木村 洋
百人一首は皆様ご存知だと思いますし、カルタ遊びとして百人一首を経験したこともあるかと思います。しかし競技カルタを本格的にやった人は多くはないのではと思います。ルールは上の句を聞いて、如何に早く下の句の札を取るかの勝負です。読み手が下の句を読み終わり、次の句を詠み始める間の一瞬の静寂。次の句を読み始めた瞬間お互いが激突し、燕返しのような素早い手さばきで札を取り合います。名人は次の句を詠み始める前の息を吸った音で取ったという伝説まであります。優雅な王朝絵巻とは程遠く、記憶力・気力・体力・持久力・知力・戦略などまるで格闘技です。
母の実家がお寺でしたので正月にはカルタ遊びをしました。父もカルタにいっぱしの自信があり、集まってきた人たちと競っていましたので、自然と興味を持ちました。例えば「あさぼらけ」や「きみがため」で始まる句は二首あり次の言葉を聞くまでは取れません。下の句も「わかころもて」という句が二首ありお手付きをしやすい札です。戦術・戦略が必要な所以です。一方「むすめふさほせ」はその一音を聞いただけで取れる句で、語呂が良く覚えやすいこと。子供でも「む」を聞いたら「きりたちのほる…」を、「す」ときたら「ゆめのかよひし…」を大人と互角に勝負できると真っ先に覚えました。狙った札が取れると喜び、取られると悔しく泣いたりしていました。毎年近江神宮で行われる競技カルタの名人戦がテレビ中継されますが、中学・高校のクラス対抗試合や地区の大会に出ていた頃の興奮が懐かしく思い出されます。
最近は物忘れが激しく、句を殆ど忘れてしまいましたので競技ではなく和歌として親しもうと新たにカルタを買いました。しかし、今は孫たちと坊主めくりに興じ、お姫様だ、蝉丸が出たなどと楽しんでいます。
(平成31年5月号)