勝井 丈美
現在105歳の抽象的日本画家にして、書家、エッセイストでもある篠田桃紅の私設作品館が近くにあることを知人から聞いて、8月の暑い日に行ってみた。バス通りからちょっと路地に入り、奥まったところに、あまり目立たない感じでその建物はあった。普通の住宅のようだが、それにしては大きすぎる分厚い木製の扉に小さく「篠田桃紅 作品館」とあった。中に入ってみると、黒塗りの床と柱で古民家風の落ち着いた佇まい。入口土間の壁にも大きな作品がかけてあり圧倒される。
松木さんという女性オーナーが出迎えて下さり、早速、土間の作品から説明していただく。
抽象表現なので、解説は邪魔になるからと、ほどほどの説明と「ライトの加減で色が変わってきますから、それを見てください」と調光してみせてくださり、なるほどと感心する。
2階にも展示スペースがあり、展示作品数は思ったよりも多い。墨色を基調としたシンプルな表現ながら、研ぎ澄ましたような強いインパクトを感じる。日本の粋(いき)の美意識と斬新さがあふれた作品群だ。
松木さんは書道の他に茶道もされていて、お抹茶を上等なお茶碗でサービスして下さり、作品館を作ったいきさつや自宅を処分した残金の全てが、漆塗りの入り口大扉に消えた話、桃紅さんのひととなりなど、屈託のない楽しいお話を聞かせてもらった。「入館料500円じゃ、大赤字ですね」と言ったら「そうなんですよ」と笑っておられた。松木さんは70代になられたが、清々しい老後の生き方のお手本を見た気がした。秋のミニコンサートとお正月企画「百人一首」の展示も楽しみだ。
篠田桃紅 作品館
新潟市中央区学校町通2番町5245−4
(11時~16時まで入館可)
(090−2999−9495)に連絡してから行くと良い