全国病児保育協議会 常任理事 佐藤 勇
新潟市は、平成12年10月より委託事業として病児保育を始めた。当時は国の制度名も、「乳幼児健康支援デイサービスセンター」と呼ばれ、急性期は家庭で、回復期には病後児保育を利用するという想定で実施された。新潟市では、当初より医療機関併設型を基本とする保育施設の設置を進め、平成12年の開始当初より発熱初期の急性期からでも病児保育を利用できる体制になっていた。
その後、制度名は変わり、病児・病後児保育事業となり、医療機関併設型では急性期での利用、その他保育園併設型などでは回復期での利用とされた。市内の病児保育施設も増加したが、前述の新潟市の方針により、小児科を標榜する医院、病院に併設される9施設が開設されてきた。平成21年度からの施設数の増加と延べ利用者数の変化を図1に示した。9施設とも小児科医が常勤で勤務しており、基本的には、熱性けいれんなど急変時にも対応できる体制をとってきた。しかし、全国的には、急性期を担当する病児保育施設と回復期を担当する病後児保育施設が役割分担しつつ連携する地域も増えている。また、新潟市でも、設置ができていない区への配備を要求する市民の声があることから、市も保育園併設型の病後児保育施設を活用する方針になった。
令和元年度末に、北区と西蒲区で保育園に併設された病後児保育施設が開設され、南区に病院併設型の病児保育施設がもう1ヶ所加えられた。これによって、新潟市内には10ヶ所の病児保育施設と2ヶ所の病後児保育施設が混在することになった(表1)。
病児・病後児保育を利用するために、主治医は医師連絡票の記載を求められる。従来の市内病児保育施設は、医療機関併設型であり、医師が配置され急性期に対応できるため、発熱時など病初期から保育看護が可能となっている。今回、西蒲区と北区に新設された病後児保育施設は、保育園併設型であり医師は配置されておらず、回復期を対象とした保育看護となる。そのため、医師連絡票の記載を求められた主治医は、患児の病状を鑑み、急性期であるか回復期であるかを判断しなくてはならない。全国病児保育協議会では、実際に病後児保育を実施している保育園委員会を中心にして、病後児保育施設受け入れのめやすとなる回復期についてまとめている(表2)。新潟市の新しい医師連絡票には、回復期の指示について、これまでの記入欄に赤字部分を加えて明確化している(図2)。医師連絡票の記載は、当日または前日を原則としているため、主治医は利用直前の患児の病状を判断し、いずれの施設で保育が可能であるか指示をしていただきたい。急性期は遠方の病児保育施設を利用し、回復期に再診していただき、集団保育が可能となるまで、近隣の病後児保育施設に保育を依頼するなどの、きめ細かな指示も可能である。
なお、病児保育施設では、入室時に医師の診察が行われていると思われるが、その運用は各施設に任されているため、受け入れの可否については医師連絡票を受け取った利用者から施設に確認していただきたい。病後児保育施設では、医師が常駐しないため、主治医に記載いただいた医師連絡票にしたがって保育が行われる。
新潟市では、前述のように病児保育施設が先行し、今回病後児保育施設が開設されたが、もともと国の制度が病後児デイサービス事業としてスタートしたため、県内では保育園併設型や単独型など、医師が常駐しない形で病後児保育が先行した地域も多い。全国病児保育協議会新潟県支部では、定期的に県内および新潟県近郊の病児保育施設を対象に研修会を行なっており、意見交換に努めている。その中で回復期を対象にした病後児保育施設から、時折急性期の状態で保育を依頼され苦慮しているという声を聞く。新潟市の場合、急性期対応型施設を配置した上での、回復期対応施設の拡張であり、主治医の先生方のご協力をお願いしたい。
共働き世帯が増え、ややもすると子どもの病状よりも就労のことが気になる保護者も多くなった。保育園・学校なども体温だけに着目し、十分な子どもの病状に対する評価に欠ける対応が見られることもある。病後児保育施設が充実することで、子どもたちが十分な回復を得たのちに集団生活に入ることが出来るよう、保護者への周知がなされることを期待している。
図1 病児保育室施設数の増加と延べ利用者数の変化
表1 新潟市病児・病後児保育施設(令和2 年4 月現在)
表2 病後児保育施設の受け入れめやす
図2 医師連絡票
(令和2年5月号)