勝井 豊
昨年12月末に中国の武漢市内で発生が確認された新型コロナウイルス感染症は、3月11日にWHOがパンデミックを宣言するに至った。国内でも公立学校が臨時休校し、イベントの自粛が呼びかけられ、観光業だけでなく経済活動全体への影響が懸念されている。
現在の患者数は2000人弱であるが、増加する傾向が続いている。11年前に流行した新型インフルエンザは死亡率が0.02%に過ぎなかったが、この感染症の死亡率は2%もあり、感染者のうちの8割は軽い症状で済むそうだが、1割は重症化してそのうちの5人に1人が死亡するのだからとても怖い病気と言わざるを得ない。
療養が長期化する傾向があり、一旦感染すると1ヶ月から2ヶ月は仕事ができなくなってしまう。開業医が感染したら命が無事だったとしても年収の2割が失われてしまう。高齢の開業医なら休院では済まず、廃院になる恐れがあるだろう。
医師会が示している診療に関する指針はとても参考になる内容であるが、大半の開業医はサージカルマスクと手袋といった装備しか持っていないので、この感染症の疑いのある患者とはごく短時間の問診により、自宅での静養か専門の医療機関を紹介するかを決めなければならないであろう。また、待合室が濃厚接触の場とならないような配慮も必要で、そのためには定期的な通院の間隔をあけたり、車内待機を一部の患者にはお願いするなどして、ガラガラの待合室を目指して今から取り組みを始めていても決して早すぎないだろう。
この感染症が蔓延してしまったら、一般の医療機関にも感染者が訪れるであろうが、不十分な防護で診療に臨むのは、傘を持たずに雨の日に出かけるような行為であり、患者を守るべき立場にいる者としては、まず自らをきちんと守るように努めなければならないと考えている。
(令和2年4月号)