川﨑 克
新潟市医師会総会および忘年会が平成30年11月24日(土)15時30分から新潟東映ホテルにて開催され、出席者134名でした。プログラムに沿い、当日の様子をお伝えいたします。
司会進行の新潟市医師会 橋本理事の開会宣言で開始されました。藤田一隆新潟市医師会長から「昭和36年に第1回の学術講演会、昭和40年に第1回総会が開かれた歴史について、また昨年から一般演題が中止になり、特別講演のみとなった」経緯について説明がありました。
1.臨床懇話会総会特別講演
藤田会長が座長を担当されました。新潟大学大学院医歯学総合研究科腫瘍放射線医学分野・機能画像医学分野(放射線医学)教授 青山英史先生から「脳に放射線をかけるとぼけるというのは本当か?」と題した講演が行われました。青山先生のご講演を以下のようにまとめてみました。
転移性脳腫瘍に対する放射線治療の認知機能とQOLへの影響
①治療目的
生存期間の延長、頭蓋内腫瘍制御(転移性脳腫瘍の8割は頭蓋外の問題)、QOLを安定・向上、QOLに関連した認知機能についてです。
②これまでの認知機能評価
全脳照射は世界標準治療ですが、散発的に不可逆的白質脳症に至り認知機能が落ちる晩期障害が問題です。以前の演者による検討においてMMSE(認知機能検査法)で評価すると定位照射群は再発によるもの、定位照射+全脳照射群では晩期障害によるものが多くみられます。最近ではMMSEよりも高感度な検査を用いるのが学会の認識で、MMSEでは変化なくても高感度認知機能検査法では変動がみられます。2005~6年頃に演者による検討でMMSEとRBANS(認知機能検査法)で同一患者を比較したところ、MMSEでは変化はありませんでしたが、RBANSでは4ヵ月で低下(一過性脱髄)は8ヵ月で持ち直し(脱髄が改善)、12ヵ月で低下(晩期反応)がみられました。2010年の海外論文で、4ヵ月の時点の評価において定位照射+全脳照射群においてHVLT-R(認知機能検査法)で有意に認知機能低下がみられ、全脳照射不要論が国内で高まりました。しかし、実臨床と数字が解離している印象があります。認知機能低下の定義次第で低下率も異なります。
③認知機能評価の演者の研究
そこで「臨床的に意義のある認知機能の低下は、臨床的に意義のあるQOLの変化を反映している必要があるのではないか」という仮説で、2012年4月から5年間に全脳照射を行った症例で評価を行いました。認知機能の低下・改善のそれぞれでQOLの低下・改善があったかどうかは1.5SDで識別する能力がありますが、Both(低下・改善の両項目)を含めるとどちらの場合も有意差がなくなります。認知機能の変化に臨床的意義をみいだすには、Bothがある場合には低下、改善のそれぞれの判定に入れるべきではないと思います。低下率だけではなく改善率も含めないとミスリーディングになります。
④放射線治療の認知機能とQOLへの影響まとめ
全身状態、患者意欲の低下、生存率、頭蓋内の腫瘍の状態、晩期有害反応も影響します。定位照射単独群と全脳照射併用群のどちらが認知機能温存を作れるかは結論に至っていません。
転移性腫瘍の放射線治療方法
全脳照射、定位照射法があります。今でも全脳照射は有効なツールですが、晩期障害の認知機能障害が問題となります。一般的な定位照射では病巣が複数の場合には個々にビームを当てていました。新潟大学では位置合わせの機能にすぐれたノバリスを導入しています。2018年4月から新しい定位照射法であるsingle iso center VMATを行っています。1ヵ所にセンターを置き、そこを中心に回転させる原理で、7個までなら20分で治療が可能です。
