伊藤 文彌
以下の事を想い出し、この文章を記しました。
私は、昭和34年、桂教授の第二内科へ入局しました。
当時、新潟県では長岡市の信濃川と、新津市と五泉方面にツツガ虫病があったようです。
8月になって、ツツガ虫病が出る季節でした。桂先生の依頼で、医局長よりの命令でツツガ虫病のお手伝いをすることになりました。
いつも夏の暑い日でした。その時は3回位行ったと思います。
故近藤有好先生と小生で、新津市郊外の、清水医院(間違いかもしれません)へ行きました。先生が採血して下さった血液を頂いて帰るのでした。3回位行きました。
いつもお昼頃に到着するのでした。
それで昼食に冷やしソーメンを御馳走してくださいました。夏のソーメンは本当においしく頂きました。
血液は、故斉藤秀晁先生が血液学を研究されており、斉藤先生に届けました。
先生によればツツガ虫病ではリンパ球が多いようだと、記憶しています。
当時、桂先生はツツガ虫病の治療に、テトラサイクリン50mgの少量投与をされていました。
この治療法はツツガ虫病及び赤痢に用いられていました。
桂先生の関連の病院等で実施されました。
この治療法はよい効果があったようです。
私は昭和43年に、新井市の厚生連頸南病院に勤務しました。
当時の新井市は水道もなく、井戸水を使用し、道端にきれいな水が流れていました。
その為私が赴任時に、20~30名位の赤痢患者が入院していました。何れもテトラサイクリンの50mgで軽快しました。
私は平成3年に妙高村で診療所を開業しました。
当時、板谷啓司先生が、厚生連糸魚川病院の院長をされており、山の中にもツツガ虫病があると教わりました。
妙高診療所で2例のツツガ虫病を診ました。
1例目は50才の男性でした。
高熱を主訴として受診しました。
全身が赤っぽくなっており、ツツガ虫を考えて、下肢の股関節部を視ると、直径3cm位の強い発赤があり、中心部が小さい黒色がありました。治療は妙高病院に入院してもらいました。
2例目は45才の女性で、やはり高熱を主訴として受診し、所見からツツガ虫と診断して、妙高病院で入院加療して治癒しました。
17年勤務しましたが、この1年の2例のみで、他の年には発生しませんでした。
1例目は発熱の4、5日前に山に行きました。
2例目は自宅の畑で感染しました。
(平成31年5月号)