浅井 忍
新潟は枝豆にこだわる土地柄で、夏場はとりあえず、ビールに枝豆だ。今年のわが家の枝豆ライフは、5月中頃の黒埼産「初だるま」から始まった。味は「出たばかりだから、こんなものだろう」という評価を下した。総じて、今年は猛暑で枝豆の出来がよくなく、莢の厚みが今ひとつで3粒率も低かった。7月下旬から店頭に並ぶ茶豆に期待したが、今ひとつだった。9月下旬には「越の秋姫」という旨みの濃い品種が出るが、今のところ6月中旬に食べた「湯上り娘」が、一番旨かった。
江戸時代に、大豆になり切っていない緑の豆を枝についた状態で茹でて売るようになり、これを「枝付き豆」または「枝成り豆」と呼んだ。それが「枝豆」の名前の由来だという。国の減反政策によりコメの代わりに枝豆を植えたことで、枝豆が全国で生産されるようになったという。
ピアBandaiの野菜売り場には、生産者が持ち込む野菜が販売されている。8月には、枝豆のコーナーに5軒の生産者が、それぞれの区画に袋入りの朝採り枝豆を並べる。予約しておいた一番人気の枝豆3袋を購入したところ、その枝豆の生産者のおばさんに呼び止められ、試食用の茹でた枝豆1袋と売り物1袋をもらい、嬉しい悲鳴を上げたことがあった。
最近、訪れた東山温泉の旅館で前菜に出た枝付き枝豆はたったの6莢だったが、その旨さに感激した。会津若松には旨い枝豆がある。この夏に、枝豆フェチが全国の枝豆を紹介するTV番組が放送された。京都丹波の黒豆の枝豆や千葉の枝豆が、特徴があって旨いと紹介されていた。新潟県は長岡の枝豆だけが紹介されたが、新潟県が枝豆王国だとか、新潟県民が枝豆にこだわるとか、細長く湾曲した新潟県の形が枝豆に似ているとか、といったことは紹介されなかった。新潟の枝豆は、私たちが思っているほど全国的な知名度を得ているわけではないことを認識した。まあ、旨い枝豆でビールを飲めれば、それでいいか。
(令和元年10月号)