転移性脳腫瘍に対する放射線治療のEvidence(評価)
①照射法の違いによる予後
定位照射+全脳照射群のほうが頭蓋内制御は良好と証明され2014年NCCNの診療ガイドラインで世界標準治療となっています。2015年の海外論文で頭蓋外原発予後良好群では全脳照射を加えたほうが定位照射単独よりも頭蓋内制御が良好で生存率が良い可能性があるとの報告があります。
②全脳照射量
30Gy(3Gy×10回)が標準の全脳照射ですが、1960~70年代では生存率が4ヵ月程度であり晩期障害が問題となりませんでした。現在「再発・晩期障害の制御」の仮説で25Gy(2.5Gy×10回)低線量の全脳照射と定位照射に組み合わせの臨床試験を新潟大学で行っています。2019年に結果がでます。
③今後の研究
「定位照射、手術の適応がない場合も全脳照射は全脳照射予後良好群に関して生命予後は改善し、定位照射、手術の適応がある場合は全脳照射+手術と全脳照射を加えることで生命予後良好となる」の仮説で前向きな研究の必要があると考えています。
まとめ
全脳照射後には認知機能とQOLの悪化もあるが改善もします。
論文を読む際に解析方法は十分に注意して解釈してください。
定位照射単独群は条件が合えば選択肢に入り、全脳照射の群も存在します。
脳転移再発と認知機能低下の危険の少ない全脳照射線量分割の開発が必要です。
質疑応答
Q 西條理事「全脳照射に25Gy(2.5Gy×10回)の臨床試験を選択されたのは?」
A 青山教授「小細胞肺癌の予防的全脳照射は標準的治療ですが、それに対して25Gy(2.5Gy×10回)が行われているのが最大の理由です」
Q 藤田会長「Both(低下と改善の両項目)は必ずあるが、Bothに焦点を当てた論文はあるのでしょうか」
A 青山教授「最近のジャーナルでは悪化(低下)に焦点を当てたものが多く、改善にふれたものはありません」
2.第6回新潟市医師会総会
橋本理事の開会宣言、藤田会長から開会の挨拶がありました。
「明治40年新潟市医師会の創立ですが、平成25年4月一般社団法人として再出発後6回目の総会であること、今年の3月30日の臨時代議員会で新執行部となり、自身は3期目、山添優理事、古泉直也理事が退任、県立がんセンター新潟病院 竹之内辰也先生、新潟市民病院 小田弘隆先生が理事に就任、今井昭雄議長が退任、新田幸壽先生が新議長に就任した」ことが報告されました。このあと新田幸壽議長、小林晋一副議長のもと、18名の物故会員の先生方に黙祷を捧げ弔意を表しました。その後以下の報告がなされました。
①平成29年度新潟市医師会事業報告
橋本理事
②同会計収支決算報告岡田理事
③新潟市医師会会計規定の改正岡田理事
④役員選挙橋本理事
⑤県医師会代議員・予備代議員選挙
橋本理事
⑥顧問の委嘱ならびに裁定委員の選出
橋本理事
3.医師連盟総会
新田議長の進行で行われました。
藤田会長から日本医師連盟は来年行われる参議院選挙全国比例代表候補者に羽生田俊・元日本医師会副会長を推薦するとの報告がなされました。平成29年度新潟市医師連盟事業報告を橋本理事が報告、決算報告を岡田理事が報告、監査報告を熊谷監事が行いました。
4.第6回新潟市医師会総会セレモニー
総会セレモニーが藤田会長の挨拶で開始となりました。参加者にお礼が述べられました。「平成25年4月に一般社団法人になってから6回目の総会となりました。会長職の3期目になり、2期目は『強い新潟市医師会作り』をスローガンとしましたが、3期目は『シンプル・原点回帰』で行いたい、『日本医師会綱領、新潟市医師会定款、医の倫理の綱領』の3本柱を基礎に行いたい」とコメントされました。
