山﨑 芳彦
キジは、日本の国鳥に指定されており、大きさは小さめのニワトリくらい、オスの胸は輝くような緑色、目の周囲は真っ赤な鮮やかな鳥で一見すればそれとわかる。メスはオスよりやや小さく、全体が地味な褐色で尾羽はやや長い。新潟県でも比較的よく目にする鳥で、海岸通りや里山で出会ったという方も多いであろう。
著者は、新発田市郊外の築約100年の古民家で週末にガーデニングを楽しんでいるが、ここには多くの小動物、鳥、昆虫などが現れる。鳥は詳しくないので名前に疎いのだが、何種類かは常に見ることができる。
平成30年5月中旬のある日、李の木の下草を除草中、突然、褐色の大きな鳥が飛び出てきた。この時は鳥の名前はわからなかった。飛び出した後をみると、木の根元の草むらに鳥の巣があり、鶏卵より一回り小さな白色の12個の卵が産みつけられていた(写真1)。巣は地面に浅く掘られ、枯れ草がわずかに敷かれた簡単なものであった。そっと離れると間もなく親鳥が戻ってきた。翌週同じ場所を覗いてみると、親鳥が抱卵をつづけていた。写真撮影したがうまく草の中に紛れるもので、手前の草が邪魔になり全体像がよく見えない(写真2)。親鳥は1m位近づいても逃げず、こちらの様子をじっと見ている。今後も観察を続けることにして、草薮には手を入れずその場を離れた。以前から時々庭の中外で、ギャーというかケーンというか、ドアが軋むような鋭い大きな鳴き声が聞こえていた。キジも鳴かずば撃たれまい、という諺があるように、鳴き声を聞くと“ああキジがいる”とすぐにわかる。以前から、ここでキジの姿はメスも含めて何度も目撃しており、今回の巣の主もキジであると確認した。キジは一度に3−12個の卵を産むという。今回は12個と多かった。昨年も別な場所で2個の卵を確認したが、いつの間にか姿がみえなくなり、この時はキジとは思いもよらなかった。この庭では時々色々な卵が見られるが、何の卵か同定できないでいる。小指の先ほどの卵が2-3個空の植木鉢の中にあったが、トカゲがよく植木鉢の中で越冬するので、これかもしれない。また、殻のない半熟卵のような卵が草薮の中で転がっていたことがあるが何の卵であろう。
抱卵してから約1か月の間に何回か巣を覗いたが、最後にみた2日後、卵はすべて殻のみが残されていた(写真3)。無事巣立ったのだろうが果たして雛はどこに行ったのか、周囲を探してみたが発見できなかった。孵化したばかりでまだ飛ぶこともできないと思われるのだが、近くにひっそりと隠れているのであろうか。キジは里山のちょっとした藪などに巣を作ると聞くが、ここのように民家が並ぶ中での子育ては、親鳥も落ち着いていられないだろうと同情する。しかし、野生地ではヘビ、猛禽類、ほかの動物も多いことから、これらに卵を取られて生き残るものも少ないといわれ、こういった人家の庭で子育てする方が賢明と考えたのかもしれない。今回はオスの関与の程度、巣立った雛の行動などわからないことが多く、来年も同じように産卵があればじっくりと観察したいと思っている。
(平成30年9月号)