山﨑 芳彦
2020年は、いつになくスズメバチの活動が活発で、あちこちのテレビ番組でもその駆除の様子が放映されていた。2020年に多かった原因はあれこれいわれているが、いずれにしろ、刺されるとアナフィラキシーで命に関わることもある獰猛なハチで、聞いただけで恐怖を感じる方も多いと思う。巣の駆除の様子を見ていると、何百匹という蜂が、巣の周りを飛びかい、駆除はとても素人の手には負えないと感じた。
2020年10月中旬、我が家の新発田市にある庭の椿の木の中に、サッカーボールを一回り小さくしたほどのスズメバチの巣が作られていた(写真1)。知らずに近づくと、数十匹の、黄色で黒っぽい縞模様のスズメバチが巣の入り口から飛び出してきた。このため近くに巣があることに気づいたわけであるが、いったん急いで巣から遠ざかった。ハチ防護服を持っているわけではないし、自分で巣を処理することは危険が大きいと考え、また市役所に連絡すれば何かアドバイスをいただけると思ったが、とりあえず近くを通る人はないし、比較的処分しやすい位置にあると思われたことから、しばらく様子を見ることとした。9-10月が最も動きが活発で、11月になればおとなしくなるという期待もあった。3週後の11月初旬、気温も下がり、巣からスズメバチの出入りもほとんど無くなったことを確かめた。不完全ではあるが、厚手のヤッケを着て、防虫ネットをかぶり、高枝バサミを最長にして巣をつついてみた。つついてもスズメバチはほとんど出てこないことを確認し、巣の周囲の木の枝を少しずつ切り、巣を取り除くことに成功した(写真2左)。結果的には、心配は取り越し苦労であった。いつから巣を作り始めたかは明らかではないが、半年ほどかけてこの大きさになったのであろう。色といい縞模様といい、まさに芸術作品と言って良いできばえである。これをビニール袋に入れ、口を堅く縛った。あとで巣の中の蜂が出てきたり(写真3)、巣の中の幼虫が羽化してこないようにするためである。なんなく巣を処理できほっとした。スズメバチは、軒下、地面、木のうろ、外壁の隙間などどこでも巣を作るので、難しい場所にあれば、やはり、業者にお願いするのが安全であろう。
スズメバチにも数種類あるが、いずれも毒性が強く、アナフィラキシーショックを起こす可能性がある。今回の巣の持ち主は、キイロスズメバチとみられる。スズメバチは、オオスズメバチなど庭や、山中でしばしば見かけるが、単独の場合は刺すことはまずない。やはり、巣に近づかないことが肝要である。林業家はショックに備えてエピペンをもっているという。巣の構造はどうなっているか、蜂蜜はどの程度とれるのかなどの興味があったが、またの楽しみとし、巣の中は見ていない。数年前にもテニスボール大の巣が軒下に作られていたが、巣も小さく、蜂の出入りも少なかったため、このときは容易に除去できていた(写真2中)。
アシナガバチは、草取りなどをしているとその巣を時々見る(写真2右)。知らずに、除草していると突然羽音とともにチクッと痛みを感じることがある。衣服の上からも刺す。刺した瞬間は見えないが、近くに巣があったことをみると、アシナガバチであろう。毒性はかなり高いとの報告があるが、自分の経験では、10分くらいで痛みは治まり、刺し口もわからないほどであった。ミツバチも刺すことが多く腫れることがあるが、いずれの蜂でも、脱力、嘔気などの症状があれば医療機関の受診が必要であろう。クマバチは、体の大きさ、真っ黒な姿から獰猛に見えるが、実は直接触ったり、脅したりしなければ刺すことはないおとなしい蜂である。
日常的に蜂に出会う機会は多いが、いずれの蜂も、巣に近づいたり、脅したりしなければ危険はあまりないので、不必要に怖がることはないであろう。
写真1 椿の木に作られたスズメバチの巣、中央の口から多くのスズメバチが出入りしていた。
写真2 左:今回駆除したスズメバチの巣。中:数年前、軒先に作られていたスズメバチの巣。右:アシナガバチの巣。
写真3 巣から顔を出すスズメバチ、駆除後3週でもまだ生きていた。
(令和2年12月号)