来賓の皆様から祝辞をいただきました。
①来賓祝辞
新潟大学医学部長 染矢 俊幸様
新潟県医師会長 渡部 透様
衆議院議員 西村ちなみ様
衆議院議員 菊田まきこ様
衆議院議員 石﨑 徹様
橋本理事より来賓紹介、祝電披露がありました。
②来賓紹介
衆議院議員 黒岩 宇洋様(代理)
桑野 正行様
衆議院議員 斎藤 洋明様(代理)
若狭 健太様
③祝電披露
衆議院議員 鷲尾英一郎様
参議院議員 風間 直樹様
参議院議員 塚田 一郎様
参議院議員 森 ゆうこ様
④功労会員表彰
伊藤 久彰先生
今井 昭雄先生
西川 重光先生
以上の先生方が藤田会長より表彰状を授与されました。
⑤研究助成事業認定書授与
西條理事よりのアナウンスで藤田会長から授与が行われました。
建部 一毅先生
「摂食嚥下機能評価をベースとした誤嚥性肺炎患者に対するクリニカルパス策定と有効性の検討」
佐藤 純子先生(代理)
共同研究者 石上 和男先生
「新潟市地域包括ケアシステムに活かすソーシャルインクルージョンを実現する構造要因の検討─“実家の茶の間・紫竹”」
藤木 伸也先生
「慢性心不全患者における要介護発生率と関連因子の検討」
岡部 隆一先生
「新潟県における頭頸部がん検診のこころみ」
以上の先生方が藤田会長より認定書を授与されました。
5.長寿会員慶祝
米寿 13名 喜寿 20名
白寿会員 今回対象者はいませんでした。
米寿会員 赤井 昭先生
大山 芳郎先生
三輪 浩次先生
喜寿会員 今井 昭雄先生
小澤 武文先生
小島 健二先生
今野 公和先生
清水 武昭先生
高橋 常彦先生
以上の先生方が藤田会長より表彰状を授与されました。
6.福引抽選会
白柏、横田理事の司会で行われました。今回から理事が番号ではなく、参加者のお名前を呼ぶ形式に変更となりました。景品は以下の通りです。
福引景品
1等『全国共通商品券』5万円分1本
2等『全国共通商品券』3万円分2本
3等『加島屋 味覚セット』3本
東映ホテル賞
『東映ホテル食事券1万円分』3本
4等『モエ・エ・シャンドンのシャンペン』4本
5等『カレーセレクション』10本
6等『〆張鶴大吟醸金ラベル』20本
7等『ゴディバのクッキー』20本
8等『とらや羊羹』20本
今回の1等は廣川 宏先生でした。インタビューで「1等はもちろんのこと初めて当選しました」と嬉しそうにコメントされていました。ちなみに私は初めてくじ引き大会参加し、3位に当選しました。(印象記を担当することに対する神様からのご褒美でしょうか?)家族に喜ばれそうな景品で良かったと思います。
7.新潟市医師会忘年会
①開会挨拶
永井明彦新潟市医師会副会長の挨拶で忘年会が始まりました。
②来賓の皆様から祝辞をいただきました。
新潟市長 中原 八一様
新潟市議会議長 永井 武弘様
新潟市歯科医師会長 岡田 匠様
新潟市薬剤師会長 國井 洋子様
③乾杯
新田 幸壽 代議員会議長
④新入会員紹介
やまもと内科消化器クリニック
山本 幹先生
⑤閉会の挨拶
新潟市医師会副会長の浦野正美先生の中締めで閉会となりました。
青山 英史 教授
藤田 一隆 会長
染矢 俊幸 新潟大学医学部長
渡部 透 新潟県医師会長
西村ちなみ 衆議院議員
菊田まきこ 衆議院議員
石﨑 徹 衆議院議員
功労会員表彰
地域医療研究助成認定書授与
米寿会員 赤井 昭 先生
喜寿会員 今井 昭雄 先生
福引抽選会
天狗展
天狗展
開会 永井 明彦 副会長
中原 八一 新潟市長
永井 武弘 新潟市議会議長
岡田 匠 新潟市歯科医師会長
國井 洋子 新潟市薬剤師会長
乾杯 新田 幸壽 代議員会議長
忘年会
閉会 浦野 正美 副会長