蒲原 宏
厚労省の発表によると2017年の100歳以上の人口は69,785人。そのうち女性が90%とか。
昭和60年(1985)には1,740人であったという。
新潟市の1963年の100歳以上人口は158人であったという厚労省発表があったが、第2次大戦中と戦後の飢餓状態を生き抜いた人であったともとれる。
100歳以上の最も正確な記録といえるのが近刊の『昭和天皇紀』の昭和4年(1929)にある記事であると思う。
昭和天皇が大正天皇の後を承けて皇位を継がれ、その即位大典の礼が行なわれたのが昭和4年(1929)。
その時、全国の100歳以上の生存者に大典記念として天皇から1人につき1円50銭の御下賜金と木盃が下賜された。
その数が278名という記録が残っている。
男女の区別の記載は『昭和天皇紀』にはないが引用資料を調査すれば判明すると思う。
平成30年(2018)4月1日の日本最高齢者は福岡県の田中力子さんで、明治36年(1903)生まれの女性。115歳。
日本の最高齢者というか最長命生存記録は1986年に報告された鹿児島県徳之島住の泉重千代さんで慶応元年(1865)6月29日(8月16日)生まれ。
昭和60年(1986)2月21日没。120歳と238日で当時、世界一長寿者であった。
昭和51年(1976)11月に長寿日本一となり、3年後の1979年、英国の『ギネスブック』が戸籍制度の整っている国での世界一の長寿者と認定した。
今年(2019年)4月1日の日本最高齢者は上越市在住の渡邊智哲さん明治40年(1907)4月生まれ112歳であった。
ちなみに県医師会員の最高齢者は新潟市南浜病院の鈴木保穂氏(大正4年(1915)12月2日生まれ)で103歳9ヵ月。新潟市在住の大正生まれで今年(2019年)9月1日現在で生存している医師は12名。市医師会員が約2,000人ほどなので約0.6%ということになる。筆頭はやはり前記の鈴木先生であるが、さてこの大正生まれの現在の日常生活の実態はどのようであろうか市医師会で調査し把握されているであろうか。
健康長寿社会を作り上げようとする仕事の先端を担う専門的職業集団としての市医師会自体が自国集団の長寿医師達の心身、職能の状況を調査把握することは、一般社会の人々を指導する医師にとって大いに参考になるのではなかろうかと思う。
大正生まれを例にとったが、少なくとも80歳代、90歳代の医師群についての心身及び職能の把握が必要ではないか。2年に1回保健所を通じて厚労省への届出調査が如何に杜撰なものであるかについては前回のこの欄で指摘したことがあるが、会員の福祉対策のためにも高齢医師の実態把握をして100歳社会対策の参考資料としてデータを貯積しておいてよいのではなかろうか。ちなみに医学の未発達時代でも幸運に長生きできる人はあった様で老生が旧高田市の某寺の過去帳を調査した時に「釈妙忍百十九戈天保十一年(1840)子十月十一日大橋町八左エ門妻」という記事を見たことがある。数え年としても118歳。老生の実見した記録としては最高齢の記録であった。
八百比丘尼の伝説を含めて長寿の問題は何時の世にも話題になる。お医者の長寿についても関心を持ったらどうかと弄筆をとった次第。
(令和元年10月号)