大滝 一
はじめに
昨年6月のある日曜日、朝刊に「くれよん」のチラシが入っていて、西安旅行の案内がありました。西安といえば、私にとってサグラダファミリア、モン・サンミッシェルに次いでこの目で確かめたい兵馬俑があります。旅費がリーズナブルなうえに、予定の一つが8月15日(水)から18日(土)までの3泊4日で、お盆休みを入れて何とか工面すれば出かけられる日程でした。もうこの段階で旅行決定です!
7月7日に「くれよん」に電話したところ、15人以上で催行のところ、私でまだ3人目とのことでした。しかし、間違いなく催行されるとのことでしたので、すぐに万代の旅行センターに行き予約しました。
この旅行は兵馬俑と日程、旅行費用の安さもありますが、添乗員付きの新潟空港発着というのも大きな魅力でした。パンフレットでは、新潟から上海までわずか3時間、その上に伝統料理、さらには多くの歴史的遺産、考えただけでもワクワクでした。
中国行きが決まって、問題と思ったのがWi-Fiでした。調べてみるとやはり中国の場合は特殊であり、中国仕様のWi-Fiを借りましたが、それでもときどき繫がらないときもありました。
さて出発
8月15日の12時に空港に集合。今回のツアー参加者は9名。ご夫婦、母娘、姉妹に熟年男性と背の高い若い女性のカップル、と私でした。そこに添乗員が加わり総勢で10名となりました。今回は家内が不参加で多少寂しさはありましたが、兵馬俑が待ってます。諸注意などの説明を受け、2,000元(日本円で約35,000円)の両替をしました。ある一品を除けば、結果的にはこれで十分でした。ただし、西安の空港ではカードは一切使えず、日本円も使えませんので要注意です。
さて飛行機は午後2時に上海に向けて離陸しました。しばらくすると、後ろのご夫婦のご主人が「大滝先生ですよね」と話かけてこられ「私は〇〇です。その節はお世話になりました」とのことでした。説明会のときから見たことがあると思っていましたが、市役所の部長をされていた方でした。今回は一人でしたので、知り合いがいて心強く感じました。
さて、新潟を発って2時間半が過ぎ、飛行機が高度を下げはじめました。上海ってこんなに近かったのかと驚きました。確かに地図上で見ると、新潟から沖縄と同じくらいの距離です。頭では理解していても、実際に経験してみるとその近さは驚きでした。
日本との時間差はわずか1時間で、現地時間の午後4時に到着です。上海には二つの空港があり、一つがこの浦東空港(日本では成田か?)、もう一つが虹橋空港(羽田的?)です。
上海にて
上海から西安までは飛行機で約3時間。現地時間午後9時の出発まで4時間ほどありましたので、現地ガイドが勧める上海プチ観光をすることになりました。浦東空港から上海市内まで35km、地下鉄で11駅、約40分だそうです。ここで現地ガイドから「時間がもったいないのでリニアモーターカーにしましょう(写真1)」と提案がありました。「えっ、リニアモーターカー?」ツアー参加者みなびっくりです。日本ではかなり前から開発されていますが、いまだ試験運転の段階です。まさか中国に来てリニアモーターカーに乗るとは思ってもいませんでしたし、数年前の高速鉄道事故とその後の処理を皆が知っていて、大丈夫かと多くの方が不安がっていました。
私達が乗ったときは最高時速301kmでしたが(写真2)、時間帯によっては400kmで走るそうです。実に快適、振動がないので新幹線が滑空している感じでしょうか?一瞬ですが、すれ違いの際の突然の轟音は、雷かと勘違いするくらいびっくりしました。上海市内まで35kmの距離がわずか8分でした。中国の技術発達、恐るべし!
