新潟市医師会 会長 藤田 一隆
9月13日、松山市民会館大ホールに於いて、がん征圧全国大会が開催されました(公益財団法人日本対がん協会と公益財団法人愛媛県総合保健協会が主催)。当日、「2019年日本対がん協会賞」の表彰式が行われ、団体として新潟市医師会が表彰されましたので報告させていただきます。
公益財団法人日本対がん協会は、1958年8月に、民間のがん征圧運動の推進母体として朝日新聞などの協力で設立されました。民間組織として、早い段階から「がん征圧」に取り組み、精度の高いがん検診、ピンクリボン運動やリレー・フォー・ライフ、さらにがん教育などを通して行うがん知識の普及啓発、研究助成、がん無料相談、がんサバイバー・クラブなど多彩な事業を行っています。
同協会の創立10周年の1968年に「日本対がん協会賞」が創設され、毎年、がん征圧全国大会で表彰しています。検診の指導やシステム開発、第一線の検診・診断活動、がん予防知識の普及や啓発活動などに地道な活動を重ねた方々や、団体を対象に、個人は2人から数人、団体は1ないし複数団体が選ばれています。過去には当会会員の栗田雄三先生(2010年)、小越和栄先生(2014年)が個人として受賞されています。
新潟市の胃がん検診は、検診車による集団検診に加え、1984年からは医療・健診機関による施設検診も併施されていました。その後、胃内視鏡検査を施行する医療機関が増加し、市民にも内視鏡検査が広く浸透するにつれて、医療機関・新潟市民双方から胃内視鏡検診を希望する声が高まってきました。新潟市医師会は1998年に「胃がん検診に内視鏡を導入する事を検討する小委員会」を設置し、医師会内での検討を開始しました。2002年の理事会で内視鏡検診導入を正式に決定し、新潟市との折衝を開始しました。そこでは、技術的および機器洗浄等に関する安全性、医療事故発生時の対応、国が対策型検診として認めていない方法での妥当性、検診費用等が問題となりました。新潟市医師会は実施に向けて新潟市と粘り強く折衝し続けた結果、「40歳、45歳、50歳以上の住民が、検査費用は同額で、胃X線検診と胃内視鏡検診を自由に選択する形式」で、2003年から、全国にさきがけて胃内視鏡検診を導入することになりました。
検診の精度を上げるため、消化器内視鏡専門医による「胃内視鏡画像読影委員会」を設置し、内視鏡検診の実施医療機関には、検査症例のダブルチェックを必須とし、内視鏡画像の評価票も作成して検診の実施医療機関にフィードバックする方式を取り入れました。研修会や症例検討会も適宜開催し、検査医のレベル向上も図りました。検診開始から10年後には、新潟市の胃がん内視鏡検診のデータを用いた国立がん研究センターの研究で死亡率減少効果が証明され、国が2016年に胃内視鏡検診を対策型検診と認めるにあたり、多大な貢献をしました。「新潟方式」と呼ばれるこの検診システムは、胃内視鏡検診の指針の基となり、医師会主導で胃内視鏡検診の重要性を普及できたモデルケースとしても高く評価され、この度の受賞となりました。
胃内視鏡検診の導入に際して周到な準備を主導された佐野正俊先生(前新潟市医師会長)、実施要領作成にご尽力いただいた小越和栄先生(前胃がん検診検討委員会委員長)、一次検診を実施されている先生方、胃内視鏡画像読影委員の先生方、医師会事務局担当者、内視鏡検診導入時から多大なるご協力をいただいている行政担当の皆様、そして胃内視鏡検診に携わってこられたすべての方々に深謝いたします。
(令和元年10月号)