戸枝 哲郎
雪割草は新潟県が国内最大の自生地であり、その花の色や形の変異が非常に豊かであり、平成20年に県の草花として指定されている。
私が初めて雪割草に出会ったのは、約20年前に長岡の雪国植物園に訪れた時であった。里山の自然を守るために、長岡在住の大原さんを中心に山野草が大事に育てられていた。早春に咲くミズバショウ、ザゼンソウ、コシノコバイモなどを鑑賞していたところ、たくさんの花をつけた非常に美しい雪割草に目を奪われた。花や葉の状態から人の手がかけられているのが理解できた。大原さんがヒメオドリコソウを見つけて「これは外来種であり、はびこってしまうのでとても厄介な植物である」と言っていたのを思い出す。
西山町にある大崎雪割草の里に約10年前の3月下旬に訪れてみた、大きな駐車場は満杯であり、大勢の人が来ているのに驚いた。入口近くには人の手で育てられた花のたくさんついた雪割草が植えられていたが、里山を登っていくと数輪の花をつけた雪割草に変化していく。日本海に向かった斜面に雪割草は群生しており、これが本来の里山の雪割草であり大切に保存されていた。この里山の雪割草の数は約30万株と言われている。
同じ頃に長岡の国営越後丘陵公園にも訪れてみた。丘陵地にある自然探勝路を展望台に向かって散策すると、たくさんの雪割草が目に入ってくる。毎年、雪割草が植栽されて元気に育っており、現在は20万株くらいになっているのではないだろうか。
越後雪割草街道として、雪国植物園、大崎雪割草の里、国営越後丘陵公園をめぐる日帰りバスツアーが開催されているが、現在は新型コロナの為、中止になっているとのこと。
早春に弥彦山、角田山、国上山を登山すると雪割草に遭遇する。低山である国上山が最初に雪割草に出会う山である。3月中旬に国上寺の隣にある大きな駐車場の脇の登山道を登っていくとキクザキイチゲ、オウレンの花に混じって雪割草が咲いている。8合目に蛇崩れという岩場があり北西の風が吹きすさぶ斜面に1、2輪の花をつけた雪割草が群生している。これが厳しい自然の中で必死になって咲いている雪割草の姿と思われる。南斜面の登山道を下りてくると国上寺の裏手に出てくる。この間はまだ花の咲いていないカタクリの群生を認めるが、雪割草は全く見られない。
春になると各地で雪割草展が開かれている。私は小須戸にあるボケ公園で有名な「うららこすど」に出かける。3月にボケ展、クリスマスローズ展、雪割草展が続けて開催される。雪割草展には雪割草の愛好家が自慢の鉢植えを展示している。八重の花、珍しい形の花、色合い、花の数、斑入りの葉などの豪華な雪割草があり、1鉢数万円もするものがある。1株2~300円の苗を数株買い求めて、我が家の庭に地植えする。冬に日が当たり夏に日陰となる落葉樹の下に移植するが2,3年で自然消滅してしまう。消滅した場所に毎年雪割草の苗を買ってきて植栽し、3月に咲く雪割草を眺めては春の到来を感じていた。最近では地球温暖化のためか、自然消滅するのが早いようである。将来、医療職から離れたら、趣味の一つとして雪割草の鉢植えにチャレンジしようかと考えている。
(令和3年3月号)