講師 藤川 大基
新潟市医師会の先生方には、大変お世話になっております。当教室の近況についてご報告させていただきます。
2015年3月に伊藤雅章教授(現名誉教授)が退官され、9月に阿部理一郎教授が第6代教授として就任されました。2016年には教室開講100周年を迎え、記念祝賀会の開催と記念誌の出版を行いました。現在の教室員は38名で、大学病院や県内の関連病院に勤務しています。最近は毎年5名前後の後期研修医の入局があり、若手も多く活気のある教室となっています。「よく学び、よく遊べ」を教室のモットーに、教室員一人一人のワークライフバランスを重視しつつ、最高レベルの臨床、研究、教育を実践できるように教室員一丸となって取り組んでいます。
臨床について
外来診療では、すべての皮膚関連疾患を対象として新患患者を受け入れており、特に難治性の疾患や他診療科との連携が必要な疾患中心に県内各地からご紹介をいただいています。また、専門外来として、薬疹・リンパ腫外来、遺伝性皮膚疾患外来、皮膚膠原病外来、アトピー性皮膚炎外来、乾癬外来、脱毛症外来、皮膚腫瘍外来、皮膚アレルギー外来を開設して、それぞれの分野に精通したスタッフが最新の診療を行っています。立位全身照射型紫外線装置を始めとした最新の医療機器も完備しており診療に役立てています。現在、皮膚リンパ腫の一つである菌状息肉症を対象とした治験を行っており、今後はさらに多くの皮膚疾患に対する治験の導入も予定されています。
入院診療は、主に内科的な治療を中心に診療を行う一般班が2班と、外科的な治療を行う腫瘍班が1班の合計3班での診療を行っています。当科は新潟県での皮膚科診療の中心として、他の医療機関で治療に難渋する疾患なども積極的に受け入れています。また、緊急入院にも随時対応しています。一般班では、重症薬疹や自己免疫水疱症、重症皮膚感染症などの重症皮膚疾患を中心に、幅広く皮膚疾患全体の診療を行っています。また、パッチテストやプリックテストといった皮膚アレルギー検査や光線過敏検査、発汗機能検査などの入院が必要となる皮膚科的な検査も行っています。腫瘍班では、皮膚悪性腫瘍に対する手術、薬物療法を中心に、良性腫瘍や外科的な治療が必要となる様々な皮膚疾患に対する手術も多く行っています。
研究について
現在は、主に重症薬疹と遺伝性皮膚疾患の2つの研究プロジェクトを進めています。
阿部理一郎教授を中心とした重症薬疹グループでは、時に致死的になり得る、発症機序については未だ十分に解明されていない重症薬疹(中毒性表皮壊死症、Stevens-Johnson症候群)を研究の対象としています。特に、発症・重症度予測マーカー、重症薬疹における表皮細胞死に関わる蛋白や受容体をターゲットにした新規治療薬の開発に力を入れており、最近では、濱 菜摘助教がgalectin-7(Hama N et al.: J Allergy Clin Immunol Pract 7: 2894-2897, 2019.)、長谷川瑛人助教がRIP3を重症薬疹のバイオマーカーであることを報告しています(Hasegawa A et al.: J Allergy Clin Immunol Pract 8: 1768-1771, 2020.)。また、藤本篤講師を中心として人工知能を用いた発疹の画像からの早期診断法の確立についての研究も行っています。
また、林良太助教を中心とした遺伝性皮膚疾患グループでは、様々な遺伝性皮膚疾患の原因遺伝子の同定とその機能解析を行っています。その他、様々な皮膚疾患患者の細胞を用いた3Dスキンモデルの作製に取り組んでいます。実際に患者に薬剤を投与する前に3Dスキンモデルに薬剤を投与することで治療効果を評価できるシステムの確立を目指しています。
教育について
医学部学生への教育としては、臨床講義と臨床実習を主に担当しています。臨床講義では、皮膚科学の基本的なことから、各教官の専門分野についての最新のトピックなども講義しています。また、関連病院の先生方にも非常勤講師として講義をしていただいており、大学病院以外での皮膚科医療の実際などについても紹介していただいています。臨床実習では、外来、入院、手術などでの診療に伴って学生指導を行っています。実習では全診療科をローテートしますが、外来診療に触れる機会はあまり多くないようですので、実際に初診時からの診療の流れを見学できる当科の外来実習は学生から好評です。現在のコロナ禍では通常の実習が困難な状況ではありますが、オンラインミーティングシステムを用いたり、通常の実習とスケジュールを変更して教室員総出で対応したりするなど、学生に可能な限り良い教育を提供できるように努力しています。
若手を中心とした教室員への教育として、国内外の著名な講師を招いた特別講演を主に水曜日の医局カンファレンスに合わせて行っています。また、県内関連病院の部長の先生方や教室内のスタッフによる教育講演も多く行っています。現在は対面での講演が困難な状況ですが、オンラインミーティングシステムを用いて例年とほぼ同様に講演を行っています。
皮膚科 集合写真
(令和2年12月号)