佐藤 舜也
中秋の名月のころの山道では盗人萩の小判形の実が衣服にくっつくようになる。草いきれの道草に足を踏み出すと、ウスバカゲロウが湧き出すように飛び上がる。山道で見える黄色の花は、どこにでもある背高泡立草をのぞくと、黄釣舟、金水引、キツネノボタンくらいで、目立たない花ばかりである。
黄釣舟は赤紫のツリフネソウとは葉の形も小型で違っているが、花の咲いている時期も大分違う。6月になると咲いているのを見るくらいに早く、一度だけ黄華鬘と一緒に咲いていたのを見たときは、とても場違いな感じがしたことを覚えている。赤紫のツリフネソウのように群生することは少ないようで、自己主張が少ない謙虚な花のように感ずる。
キツネノボタンは春から咲いているので、夏の花ではないと思っているが、秋になっても時々は花をつける。花の時期がとても長い。これも草丈も短く、目立つ花ではない、いわゆる雑草の類である。最近まで名前も知らなかった。キンポウゲの仲間で毒のある草に属している。ゲンノショウコと同じ場所にあるので花が咲いていないと間違いそうな感じである。昔の人はそれで騙されまいと、狐の牡丹にしたのだろうか。
金水引も花の時期が長い。花穂の下から上まで小さな5弁の黄色の花を咲かせる。種子が衣服に付いて飛びやすいので、山道では容易に道に沿って数を増すのでないかと見ている。
同じ夏の花でもウバユリなどは咲いて5日ともたない。1週後に見にいくともう枯れている。晩夏の夏山で、黄色の花は咲く時期は長いが、どちらかというと控え目で外来種の脊高泡立草のように、上から他を見下ろすような派手さはない。昔の日本の田舎にみられた質素で控え目な感じであろうか。