さて、上海駅で降りてすぐ感じたのは、夕方にもかかわらずかなり蒸し熱いこと、そして空気がねっとりしていて新潟にくらべおいしくないと感じました。エスカレーター脇で眠る猫も心なしか元気がないように思いました。
上海の夜景。これはテレビでも見ていますが、実際は実に綺麗で素晴らしく、西安の兵馬俑だけを考えていた私はすごく得をした感じがしました。超高層ビルが色とりどりのイルミネーションで輝き(写真3、4)、東京や大阪、名古屋の夜景と比べると原色が多いように思いました。一見の価値大です。
しかし、この夜景を見るための人が多い多い、まるで雲霞のごとくでした。
さて上海市内から空港に戻るわけですが、帰りは地下鉄を利用することになりました。地下鉄の中はめちゃめちゃ混んでいて、皆スマホを見ているのは東京と同じでしたが、違うところは、とにかく五月蝿いことです。東京では皆静かにスマホを見ていますが、中国ではスマホを見ながら大きな声でわめくように話す、ここが大きな違いでした。これだけ人が多いと声も大きくならざるをえないのでしょうか?
西安へ
さて浦東空港に帰り、夜9時発で2時間半後には西安のつもりで飛行機に乗り込みました。ところが全く動きません。中国語での機内アナウンスがありましたが当然理解不能です。困っていると、私の隣の隣に座っていた同じツアーの背の高い若い女性が「今、西安の空港は強風のため着陸できない状態で、状況の改善は厳しく出発を見合わせる可能性が高い」とのことでした。最初からこれではとため息が出ました。その後もアナウンスがあり、その女性から「今夜は飛ばないようだ」とのことで、落胆しました。
教えてくれた若い女性ですが、出身は黒龍江省で現在は新発田に住んでいて年に2回ほど中国に帰っているとのことでした。この女性のおかげで、中国語が全く分からない私たちは随分助かりました。
約1時間が過ぎ、あきらめていたところにアナウンスがありました。いよいよだめか!と思いましたが「これから飛ぶそうです」とその女性が教えてくれました。そして上海から2時間半弱、何とか目的地の西安にたどり着きました。
西安着が午前0時半、荷物を受け取り、空港からバスに乗りホテルに着いたのは午前2時過ぎで3時に就寝できました。翌朝は9時出発です。睡眠時間は短いものの、日本との時差が1時間、時差ぼけがないのが救いでした。
観光初日
観光初日ですが、まずは朝食です。期待して7時に朝食会場に入りました。料理をざっと見て回りましたが、正直、これと言って食べたいものがありませんでした。このホテルは江沢民主席なども宿泊した歴史と伝統あるホテルとのことで、ロビーなどは立派でしたし、部屋もまずまず、しかし、食事には正直がっかりしました。
まず、日本や他の国では普通にある、水やコーヒーがないのです。飲み物は牛乳とオレンジジュースのみ。それも温かいのです。温かいオレンジジュースは…。やはり冷えているほうが美味しいです。勿論氷などもありませんでした。
後で現地ガイドに聞いたら、中国では温かい飲み物は歓迎の気持ちを表しているのだそうで、冷たいものはお腹によくないとされているとのことでした。それにしても水かコーヒーくらいは置いてほしいものです。
食事は日本とは違い、香辛料が強く私は馴染めませんでした。ツアーの他の方も同様のようで、水がない、コーヒーがない、料理のにおいがきつい、と言っていました。
前日、ホテルの近くにコンビニがあることを確認していましたので、食事の後にそこでスタバもどきのコーヒーを購入しました。同じツアーの方々にも教えたところ何人かそのコンビニに出かけていました。パッとみるとスタバのマークですが、どうも少し違うのです。中国のお得意とするところでしょうか。
さて、今日の観光の目玉、何と言っても2000体の兵馬俑がある秦始皇帝陵博物院です。10時には博物院に着きました。暑い、その上に中国も夏休みということで、人が多い!フランスのベルサイユ宮殿も入館待ちの人でごったがえしていましたが、ここもとにかくすごい人でした。ガイドからはぐれないように頑張って、博物院の1号坑に入りました。兵馬俑を見たいのですが、人の波で人しか見えない。半分けんか腰でなんとか前に進み出て、やっと熱望の兵馬俑に会うことができました。
