山﨑 芳彦
山﨑 洋大
カリフォルニア州を南北に貫く幹線道路は3本ある(図)。Interstate 5号線(I-5)はメキシコからカナダまで続く最も整備されたフリーウエーで、州の中央部のプレーリー地帯を貫いており、西海岸の大動脈といってよい。すべてが片側2車線以上で交通量も多い。これよりも海岸寄りにUS101号線が、ロサンゼルスからシアトルまで延び、多くは片側2車線であるが、片側1車線の部分もあり、冬には雪が少ないので多く利用される。最も海岸寄りを走るのがPacific Coast Highway(CA-1)で、ロサンゼルスの南からサンフランシスコの北まで延びている(写真1)。一部はUS101号線と重なる部分もあるが、海岸線に沿ってウネウネ走りカーブも多い。片側1車線が大部分で、かなりの部分追い越し禁止となっている。トレーラートラックなどの大型車はほとんど通らず、交通量も少ないので、スピードを出さなければ運転も楽である。この沿線には風光明媚な見どころや観光スポットが多く、全米随一の観光道路の一つともいわれている。春から夏には海にせり出した斜面に、ワイルドフラワーが咲き乱れているのが見え、運転者を飽きさせない。新潟も同じ西海岸なので、海際まで岩山が迫りくる様子、美しいビーチやサンセットなど共通点も多い。沿線には、多くの有名スポットがあるが、南から北に上って、そのうちのいくつかを紹介してみたい。距離は数百キロにも及ぶので、これらを一度に訪れたわけでなく、何回かに分けてドライブしたものである。モーテルやインも充実しているので、予約なしでも、暗くなれば近くの宿に飛び込めばよかった。
1.ロングビーチ
ロサンゼルス市から少し南に下がったところに、ロングビーチ市がある。この辺がCA-1号線の起点となる。ロングビーチは、自動車レースやミスユニバースのコンテストが開かれて有名になったところだが、この港の一角にクイーンメアリ号が繋留されている(写真2)。かつては大西洋に浮かぶ巨大な豪華客船であったが、今は人気のホテルになり、内部やデッキも見学できる。周囲には小さなアンティーク用品や土産物を扱う店が並び、多くの観光客が訪れる。
2.サンタモニカ
ロングビーチから海岸線を北に上り、ロサンゼルスのいくつかのビーチを過ぎるとサンタモニカ海岸に至る。広い砂浜が広がり、都心に近いこともあり、多くの海水浴客で賑わうが、景色は小針浜の方が白砂青松できれいな気がする。この砂浜から数百メートルに及ぶ桟橋(Santa Monica Pier)が突き出ており、先端に土産物屋などがある(写真3)。ここには、多くの釣り客が糸を垂らす。急きょ、近くのショッピングセンターで一式の釣り道具を仕入れ、魚屋でエビを買い、これを餌にすると30cm位のサバがよく釣れた。釣りなどはフナ釣りを少しやっただけだったが、ここでは面白いように釣れた。付近には日本では見慣れないペリカンがいっぱい泳いでいた。ここから少し北に上るとマリブ海岸に至る。この辺は、ロサンゼルスの金持ちの邸宅や別荘が多く、美しい海岸線が伸びている。ハーストの城といわれる新聞王の別荘を道路から遠くに望むことができる。ここから北には美しい海岸線が続く。カリフォルニアアシカの群れを見ることもある。
3.サンタバーバラ
さらに上るとサンタバーバラの街にでる。カリフォルニアはスペイン領であったこともあり、この街はスペインの影響が残り、屋根瓦のオレンジ色が美しい。雰囲気もよく、暮らしやすい街といわれている。ここのサンタバーバラ修道院はカリフォルニアでも最も大きく美しいと言われ、中まで見学できる(写真4)。この近くにはソルバングというデンマーク村があり、デンマーク風の建物が造られ、パンが美味しく、テーマパークのようである(写真5)。サンタバーバラ、ソルバングはNHKの「世界ふれあい街歩き」で紹介されたことがあった。
さらに上るとビクスビークリーク橋があり、深い谷を跨いでいる高い橋で、近くにはこれを眺める絶好のビューポイントがある。本県の米山大橋のような雰囲気である。
4.カーメルバイザシー、モントレー
もう少し走るとモントレー半島に至る。ここにはカーメル(バイザシー)がある。人口数千人の小さな街だが、昔からの伝統を守り、ひっそりと暮らしており、著名人の別荘が多い。ここの雰囲気にあこがれて多くの観光客が訪れている。モントレーはラッコの保護活動などに力を入れている水族館が有名である。周囲はノーベル賞作家スタインベックの活躍した舞台であり、『エデンの東』、『カナリーロウ』、『怒りの葡萄』などのバックグラウンドにふれることができる(写真6)。ゴルフファンにはおなじみのペブルビーチも近くである。ここの海岸線は17マイルドライブといわれる有料道路が通り、本県のシーサイドラインに雰囲気が似ている(写真7)。この周囲の様子は、以前に本誌で紹介したことがある。
5.サンタクルス
さらに、サンフランシスコに近づくとサンタクルスに到着する。ここの遊園地も有名だが、ここから10分くらい山側に入るとミステリースポットがある(写真8)。ここは、立つ位置によって背丈が違って見えるとか、ボールが低い方から高い方に転がるという、いわゆる錯覚をとりいれた場所である。上空には鳥も飛ばないという。昔、大橋巨泉氏が「11PM」という番組で紹介し、一度訪れてみたいと思っていた。中年のおじさんが案内してくれたが、息子が横須賀の海軍にいると言って、日本のことで盛り上がった。
6.サンフランシスコ
さらに上るとサンフランシスコに至る。サンフランシスコの3大見どころは、フィッシャーマンズワーフ、ケーブルカーとゴールデンゲートブリッジである。サンフランシスコ湾の入り口にかかる美しいゴールデンゲートブリッジについては、今さら説明は不要であろう(写真9)。ここを過ぎて海岸線をしばらく走ると、Pacific Coast HighwayはUS101と合流する。
カリフォルニアを縦断する時、時間が許せば単調な景色のI-5線を利用するより、何日かかけてPacific Coast Highwayを通るのがおすすめである。
図 Pacific Coast Highwayの見どころ
写真1 Pacific Coast Highway
写真2 ロングビーチの港に繋がれたクイーンメアリ号
写真3 サンタモニカピアから海岸をのぞむ
写真4 カリフォルニアで一番美しいといわれるサンタバーバラ修道院
写真5 デンマークの街を再現したソルバング
写真6 モントレー海岸
写真7 新潟の海岸に似る17マイルドライブ
写真8 サンタクルスのミステリースポット
写真9 ゴールデンゲートブリッジを走行中
(令和元年12月号)