浅井 忍
数年前に、夕方暗くなってから近くのスーパーの車止めにつまずいたと中年の男性が受診した。男性は赤城乳業の社員で、本社の埼玉県から車で新潟に来たという。ガリガリ君のファンだというと話が弾み、ガリガリ君の携帯ストラップをもらった。ガリガリ君をモチーフにしたブローチ仕様の携帯ストラップは、使わずに引出しに保管してある。
ガリガリ君は国民的人気のアイスキャンディーだ。人気の秘密は氷の二層構造にある。カップアイスのかき氷を別の氷でコーティングすることで、溶けにくく棒が抜けない今のかたちにたどり着いたという。定番のソーダ味の他に、コーラ味、スポーツドリンク味、ミカン味などがあり、ガリガリ君の妹、ガリ子ちゃんシリーズには、白いサワー味、フルーツミックス味などがある。赤城乳業は、あまたの製品のうち数種類の製品を入れ替えながら期間を区切って出荷するという独自のアルゴリズムによって、消費者の渇望感をあおる経営戦略をとっている。
ガリガリ君よりグレードが高いガリガリ君リッチは、斬新な製品を輩出してきた。マスコミを賑わした製品として、衝撃の三部作と呼ばれるコーンポタージュ味、クレアおばさんのシチュー味、ナポリタン味がある。コーンポタージュ味はまあまあだったが、シチュー味は旨いとはいえず、ナポリタン味に至っては不味かった。赤城乳業の社長が記者会見で、ナポリタン味で3億円の赤字を出したと、自社の製品開発部に発破をかけたことがあった。
今までに、ガリガリ君ソーダ味で3本の当り棒を当てた。当り棒でガリガリ君1本と交換できるが、3本の当たり棒はペン立てに刺したままになっている。行きつけのセブン・イレブンの店主H氏に訊ねたところ、当り棒が出るのは年に1回くらいだという。当り棒を交換しない人がいるとしても、ひとりで3回当てたというのは高い確率で当ったことになるだろう。
幸運はまだ続いた。ガリガリ君リッチのレーズンバターサンド味を2本買ったところ、当ったのだ。景品はTシャツである。「ガリT当り」と刻印された棒を、封書で赤城乳業に郵送した。H氏によれば、Tシャツを当てたのは聞いたことがないとのことだ。なにかと相性のいいガリガリ君だが、運を使いすぎている気がしないでもない。
(令和2年4月号)