勝井 豊
今年の1月に『不都合な真実2 放置された地球』が新潟市内で上映されていたので、妻と一緒に見に行った。主演はアル・ゴア元アメリカ副大統領で、彼は10年前に環境ドキュメンタリー『不都合な真実』を発表して、アカデミー賞だけでなく、ノーベル平和賞まで受賞している。
1作目が発表されてから10年間の動きをまとめたのが第2作であるが、温暖化による自然災害の増加や気候の変動、生態系への悪影響などさまざまな主張が行われている。彼にとって最もみじめなのは、地球温暖化を真っ向から否定しているトランプ大統領の登場であり、温暖化防止の切り札であった京都議定書からアメリカが離脱するなど、彼にとって最悪のシナリオが進行しているように見える。
それでも諦めないアル・ゴア氏であるが、彼の髪は黒から白に変わり、10年の歳月の長さを感じさせられた。映画を見ている我々も10年間年をとっているのだが、「灯台下暗し」の諺にもあるように、自らの老化を自覚せずに済んでいるのは、結構なことであった。
ところで気になったことが、ひとつあった。それはこの映画をみている観客が、我々を含めて4人しかいなかったことである。環境問題がマスコミに登場しない日はないほどに、この問題は身近に感じられるし、太陽光発電設備はいたるところに設置されているが、しかし一般の人々にとって環境問題は差し迫ったこととは認識されていないようである。
2000年のアメリカ大統領選挙で、アル・ゴア氏はブッシュ氏との接戦の末に敗れているが、それを契機にして市民を対象にした啓発活動に力を注いで現在にいたっている。しかしながらその努力が、少なくとも日本においては、十分な成果を上げていないように見えるのは、彼にとって「不都合な真実」であるように思えた。