山﨑 芳彦
ハワイ諸島の中で最大の島、ハワイ島の中央にはマウナケア、マウナロアなど4000mを超える火山があり、未だ活動中で、身近に溶岩が流れるのを見ることができる。ここの火山は、マグマだまりの構造から、溶岩が大規模に吹き上がることはなく、近くによっても安全なのだという。この島の西側と東側では気候が全く異なる。東側の中心都市ヒロは雨が多く、大きな滝もあり、周辺は濃い緑に覆われている。反対側のコナ地区は乾燥した溶岩台地で、木や草はまばらで岩だらけである(写真1)。しかし、雨が少なく天候が良いため、観光客には人気で、海岸に沿って豪華なホテルが立ち並び、ゴルフ場も多く、芝や樹木は人工の水で育てられている感がある。
コーヒーの味にうるさい方も多いと思うが、この乾燥地帯周辺で生産されるコナコーヒーは、柔らかな酸味と滑らかな口当たりで、ブルーマウンテンと同じくらい高価で人気も高く、100%コナコーヒーは、現地で買っても100グラム2000円ほどする(写真2)。各々農場により、微妙に風味が異なり、世界中から多くのファンがやってくる。ここの岩だらけの土地は、水はけも程よく、山を越えてくる霧や雨の降り方も理想的という。こういった気候や、土地はコーヒー栽培には最適なのだが、急峻な斜面が多く、機械も入り込めない。したがって、摘み取りは手作業で行うのだ。そこで、目で見て、赤く熟した実ばかり集めるので手間がかかる。青いものが混じると渋みが出て味が落ちるという。木自体は、特別なコーヒーの木ではないそうだ。このため、収穫量は少なく高価となる。コーヒーの花は真っ白で、枝いっぱいにつき、あたかも雪が枝に積もったような美しさで、コナ・スノウとよばれている。コナ地区の中心であるカイルア・コナ市近くには、コーヒー農園が集中するが、中でも日本からの移民が、代を重ねて苦労してここまで育て上げてきたものが多い。入植した当時は、使用人として朝から晩まで働かされ、そのあとは小作人となり、その後やっと小さな土地を手に入れ、これを少しずつ広げてゆき、今では日系三世、四世が中心となって広大な農場を経営している。ワインと同様に、土地の高低、土の性状、気温の変化などにより、微妙に味が変わり、農場によって各々自慢の味がある。それぞれの農場は直営店を持ち、100%コナコーヒーから20%、50%ブレンドしたもの、チョコレートなどの香りづけしたフレーバーコーヒーなどが、様々な値段で販売され、味見もできる。フレーバーコーヒーは日本では接する機会があまりなかったが、味わってみると香りもよく、美味である。ここでお土産にいくつかのコーヒーを求めた。日本に持ち帰り、コナコーヒーの歴史に思いを寄せながらその味を堪能している。
写真1 コナ地区 溶岩台地で緑は少ない
写真2 コナコーヒー
(令和3年2月号)