特定健診情報と薬剤情報の電子カルテへの取得を設定しました。オンライン資格確認等システムからの読み込みには多少時間がかかりますが、他院での投薬内容は漏れなく把握できるようになり、お薬手帳のスキャンよりは正確です。専用端末の導入や高齢者、デジタル弱者への対応は医療機関にとって負担が大きいものの、これは医療DXの入り口にすぎません。この後は、電子処方箋の導入や、3文書6情報を標準化するための電子カルテ情報共有サービスの構築など、さらなる取り組みが控えています。当院でも電子処方箋の年度内導入に向けてシステムベンダーと協議中ですが、あまりの大変さに眩暈すら覚えます。しかも、これらの仕組みは医療界全体での導入が進まなければ形骸化するため、国が描く青写真を実現するには行政からのさらなるサポートが強く求められるところです。
振り返ってみると、2024年は医療DXの土台作りの1年だったと感じます。ここからも前途多難ではありますが、最終的には患者さんの利便性向上や医療の質の向上につながることを期待しています。どうぞ皆様、よいお年をお迎えください。
(令和6年12月号)