広い!多い!…1号坑は東西230m、南北62mのとても大きなドームでした。そこに約2,000体の逞しい兵馬俑が整然と立ち並んでいました(写真5)。兵馬俑は今から45年前の1974年に農夫が井戸を掘っているときに発見したものだそうです。そこから次々に発掘され現在に至ったとのことでした。2,000体あるにも拘わらず、それぞれの顔や武具など全て異なるとのことです。しかしすごい物を作ったものです。秦の始皇帝の力の絶大さが伺えました。
その後2号坑に行くと、間近に兵馬俑を見ることができました。これが思った以上に大きいのです。ガイドに聞いたところ、1体平均180cmあるとのことでした。大きい理由としては、秦の始皇帝を護衛するための兵士であり、元々屈強な兵が集められた、という説と、小さいと弱そうに見えるため大きく作った、という説があるとのことでした。写真6の後姿も実に逞しいものでした。
テレビや雑誌などの写真で兵馬俑は何度も見ていましたが、実際に見るとまず1号坑の大きさ、兵馬俑の数の多さに圧倒されます。そして人の多さにも圧倒されます。ちなみに知り合いの方がかなり前に西安に行ったときには、兵馬俑はまだ数体しか展示されていなかったとのことです。
1号坑の「坑」となっている由来は、まず地下5mの深さの坑道を掘り、そこに兵馬俑を作ったところからきているとのことです。坑道だけでもすごいと思います。
その後の昼食では、西安名物とされている「びゃんびゃん麺」をいただきました。幅広の麺で名古屋のきしめんのような感じです。美味しいのですが、香辛料が私にはやはり今一でした。同じツアーの何人かが同じことを言っていて、ガイドさんも「中国人はお腹が強いが、日本人は弱く、中国に来てすぐおなかを壊すデリケートな人が多い」と言っていました。
午後は陝西歴史博物館を訪ねました。シルクロードの東の基点であったった西安は(写真7)、紀元前1100年ころから2000年の間、中国の11王朝の都であったことから、歴史と種々の宝物で溢れていました。
その後、西暦804年に日本からの留学僧空海が学んだ寺、青龍寺に向かいました(写真8)。この寺は「四国八十八ヵ所」の0番札所であり、今も日本から訪れる人が多いとのことでした。
その夜は餃子料理で有名な飯店で夕食をとりました。ここでは7種類の餃子が出てきて(写真9)、香辛料もあまり気にならず美味しく満足しました。食事後に行われた中国舞踊は、色鮮やかな衣装、華麗な踊り、賑やかな演奏と豪華絢爛で、時間を忘れて1時間堪能させていただきました(写真10、11)。
その後、熱気ムンムンの西安一の繁華街を散策し、夜にひときわ目立つ鐘楼周辺をひと回りし(写真12)、一日を閉めました。繁華街は、今の古町通りなどと違い、すごい人で溢れ、中国の活力と熱気をひしひしと実感しました。
二日目
観光二日目、実質最終日となります。
まずは1周14kmに及ぶ西安城壁(写真13)の西門を訪れました。この城壁は高さが12mもあり西安の町を護衛するために、1370年から8年かけて作られたものです。この西門に上りましたが、ここからシルクロードへ旅立っていったとのことです。この城壁でマラソン大会が催されるとのことでした。
その後、陝西省美術博物館に行きました。そこで見た花瓶と茶碗に屏風、安くはありませんでしたが、とても気に入り合わせて5点を購入させていただきました(写真14)。後日日本に送っていただくことにしましたが、8月21日にわざわざ館長より送ったと医院に国際電話があり、9月2日に届き、5日には届いたことの確認の電話までいただきました。対応の丁寧さにはちょっと驚きました。その美術館の入り口近くでは太極拳をするグループがいくつかありました(写真15)。
このあと昼食をいただき、高さ64mの大雁塔を訪ね(写真16)、暑かったですが頑張って最上階まで登ってきました。これが今回の旅行の〆となりました。
そして、その日の夕方には上海に向かう9時の飛行機に乗るために、林立する高層ビル、原子力発電所を見ながら西安空港へと向かいました。空港で夕食をとりましたが、ここで出たあっさりしたチャーハンと野菜スープが私にとっては一番美味しかったように思います。同じような感想を持った方も何人かおりました。
問題発生
ところで、ここで再び大問題発生!
