長野 泰甫
最近の報道によるとニホンザルが増えて人里に来ては人家にまで迷惑を掛けているという。猿害である。しかし現在これを防ぐ名案はないらしい。猟師もヒトに近いサルを猟銃で打つことが出来ないと云う。猿害を防ぐにはまずサルの生態を知らなければならないだろう。いつの頃か宮崎県幸島で一匹のメスザルが、人真似かどうかは分からないが、芋を海水で洗っていた。それを見た他のサル達も同じ行動をとるようになった。立派な文化の伝播と言ってもいいと思う。
所でニホンザルの脳の容量は100ml前後、ヒトの10分の1以下である。DNAの何%を共有しているかを明らかにし更に共有していない部分を調べる事により進化の過程が解るかも知れない。寒い冬の日に温泉に入って気持ちよさそうにしているニホンザルの写真からは全く人と同じだなあとの感を深くする。人里に来るのも餌を求めてであろう。酒を作ったのも最初はサルだとの伝承もあるから食料も彼等自身の手で調達できないものか。田畑を耕してせめて芋くらいは栽培してほしい。
ヒトが田畑を耕すようになったのは紀元前8000年頃らしいから新人(クロマニョン人)から現代人に進化しつつある頃のようである。脳の容量が1,300mlもあるネアンデルタール人にも出来なかった事を考えると、田畑を耕すことがいかに難しいかが分かるのである。ましてニホンザルが独力でその能力を身につけるのは無理であろう。ならばヒトが教育して田畑を耕す能力を引き出してやることは出来ないか。1年や2年ではなく100年から200年の長いタイムスパンで根気よく何世代にも渡って教えていくのである。我が国は若い人が少なくなり老人大国になるのは目に見えている。いつの日か100歳の老人が沢山のニホンザルと田畑を耕している情景を夢の様に思い浮かべるのである。
(平成31年5月号)