高橋 美徳
外出自粛が繰り返し呼びかけられる中、休みにも外出できず、仕事もオンラインやニューノーマルという慣れない容態で生活せざるを得ない。自宅で長い時間を過ごすため、テレビを視聴される方も多いだろうが、還暦目前の年齢ともなると、ニュース報道、知識・スポーツ番組といった選択肢になってしまう。放送時間が限定されてしまうので、オンデマンドで利用可能な定額制動画配信サービスを利用することとなる。Kindleもオンラインで雑誌や書籍を購入し、端末で読むことが出来るので便利で重宝している。
自宅時間で家の中を眺め回す機会が多くなった。新築で引き渡された頃の姿は何処へやら、いつの間にかモノが溢れかえっている。道具好きのうえに、いつか使う時が来るのではとの思いが捨てられないので、中学生の頃技術家庭科で使っていた大工道具や製図セットが今も現役である。高度成長期に生まれ、その後バブル景気の一端も経験した。カラーテレビ、クーラー、自家用車の3Cが新・3種の神器と言われ、モノを所有することを目的に働き、得た対価を欲しい物と交換してきた。そんな誰もが当たり前のように行なってきた経済活動をガラリと変える可能性があるのが、「サブスクリプション」だ。
subscriptionとは、直訳すると「購入予約」「会費」「寄付金」という意味だが、昨今では「製品やサービスなどの一定期間分の利用に対して、代金を支払う方式」のことを「サブスクリプション」と呼ぶ。
働き方や家族のあり方が大きく変わり、生活の場所やスタイルを固定しない生き方が広がってきている。若者の間では「買うこと重視」から「すること重視」に転換し、ミニマリストといわれるモノをなるべく持たない暮らしや、長く使うことを前提としないモノ選びが当たり前になりつつある。
空き家を利用した非定住型住居サブスクやカーシェアリングもあり、衣類や家具にもサブスクサービスが提案されているのだが、そんな中から私が注目しているサービスを紹介したい。「reducego」という、飲食店で捨てられてしまうはずだった食品や料理を消費者が安く手に入れられるフードロス解決サービスである。洋菓子店のケーキ陳列棚を見て、売れ残りはどうなるのか心配になった経験がある方も多いと思う。登録店舗の売れ残り情報を利用者がスマホで受け取り、店舗から食品をテイクアウトするやり方で、現在は大都市圏でしか利用できないのだが、地方都市でも通用するものと思う。利用料金の2%が社会活動団体へ寄付されるというアイデアも付加されていて、うまく回れば素晴らしいビジネスモデルになる予感がする。
改めて自分のお金の使途を見てみると、サブスクに類するお金の使い方は結構多い。新聞購読や健康保険料も定額サービスの一つとカウントできるかもしれない。「Hulu」「Amazon prime」「Kindle Unlimited」「Apple One」某家電量販店の修理代金一括払いサービスも利用中である。
モノを処分して終活していかねばとの思いはあるのだが、一向に手が着けられずにいる。老子の「知足者富」の境地からは程遠い自分の状況に忸怩たる思いである。
(令和3年3月号)