西安発で、上海の二つの空港行き飛行機が全て欠航となったのです。
本来であれば9時に西安を発ち、11時半には上海に着く予定でした。今夜、上海に入らないと明日の朝の新潟直行便に間に合わなくなります。
その理由は台風でした。上海を台風が襲っていて、その強風で上海の二つの空港の全ての便が本日中は発着できないとのことでした。土曜に新潟に着く予定が日曜になっても仕方ないとあきらめました。ただ1日ならよいのですが、1週間もありうるかと思うと不安でたまりませんでした。
しかし、現地ガイドが頑張ってくれました。きっと優秀なガイドなんだろうと思います。最終的に上海の強風がおさまり、上海の二つの空港のうち、当初着く予定の浦東空港とは別の紅橋空港に二つの便だけが飛ぶことになったのです。我々のキャンセル待ちは10人です。現地ガイドの必死の頑張りで何とか5人ずつ乗ることができました。
このとき空港のロビーにいましたが、飛ばない飛行機に対する中国人の怒りはすさまじい気迫で怖くなりました。日本人にはみられない強硬な抗議(罵倒)で、絶対に喧嘩はしない方がいいです。
かろうじて上海にたどり着き、ホテルに入ったのが午前3時、4時半ホテル出発ですのでシャワーを浴びただけで眠ることはできませんでした。
強行スケジュールで、眠れなかったものの何とか新潟に予定通りに帰れそうで安心しました。
上海空港で、欲しいと思いながらまだ買えていなかった兵馬俑を2体購入しましたが、このときお店の若い女性に英語で買いたい旨を伝えたところ、私の英語がまずいのかあまりよく分からないようでした。結局3人の女性がきて対応してくれました。中国のごく一部の人は英語が堪能だが、若い人を含めほとんどの人が英語をまったく話せないとのことでした。そういえば、昨日の深夜に上海空港で若い男性に、同じ飛行機ですねと英語で聞いたところさっさと逃げていってしまいました。英語が分からなかったようにみえましたが、単に私が嫌いだったのかもしれません。
それにしても、今回は行き来の飛行機でどうなることかと心配させられ、スリルに満ちたドキドキの旅行を堪能させていただきました。
食に関して少し私に合わなかった点は残念でしたが、中国4000年の歴史はすごいものがあり、また熱気に溢れ、先端技術にも素晴らしいものがあると実感しました。いろいろな意味で、いずれアメリカを凌ぎ世界一になっていく可能性を秘めた国であるとも感じた旅行でした。
上海からの帰りも3時間ほどであっという間でした。五島列島、関門海峡から山陰、天の橋立らしきもの、富士山も飛行機の中から見ながら、新潟に帰ってきました。
「ああ、新潟の空気は美味い!」これが帰国後の第一感想でした。
最近は飲みすぎると不整脈も出ますので、アルコールを控えながらアンコールワット、マチュピチュとウユニ湖、グランドキャニオンなど訪ねたいと思います。人生100年時代とはいえ、元気なうち、歩けるうちにできるだけ多くの魅力ある世界の各地に足を運びたいと思っています。勿論しっかり仕事をしたうえでのことです。
この中国のあと、昨年暮れにタイ、今年の2月にエジプト、GWはイタリアに行きましたので、おいおい報告させていただきます。この年末はドバイの予定です。