総括医長 曽束 洋平
はじめに
新潟市医師会の会員のみなさまにおかれましては、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。日頃から当教室に格別のご厚情を賜り、誠にありがとうございます。当教室の歴史および現況につきまして、この場をお借りして、紹介させて頂きたいと存じます。
新潟大学における形成外科の歴史
田島達也新潟大学整形外科教授(第4代)は昭和29年夏、アメリカ留学からの帰国の際、自費でPadgett-Hood Dermatomeを一台購入し、日本に初めて持ち帰ったとされています。Padgett-Hood Dermatomeとはヒトから採皮する器械です。それを用いて形成外科の基本手術である分層植皮をいち早く導入し、一般手術として普及させました。その頃から新潟大学手の外科班では、頭蓋顎顔面外科領域を除いた形成外科的な手術が行われるようになっていました。新潟大学学内で本格的に形成外科が始動したのは、星榮一先生(昭和40年新潟大卒)が昭和54年より整形外科の一部門として形成外科を院内標榜してからです。
平成8年、国立大学12番目の形成外科として、文部省から新潟大学医学部附属病院に新設が認められました。同年7月に新潟大学初代形成外科科長に整形外科手の外科班チーフであった柴田実先生が任命され、平成13年、新潟大学大学院臨床医学系列生体機能調節医学専攻可塑性機能制御講座形成・再建外科学分野が、平成23年、新潟大学医学部医学科講座形成外科学分野が開設されました。柴田教授は手の外科・腕神経を中心に臨床および研究を進められました。
平成27年春、柴田実初代教授が定年退官され、同8月、松田健准教授が2代目教授に就任されました。これまで教室員と教室OBは、整形外科同窓会に所属しておりましたが、平成29年10月、新潟大学形成外科同門会が発足するまでに至っています。松田教授が着任以降、当教室は顔面神経麻痺を軸として臨床・研究を行っています。
臨床
外来診療は、火曜日と木曜日に行っています。一般的形成外科外来の他に専門外来として顔面神経麻痺外来、口唇裂外来、頭頸部再建外来、頭蓋顔面骨外来、乳房再建外来、リンパ浮腫外来、皮膚腫瘍外来、下肢静脈瘤外来、眼瞼下垂外来、レーザー外来を設けています。
手術診療は、月曜日、水曜日、金曜日に行っており、他科と連携して治療を行う手術に関しては手術日以外でも対応して再建を中心に行っています。新潟県にはこども病院がないため、先天奇形の症例も多く、乳児から高齢者までさまざまな疾患の治療をしています。
現在大学のスタッフは既述の専門外来と重複いたしますが、陳旧性顔面神経麻痺の再建、顎骨再建、リンパ浮腫、乳房再建、先天奇形(唇顎口蓋裂、小耳症や手足等)、血管腫・血管奇形を専門としており、当該患者様をご紹介頂けますと大変ありがたいです。
研究
当診療科は手術を主たる治療法として扱う診療科で、研究は臨床応用に近いものが多くあります。顔面神経麻痺再建に応用するための、腕神経叢損傷モデル作成や神経再生の様式の研究、各種頭蓋顎顔面外科領域の3Dモデルの臨床応用の研究、また難治性潰瘍に対する創傷治癒に関する研究もしています。
最後に
以上、形成外科学分野の歴史および現在行っている診療内容につきまして、簡単ではございますがご紹介させて頂きました。まだ小さな教室ではございますが、新潟の形成外科の質を高いものにすべく、日々邁進していきたいと思っております。新潟市医師会の会員の皆様におかれましては、引き続きご指導とご鞭撻のほど、何卒よろしくお願い致します。
(令和2年8月号)